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王たちの宴  作者: スギ花粉
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ジョルン 北の王編


「・・・・・・・・・・」


まず目に入ってきたのは光だった。初めは眩しすぎて、しっかりと目を開けていられなかった。


だが、だんだん目が慣れていきその光がランタンのものである事が分かった。


「おお・・・気がついたか!!よかった・・・今帰ろうとしていた所だったのだ」


ジョルンは声のする方へと顔を向ける


そこには・・・・・ソロス・スタットックがいた


「大事ないか?心配したぞ・・ずっと眠ったままだったのだからな・・医者の話では生死の境を彷徨っていたらしい・・だが峠は越えたようだ。安心しろ帝都は落ちた。我らの勝利だ。ジョルンは運がいい」


「・・・・・・・」



(・・・・・・・・・運がいい・・・か)



「・・・・・・・」


ジョルンはしばらく黙ってソロスを見つめていた。


そして・・・・・・・・・目を瞑る


「????どうした、ジョルン」


ソロスは、ジョルンの様子がどこかおかしい事に気付いた。


しばらく黙っていたが・・・・・ジョルンはゆっくりと語り始めた





============  ジョルン  =============




「私は・・・・・ツインズ家の4番目の子供として生まれました。


 姉が2人に、兄が1人です。私にツインズ家の継承権がまわってこない事など、小さい頃から分かっておりました。


 こんな地位の低い貴族を婿にもらってくれる女性貴族など、いない事も知っておりました


 だから…私は軍人になった。決してなりたくて軍人になった訳ではない。


 しかし・・・私は軍学校で…多くの友と出会いました。


 共に学び……競い……そして…恥ずかしい夢などを語りあいました。


 当然・・・・辛いこともあった。だが、それ以上に楽しかった


 私の青春時代は……間違いなくあの時だった。


 そして私たちは、戦場へと出るようになりました。


 毎日が闘いの日々でしたよ。雄たけびが響き、そして耳をつんざくような悲鳴が轟く。


 そんな中、多くの敵を倒しました。…それと同時に……多くの味方を失いました


 私の友たちも・・・一人・・また一人と私の前からいなくなっていきました


 国のために・・・愛する者のために・・・自らの名誉のために・・・多くの兵たちが様々な思いを胸に死んでいきました。


 戦場は、生と死が混沌とする場所です。どんな鍛え上げた兵士でも、新兵の放った矢で死ぬ事があるのです。


 そんな場所に長くいると、必然的に自らの死についても考えるようになります


 そんな中・・・・時に、光輝く者たちが現れるのです。敵味方に限らず。


 彼らは通常では考えられないような力を発揮し、戦局すら変えてしまう事がある。


 儚い光です・・・・ですが・・・眩しい・・・命の光。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 神王との闘いで・・・一人の少年が戦いを挑んでまいりました。


 相手は年端もいかない少年一人・・・こちらは神聖帝国の精鋭数万・・・馬鹿げた話です。


 ですが・・あの少年は臆することもなく・・真っすぐに本陣へと向かってまいりました


 あの少年が何者なのか・・・・どのような思いを抱いていたのか・・それは私には分かりません


 ですが・・確実に輝いていた。恐怖と同時に……羨ましさも感じていました。


 私も輝きたい!!・・あの者たちのように!!・・・立派に死にたい!!


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 この手を見て下さい・・・これは武人の手ではない・・・これは・・・・老人の手です


 後何年・・馬に乗り風を感じられるのか・・・後何年・・・自分は剣を握っていられる


 自分の墓場は戦場と決めておりました・・・・・・私のかけがえのない友たちのように


 私の前に立ちはだかった・・・あの強敵といえる者たちのように。


 この神聖帝国の精鋭との闘いを、私の人生の終止符とする予定でした


 だが・・・・生き残ってしまった。いや・・とり残されてしまった


 ・・・・・・私は・・・本当に・・・・・運が悪い」




=============       =================



ふ~~~と疲れたように息を吐くジョルン


それをソロスは両手を組み、じっと聞いていた


目の前にいるのは・・・・真の武人だ・・・長い…長い人生を生き抜いた一人の武人だ。


自分などが・・生き残ってよかったなど軽々しくどうしていえよう・・・人生の辛さも知らない・・・こんな若造がだ


自然と・・敬意を払うってしまう。人生の先輩として・・・自らの信念を貫き通した男として。


「・・・・どれだけ強く、生きたいと願っても、生きられない者がいます。それと同じように死にたいと思っても死ねない者がいるのでしょう・・」


「・・・・・・・・」


ジョルンは黙ったまま天井を見つめている


「それに・・ジョルン将軍は本当に運が悪いですよ」


すると、ジョルン将軍がゆっくりとソロス・スタットックの方を見る


「私は、国王のような無能ではない。実力のある者を登用しないなど・・・決して許しません。あなたの経験と技術のすべてを私の国のために役立てていただきます・・・・死んでる暇などありませんよ・…ジョルン将軍」


しばらくじっくりとその意味を確かめ、その言葉の裏に隠されたやさしさを理解する。


そして乾いた笑い声を上げる


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はははは


 こんな老骨に…生きて働き続けろと言われますか。


 ・・・・・・・・・・・・私は・・本当に・・・運が悪い」


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