逃走劇
え~~楽しんでいただけてるでしょうか?スギ花粉です。コメディー部分かな?シリアス好きな人にはすいません。ではどうぞ~~
人は・・・無自覚のうちに生きている
大切なものは・・いつでも近くにあるのに気付かない
なくなって初めてその価値に気付くのだ
例えば空気・・・これがないと死んでしまう・・だが当たり前すぎで日ごろ感謝を忘れている
失って初めて気付くのだ・・・そう失って初めて
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ピーーーーーーーーー!!ピーーーーーーーーーーーー!!
と呼び笛が城中に鳴り響く
今、魔王の執務室で凄まじい形相をして待機している者がいる。
魔国・第1将軍のリサ・ジェーミソンである。その、リサの元へ続々と兵士たちが報告に現れる
「東地区封鎖完了しました」「西地区同じく」「南地区同じく」「北地区同じく」
「ごくろうさまです。持ち場を死守しなさい!!決して城の外へ出してはなりません!!」
「「「は!!」」」
といって去っていく兵士
今・・・魔王城は大騒動となっている。カイが政務疲れで、逃げ出したのだ。
カイが後回しにした執務がたまり始めたので、リサがカイを執務室に軟禁して仕事をさせていた。
初めの頃は、カイも真面目にこなしていた。ただ……1日徹夜をすれば終わるだろうと軽く考えていた。だが、1日…2日…3日たっても終わる気配がなかった。
後どれくらいで終わる?っと聞いたカイに対して、リサが
「後1週間ぐらいで…」
といった。
その答えを聞いた瞬間に、カイが扉を蹴破り逃げ出したのだ。
だが、それを予測していたかのようにリサは笛のようなものを取り出すとピ~~~~っと鳴らした。
すると魔王城のいたる所で、ピ~~~~、ピ~~~っとそれに応えた。
そしてあっという間に厳戒態勢が敷かれてしまったのだ
「ふ・・・ふふふふふふ。陛下…甘い…甘過ぎます!!兄様と数々の死闘を繰り広げてきた私と陛下では実戦経験に大きな差があるのです!!それに・・・切り札もありますし」
リサの目にはすでに狂気の光が宿っている
懐から何やら図面のようなものを取り出し、バッと広げる
「この魔王城は、兄様の逃走を許すたびに増改築を繰り返し、すでに魔国一…いえ…大陸一の監獄とかしているのです!!決して逃がしません!!ほほほほほほほ」
その高笑いに周りに控えていた兵士たちは皆一歩引いた。
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「いたぞ!!」「陛下だ!!」「金づるだ!!」「金貨50枚だ!!」
と兵士たちが騒ぎ始める。
「く・・・・見つかったか!!」
と天井にへばりついていたカイが逃げ出す
ピーーーーーーー!!ピーーーーーーー!!と笛が鳴る
(……おのれ!!リサに予算の管理を任せたのが、こんな形で裏目にでるとは!!)
兵たちは金貨のためと叫びながら、自分に襲いかかってくる。
俺…魔王なのに!!っと何度心の中で叫んだ事か。
そして…何とか兵たちを振り切り、柱の陰で一息をつく。
「…カイ様」
「うん?」
っと振り返る。そこにはコーリン・マリア・シルヴィアがいた
「助太刀に参りました」
その言葉を聞き、歓喜するカイ
「よく来てくれた!!よし…闇の軍の全兵力があれば、バリケードを突破できるぞ!!ふふふふ・・ははっはっはは!!」
と高笑いする
すでに精神的に軽くおかしくなっていた
だから気付かなかった……3人が太い鎖を持っているということに。
そして3人は高笑いしているカイに、あっという間にぐるぐると鎖を巻きつけ始める
「あれ??」
バタンっと鎖を巻きつかれたまま倒れる。
「え?ど、どういう事だ!!コーリン!!」
するとそこに悲しそうな声音が聞こえてくる
「申し訳ありません。カイ様。実は捕まえた部隊は、何と予算が2割増しになるのです」
「コ、コーリン!!裏切るというのか!!」
「いえ・・部下に臨時収入でも配りたくなりましてな」
「お、おのれーーー!!」
「まぁ…これも部下のためですよ。では、リサ将軍を呼んでまいります」
と去っていくコーリン。
そこにマリアとシルヴィア……そして芋虫になったカイが取り残される
「ハハハハハ。魔王さん…おしかったな~~。もうちょっとやったのに」
とマリアがしゃがみ込んでくる。
「諦めてください」
シルヴィアは立ったまま言う
(考えろ……考えるんだ俺……起死回生の一手を!!)
そしてピンっと何かを閃くカイ
「ゴ、ゴホン……あ~~マリア。劇団キレンジって知ってるか?」
「当たり前やないの。魔国で一番人気の喜劇集団や。一度でいいから見たいねんけど…値段が高くて手でーへんねん」
とその答えを予測していたかのように、不敵に笑うカイ。
「実は………今度アゴラスで公演するらしくてね。魔王である俺にも招待券が送られてきた…二人分のチケットだ。誰と行こうか…迷ってるんだよね~~」
聞いた瞬間、キラキラっとマリアの目がひかり、その獣耳がひょこひょこ動いている
「え!!ホンマ!!見たい見たい見たい………略……見たい!!」
「そうか…そんなに見たいか!!いいぞ~~一緒に行こう!!ただ……分かってるね?」
「はいな!!」
とガチャガチャっと鎖をいじり始めるマリア……だが
「こら!!」
とシルヴィアに羽交い絞めにされてしまう。
「マリア…任務を忘れるな!!」
「任務がなんや!!これを逃したらもう二度と、こんな機会はないんや!!」
「給金をためて買えばいいだろう??」
「アホか!!3か月分の給金なんて絶対無理や!!」
マリアはそのままバタバタっと暴れている
「そ、そんなに高いのか…」
とシルヴィアが驚愕している。そしてカイはシルヴィアに対しても取引を持ちかける
「あ~~~…シルヴィア?何か欲しいものはないか?」
だが、シルヴィアはため息を吐きながら応える
「陛下……私はマリアとは違います。任務を放棄する事などありえません。無駄な事はやめて下さい」
だが……そこでマリアが騒ぎ始める。
「はい!!嘘やで魔王さん!!シルちゃんいつも言ってたで……魔王さんの血、一度でいいから飲んでみたいって!!」
「マ、マリア!!」
とまさかの親友からの裏切りに、すっとんきょうな声を上げるシルヴィア。
「血??」
とカイは少し怪訝そうな顔をする。シルヴィアはわたわたっと慌てている。
「そうや!!バンパイア族にとってはな、血が何よりも御馳走なんや!!しかも…聞いた話によると魔力が高い血程おいしいらしいで」
「………そうなのか?シルヴィア?」
「え?あ、あの…その…まぁ一概には言えませんが…」
と目をふせ、チラ、チラっとカイを見ている。というか…主に首筋を。
「…………飲みたい??」
「い、いえ!!陛下の血を飲みたいなど!!そ、そんな事は!!」
とじっと見ていた事を恥ずかしく思ったのか、顔を真っ赤にしてブンブンっと手を振っている。
「いいよ」
「え??」
シルヴィアの顔に何とも言えない表情があらわれる。
「俺の血が飲みたいなら、好きなだけ飲んでいいよ」
カイはシルヴィアをじっと見つめる。
ゴクっという唾を飲み込む音がこちらにまで聞こえてきた。
「で、ですが!!私は闇の軍の隊長です!!に、任務が…」
だが、そこに悪魔2人分の声が聞こえてくる
「いいか…シルヴィア。お前は向こうを見張っているだけでいいんだ」「そうやで~~」
「わ、私は………」
「お前は真面目に任務をこなしていた…」「そうやで~~~」
「ま、真面目に…任務を…」
「そうだ…そしていつの間にか気絶したんだ」「そうやで~~」
「いつの間に……か……」
そしてシルヴィアは………考える事を放棄した
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リサとコーリンが兵士達を引き連れて、カイを捕えた所へと赴くと
そこには太い鎖と……気絶したマリアとシルヴィアがいた
リサはそれを見て、怒り狂って指示を飛ばし始めていたが
コーリンは二人がやけに嬉しそうに気絶しているのが、少し気になった。
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