アートス教
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?ではどうぞ~~
「ここは・・・・」
気がつくと、自分はベットに寝ていた。
すぐさまベットから起き上がろうとする。だが・・・
「ぐ!!」
体に凄まじい痛みを覚え、呻く
「カエデ…まだ安静にしてないと駄目だ。内臓をいためてしまう」
と横からいつも通り自分を気遣ってくれるやさしい声が聞こえた
「・・カイ」
「ああ…俺だよ。カエデ」
しばらくじっとカイを見つめるカエデ。
そして………
「……私は…負けたのか?」
「そうだよ………まぁ通常の状態だったら勝てなかっただろうけどね。カエデも相当動揺してたから」
「…エリシアは?」
それを聞いたカイは少し悲しそうな顔をする
「…………死んだよ。帝都はすでに落ちた。それを聞いたら歯に仕込んでいた毒で自ら命を絶ったらしい……王族として見事な最後だ」
そうか・・といって目を瞑るカエデ。
二人の間に沈黙が流れる。
そんな中カエデが小さな声で、よわよわしい声で話しかけてくる
「なぁ……カイ。私は…間違えたんだろうか?」
「カエデ」
「こっちの世界に来た頃……二人別々に村に救援に行ったことあっただろ?私の村はゴブリンに襲われていた。子供や老人が殺されてたんだ。当然助けた・・・涙を流してお礼を言われたよ・・・やってよかったと思った」
「・・・・・」
「だから、他の村も同じような被害にあってるなら、助けなくちゃと思ったんだ」
ふふふっと笑う
「目の前に困ってる人がいた。今でも…私のやった事が間違っていたとは思えない。私は頑固で単純なのかな?」
「それが………カエデのいい所なんじゃない?」
「…カイ」
「なぁ…カエデ。アートス教のルーツを知っているか?」
首を横に振るカエデ。それを見て、ゆっくりと語りかける。
「アートス教はね・・・希望だったんだよ」
「希望?」
「ああ・・・昔、人間族の国が多く存在し、互いに争っていた時代だ。その頃から多くの村や街は魔族に襲われていた。
魔族にとっては強さがすべてだ。闘い勝つことが彼らのアイデンティティーでもあるんだよ。
もちろん騎士団や自衛団はあった・・・だがそんなもの名ばかりだった。多くの村が襲われ、殺され、略奪され、凌辱を受けた」
「・・・・・・・」
カエデは黙って聞いている
「彼らは悲嘆にくれた。私たちは何と弱い種族なのだろう・・・私たちは、かつてこの大陸に存在したドラゴンや、エルフ族、ドワーフ、ギガン族のように長く生きる事もできない。かといって、魔族達のように強靭な体でもない。私たちは何と劣った種族なのだろうか・・・搾取されるだけの種族なのかと・・・」
そこで一旦区切る。
「だけど、そこに一人の女性が現れた。サーティー・グランワール。神聖帝国の初代法王だ。彼女はこう言って大陸を放浪していたらしい・・・・
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{誇りなさい!!私たちは・・・人間族!!確かに、私たちは100年も生きられない種族・・・そして布がなければ寒さすら凌げない脆弱な体!!
でも・・・だからこそ!!私たちは団結する事ができる!!手を取り合う事ができる!!
私たちは思いを・・親から子共へ・・脈々と受け継がせることができる・・この思いは永遠失われることはない!!
そう!!私たちは進化し続ける種族!!今よりも・・10年後・・100年後・・時を重ねるごとに私たちは強く気高くなる!!
誇りなさい!!私たちは神により最後に創られた種族!!
私たちは決して・・・・・劣ってなどいないのだから!!}
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「・・・・それがアートス教」
「ああ、そうだ。そしてその教えを受け入れた国同士が一つに纏まり国を建国した…それが神聖帝国だ。
その理想・理念は素晴らしいものだった。だけどね…長い年月が過ぎ、神聖帝国がどんどん大きくなるにつれて、その教えに対しても様々な解釈が生まれるようになった。」
{私たちは、決して劣ってはいない。そうだ…我らは神により選ばれた種族なんだ。この大陸を支配するのは…我ら人間族だ!!}
カイは腕を組んで目を瞑っている
「…神聖帝国内では、解釈をめぐっては様々な見解が示されていたらしい。だから、エリシア姫も本当に知らなかったのかもしれない。魔族を家畜同然に扱っている者がいるなんてね。
カエデの言う事にも一理ある。もし、一部の人間のみがそんな事をしているなら、それをやめさせる事もできたかもしれない
そして…未だに人間族を襲う魔族がいるのもまた事実だ」
「なら…なら私はどうすれば良かったんだ?何が正しいというんだ…」
きつく拳を握りしめ、ボフンっとベットを叩く。
「……………俺もね、ふと考える事があるんだ。
もし、あの時俺が北の魔族退治に行っていたら?
もし、レンに会わなかったら?
伯爵の屋敷へと行かなかったら?
あのジャーン湖でギルに会わなかったら?
謁見の間で、そのまま退出していたら?
俺は……お前と共に、ギルや魔国と闘っていたかもしれないんだよ。
俺は人間族と魔族の共存を目指そうとしている。けど、この理想が逆に溝を広げてしまうかもしれない、争いを生むのかもしれない。
何が本当に正しいかなんて俺にも分からないよ。でもなカエデ…」
「・・・・」
カエデはカイを見る。カイは覚悟の光を目に宿し、じっと見つめている
「立ち止まる訳にはいかないんだよ。俺はもう…俺だけのものじゃないんだ…いっぱい背負っちゃったからね」
「……強いよ……お前は」
「そんな事ないさ……今にもこの重圧に押しつぶされそうなんだから」
「…………」
「それで…カエデはこれからどうする?魔国に来るか?」
「…少し……考えてみる」
というとカエデは目を瞑った
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次の日の早朝・・・外に出てみるとすでにカエデが鍛練をしていた
まさか、もう動いているとは思っておらず、カイは驚きながら話しかける。
「カエデ」
「やぁ…カイ。久しぶりに本気の鍛練をしてみようか?」
と明るくカエデがいった
「・・・・ああ」
カイはそういうと鉄鋼のある手袋をはめて、カエデと対する
カエデは刀を正眼に構え、カイも低く構える
そしてカエデとカイは同時に前に出る。
カエデが斬りつけ、それを紙一重で避ける。
カイは、カエデの顔目がけて蹴りを繰り出す
共に後ろに跳び・・間合いをあける
跳躍するカエデ……それに対し地面を低く走るカイ
「ハァァァァァァァァァ!!」「ウラァァァァァァァァ!!」
激突する二人。互いの攻撃を避け、急所めがけて一撃を繰り出す
そして、先ほどいた場所とは真逆の立ち位置になる
カエデが刀をチンっと鞘に納める。明らかに抜剣の構えだ。
そしてあっという間に間合いを詰めてくるカエデ
「く!!」
カイは後ろにばっと飛ぶ。キンっと音のみが聞こえた
刀の軌道を予測して両手で何とか凌ぐ。だが、そのまま吹っ飛ばされ、膝をつくカイ。
その顔面の先には、刀の先端があった。
「・・・ハァ・・ハァ・・私の勝ちだな」
「・・ハァ・・ああ・・ハァ・・また・・負けか」
「ふふふ。私は負けず嫌いでな。負けっぱなしは性に会わないんだ」
と自分に向けていた刀をどけるカエデ。
「でも…何か答えは出たようだね。刀に迷いがなかったよ」
座ったまま話しかけるカイ。カエデはチンっと刀を鞘へとおさめる。
そしてしばらく黙って空を仰ぎ見ていたが、自分の方を見て話しかけてくる
「なぁ、カイ。やっぱり私は、単純なんだよ。確かにお前の理想は将来多くの者を救うんだろうな。
だけどな…向こうにいた頃から感じていた。気高い理想を掲げ、はるか高みへ行けば行くほど助けられなく者もいるという事を。
その立場のせいで身動きが取れなくなることがあるという事をな」
「じゃ…どうするんだ?」
「私は……この世界を放浪して見ようと思う」
「……放浪?」
「ああ…そうだ。放浪して目に付く困ってる者を、自らの正義に基づいて、片っぱしから助けてしまうような旅にしたいと思う。」
それをじっくりと考えてみるカイ。
「片っぱしからか………ハハハハ……カエデらしいな。うん…いいと思うよ。俺は魔国で自分なりに頑張る……カエデは自分の答えを見つけてくれ。困った時はいつでも頼ってくれて構わないぞ」
「ありがとう…カイ。………なぁ?ひとつ……聞いていいか?」
「うん?」
「私たちは…まだ……親友だろうか?」
とカエデが少し不安そうな声音で聞いてきた。
まだ早朝という事もあり、周りに人の姿はない。軍営とは思えないほど静けさに満ちている
(こいつも………こんな顔するのか。こんな不安そうな顔初めて見た)
朝日があたり、その白髪がカイには凄くきれいに映った
しばらく黙っていたが、カイは馬鹿馬鹿しそうに言う
「何を馬鹿な……俺たちはいつまでも変わらないだろ?」
といつもの様な笑顔を向けるカイ。
それを見たカエデは、
「ふふふ……そうだな」
と二人で笑いあい、拳の甲をぶつけあった
次の日・・・・・・・・・・・・・・・・カエデの姿は軍営のどこにもなかった
え~~自分の中では一区切りといった所です。少し休みたいと思います。書き溜めるとかじゃなくて、1・2日ダラダラしたいと思います。お許しください。