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王たちの宴  作者: スギ花粉
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何事もなければ

え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?休んですいませんでした。毎日は厳しいかな?ではどうぞ~~


「馬鹿野郎!!今日の気分は赤ワインだ!!何年たったら、しっかりと働けるんだよ!!」


「すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!」


神聖帝国が事実上滅びてから、早くも2週間がたっていた。魔国に住む魔族達はみなが喜び、3日3晩アゴラスでも宴が催された。


そして今や、東部への移住の話などが現実味を帯び、人狼族などは忙しく準備を整えているらしい。


そんな中、魔王城のある部屋には二人の人物がいる。


逞しい口髭をたくわえ、テーブルの上に足をのせて組んでいる。そしてグイっと革袋に入った酒を飲んでいる一人の男。


髪は茶髪のぼさぼさ頭だ。そしてその男には、左肘から先がない。


もう一人は、細身で頼りなさそうな顔をした若い男だ。金髪の巻き毛に青い目、歳は20代前半といったところか。


今、荷物をがさがさと探し回っている。


「おい!!トンメン!!ちょっと落ちつけ!!」


「で、ですが…魔王なのですよ。無礼があったら殺されてしまいますよ」


カタカタカタっと震えている。


「腰ぬけが!!覚悟を決めやがれ!!今日は確かめにきたんだからな…」


トンメンが何を?と聞きかけた時、扉がガチャっと開き黒髪の男を先頭に3人が入ってきた






=================   ==============





「初めましてセオドリックさん。自分が…魔国第2代魔王…カイ・リョウザンです。こちらは魔国第1将軍のリサと、魔国第2将軍のバリスタンです」


とカイは依然としてテーブルに足を組んだままであり、左肘から先がない男に話しかける


それを聞きながらセオドリックはグイっと酒を飲んでいる。アルコールの臭いがここまで漂ってくるのだ。


リサなどはすでに額に青筋を浮かべ始めている


「……俺はセオドリック・ランスタ―だ」


とセオドリックは値踏みするようにジロジロとカイを見ている。


「じ、自分はトンメン・カータクといいます。すいません。すいません。すいません」


と隣の従者らしき者はひたすら謝ってくる。これだけ対照的な二人が一緒にテーブルにいるのは少し面白い。


そんな二人を、ニコニコとカイは見つめる。一向に話しが始まらない事にイライラしたのか、セオドリックが話しかけてくる


「それで……俺に何の用だ?魔王さんよ?」


それがですね、とセオドリックに話し始めるカイ。


「セオドリックさんは、すでにコーリンから聞いているとは思いますが、自分は魔族と人間族との共存を目指しています。


ですが…長い年月闘い、憎しみ合ってきた種族がそう簡単に手を取り合えるとは思っていません。


そこでまず……自分は交易による発展を目指そうと思っています。互いの文化・慣習を理解しあう事から始めるべきなのではと考えました。


そうする事で人間族と魔族が理解しあえる可能性が上がると思うのですよ」


とカイは自分の考えを素直に語る。


それを、黙ったままセオドリックは聞いていたが、そこで馬鹿にしたように言う。


「はん!!素晴らしい理想だがな・・そんなもんは俺たち商人には関係ねー。関心があるのはもうけ話だけだ」


「無礼者!!」


とリサが叫ぶ


「このお方は魔国の王・・・・魔王であらせられるぞ!!そのような態度私が許しません!!」


その時、バッとセオドリックの隣に座っていたトンメンという従者が飛ぶ。


そして、テーブルの上に見事に着地して土下座をする


「すいません!!すいません!!許して下さい!!セオドリック様はお酒で我を忘れているんです!!」


だが・・セオドリックは飄々としものだ。


「ガハハハハハハハハ・・おう!!殺せるもんなら殺してみろや、お嬢ちゃん?」


「!!!」


リサの手が剣の柄にかかり、抜剣しようとする。それをカイが止める


「リサ・・・落ちつけ」


「ですが!!」


剣の柄に手をおいたままカイはセオドリックに向き直る


「セオドリックさん・・・失礼しました」


さっきまでのふざけた態度とはうってかわり、セオドリックはじっとその様子を見つめていた


「・・・・・。ガハハハハハハハ。おうおう・・分かってるじゃね~~か。それで正解だぜ」


苦笑するカイ。そしてリサに語りかける。


「いいか・・リサ。セオドリックさんは人間族の中じゃ名の知れた商人だ。それをいきなり斬ってしまえば、これからの取引は不可能になる。それから、トンメンさんもテーブルから下りて下さい。」


すいません、すいませんっと言いながらトンメンがテーブルから下りる。


フォッフォッフォっとバリスタンは笑っている。なかなか混沌とした状況だった。


さてっと、セオドリックがテーブルから足を下ろし真剣な表情になる


「俺が今日ここに来たのは、聞きたい事が1つあったからだ。いや、確認したい事といった方がいいかな?」


その先がない左肘をカイに向ける。


「なぜ…俺なんだ?他にも商人はいるだろう?そんな中なぜ?」


それを聞きながらも、にこにこ笑っているカイ。


「それはセオドリックさんが、一番分かってると思いますが」


「・・・・・・ハァ~~。やっぱりか。あのコーリンとかいう奴が訪ねてきた時から、もしかしたらと思っていたが、お前さん…気付いたのか?」


「いえ…自分がというより、諜報活動をする部隊がですがね?」


「……恐ろしい部隊がいるもんだ。どうやって感づいた?…………………俺が魔族と密輸をしていたって事をよ?」


「何ですって!!」


とリサがいきり立つ。


「今密輸といいましたか!!兄様の時代に神聖帝国と関わりを持っていた魔族がいたとでも!!」


カイは両手を組み、じっとセオドリックを見つめる


「神聖帝国の頃から、あなたは魔族と秘かに取引していましたね?まぁ…魔族の方も禁止されながら取引をしていた者がいたようですがね。それを密輸という形ではなく、魔国が正式に認めたいと思っています。もちろん……あなたを罰する事は致しません。ぜひ協力しては下さいませんか?」


口髭を手でさするセオドリック。


「………正直な話だ……お前さん達、魔族は自分たちの民芸品がどれだけ価値があるのか分かっちゃいねーー。人狼族の織物がどれだけの高値で売りさばかれているが知ったら、ぶったまげるぜ。


ふ~~~ん………魔国が後ろだてになるってんなら、これほど心強い事はねーな。


 協力してやってもいいが、一つ……条件がある。その諜報部隊を俺にも使わして欲しい。安心しな、誰かを殺せとか物騒な事は言わねーよ。俺の必要な情報を流してくれればいい。商人にとっては情報が命だからな」


ふむっと腕を組んで少しの間考えてみるカイ


「………いいでしょう。その件についてはコーリンと話しておきますので」


「ああ……商談成立かな?それでさっそくだが、利益の分配やら交易品やらの詳しい話合いをしたいんだが」


「はい……それならここに魔国の経済担当の者がいますので、存分に話しあって下さい」


とリサの方を指さす。いきなり指名されたリサは、初めカイが何を言ってるのか分からなかった。


「……………………………はい???」


ギギギギギギっとカイの方に首を向けるリサ。だが、カイとバリスタンはすでに席を立ち始めている


「じゃあ…リサ後はよろしくね~~!!あ、そうだ!!予算の管理は今日からリサに一任するから!!」


と怒涛の勢いでしゃべり続けるカイ。リサはまったく喋ることができない。


バタンっと扉があっという間に閉まり、セオドリック、トンメン、リサが部屋に残される。


「え?えぇぇ~~??陛下……ど、どういう…」


そんなリサをおもしろそうに見ながら、セオドリックは話しかけてくる


「さて…じゃあ話合いをしようか?お譲ちゃん?」


キッとそれを睨みつけるリサ。


「わ、私をお譲ちゃんと呼ぶ事は許しません!!」


「すいません!!すいません!!あの……赤ワイン飲みますか?」


「飲みません!!」


リサの大声が響きわたり、トンメンはさらにすみませんを連呼していた。





================   =================




「陛下……よろしかったのですか?」


と廊下を歩きながらバリスタンが話しかける。


「いいんだよ…リサは優秀だし、魔国の事についても誰よりも詳しいし、心配いらないでしょ。それにリサの人間嫌いもそろそろ直してもらわないと困るしね」


「いえ……私もリサ将軍なら任せて問題ないと思っております。ただ…予算の管理を一任してしまってよろしかったのですか?」


「え?いいんじゃない?リサが横領するなんてありえないし、問題ないでしょ」


「…………そうですか。いえ、ギルバート様はそこだけは決して手放そうとしませんでいたから」


「????……さてと…時間が空いたし、俺は鍛錬でもしてくるかな」


とカイは、う~~んっとストレッチをする。


「そういえば……陛下は最近、時間があれば鍛錬に力を入れるようになりましたな?何か訳でもございますのか?」


「え?あ~~……つまり…えっと…そう!!やっぱり武闘家としては、日頃の鍛錬を怠っちゃいけないからね!!」


なぜか、カイは少ししどろもどろになりながら答える。


「そうですか……ですがあまり政務をため込むと……」


とバリスタンが言った瞬間、


「あ~~~大丈夫!!大丈夫!!後でちゃんとやるから!!」


と何やら言い訳のようなものをして、前方に走り去っていくカイ


その後ろ姿を見つめながら


「………………ギルバート様も最初のころは、同じような事を言っておりましたな」


と懐かしむようにそこに佇むバリスタン。そして一言


「……………何事もなければいいが」

誤字・脱字ありましたら。感想・意見待ってます。励みになるので

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