それが正しい
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?ではどうぞ~~
「陛下…何度も申し上げますが、わざわざ危険を冒す必要はないのではないでしょうか?この程度の軍勢なら叩きつぶすことも可能だと思います」
リサはこの話合いの内容を将軍達の前で説明した時、誰よりも一番反対した。
「リサは俺が負けると思って、心配してくれてるんだね」
「そ、そんな!!陛下が負けるなど万に一つもないと思っております!!」
今、魔国の軍勢から2頭の馬がゆっくりと両陣営の中央へと進んでいく
その片方には魔国第1将軍のリサが。
もう一方には、魔国第2代魔王…カイ・リョウザンが。そしてカイにはローブを着たものが一人しがみついている。
「……中央の精鋭はかなり手ごわい。ぶつかれば、こちらにも相当の犠牲が出るだろう。それに……カエデはかなりの強敵だよ。鍛錬では負けることが多かったしね。だからリサの不安は当たってるよ。だけどね……今回は負ける訳にはいかない。だから少し卑怯な手を使わせてもらう」
とそこで一旦言葉を区切り、
「………リサ…辛いと思うけど…」
それを途中で遮るリサ。
「ご安心下さい。私はこれでも魔国第1将軍です。自分の立場は分かっているつもりです。それに兄様は光の勇者とかいう小娘になど負けておりません。自らの病に倒れたのです。・・・ですが」
チャキっと剣の柄を握る
「……兄様を侮辱するような発言があった場合……私は自分を抑えられる自信がありません。その場合は陛下に止めていただかなくてはなりません」
「………分かった。……大丈夫かい?緊張してる?」
とカイは自分にしがみついているローブの人物に話しかける
「はい。大丈夫です」
「…そうか」
と中央に近づくにつれ、だんだんと二人の人物が見えるようになってきた。
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魔国と神聖帝国の両軍が睨みあうなか、その中央で相まみえる
神聖帝国側には、カエデとエリシア姫がおり。魔国側にはカイとリサ・・・そしてローブで顔を隠している者が一人いる
カエデはローブを着ている者をうろんげに見る
「・・・代表者は二人じゃなかったのか?・・カイ」
「ああ…そうだよ。…俺たち二人だ。まぁ・・もう一人は・・ちょっとね」
カエデはしばらくローブの人物を見ていたが、危険はないと判断したのかカイに向き直る。
「……私はまだ信じられないよ。お前が魔王だと?なぜだ・・・何でだ!!カイ!!」
とカエデが怒鳴る
「・・・・」
それを黙って見つめるカイ
「お前がどうして道を踏み外した!!・・甘言にのせられるような奴じゃないはずだ!!」
「ああ・・・別に甘言にのせられた訳じゃない。自分の目指すもの…成し遂げたい事のために自ら選んだんだ」
「・・・・・・・・・・」
今度はカエデが黙ってカイを睨みつけている。
「……それが本当に正しい事だと思っているのか?」
「…さぁね…それは難しい質問だと思うよ」
そのまま、二人の間を沈黙が支配する。
それを破ったのはカエデだった。底冷えのするような声が響く
「……私たちは、小さい頃から一緒だった…共に道場で競いあうように高めあったりもした。
誰よりもよく知っている……いや、知っているつもりだったのかな。
幼馴染として悲しい……だが……これも幼馴染である私がやらなくてはならない。
……カイ……いや……魔国第2代魔王!!
……お前は……水月流師範代……水月楓が……斬る!!」
と殺気を放ち始める。
それを冷静に見つめ
「ああ・・いいだろう。話し合いの目的は・・カエデ!!お前に一騎打ちを申し込む!!
お前が勝ち、俺が負ければ魔国軍には撤退を厳命している。そしたら後ろの軍勢の一部は劣勢の北部へと行ける
俺が勝てば・・・・・希望である光の勇者が魔王に敗れれば、その動揺は隠しきれないだろう
つまり・・・・この勝負に勝った方の陣営が勝利するということだ」
「受けて立とうじゃないか・・・カイ。私はお前を殺す気でやるぞ!!」
「望むところだ・・・・カエデ。手加減などいっさいな無用な、真剣勝負だ!!だが・・その前に会ってもらいたい者がいる」
「・・何だ?」
ちょいちょいっと手で合図する。するとフードを被った者が前に出る
そしてフードをとる
そこにいたのは・・・・・・・・人狼族の女の子・・・アウルだった
「・・・・この魔族がどうしたというんだ?」
「アウラ・・・つらいかもしれないが、見せてやってくれ」
「はい・・・魔王様」
その言葉を聞くと同時に、カイは目を瞑る。
「これは!!」
カエデの驚く声が聞こえてきた
「・・・アウル・・もういいよ。ごめんな・・辛いことを頼んで」
「いえ・・大恩ある魔王様の頼みですので」
「ありがとう。もう大丈夫だ。戻ってくれ」
アウルが陣営の方へと走り去っていく足音が聞こえた。
そしてカイはゆっくりと目を開ける。そこには何とも言えない表情をしたカエデがいた。
「カエデ・・あの傷がどうしてできたか知っているかい?」
「・・・いや・・拷問の痕のようだが・・魔族同士の仲間割れか?」
「・・・神聖帝国だよ」
「何だと!!」
カエデは目を見開く
「俺が何で伯爵を殺したと思う?彼女を魔族ではなく、家畜といったんだよ。神聖帝国は魔族をあんな風に・・・・」
「嘘です!!カエデ様・・・騙されてはなりません!!これは魔王の策略です!!」
カイの言葉をエリシア姫の絶叫が遮る
「神聖帝国は奴隷を禁止しています!!そのような妄言で、神聖帝国を侮辱する事はこのエリシア・グランワールが許しません!!」
ぱっと手をかざし炎の魔法を放つ・・・・だが一歩も動かないカイ。
なぜなら、リサが横ですばやく抜剣した事を目の端に捉えていたからだ。
「は!!!」
その炎の球体は真っ二つに斬り裂かれ、左右に飛んでいく
「……貴様!!我らが陛下に何という事を!!しかも会談で攻撃してくるなど、礼儀も知らない恥知らずが!!」
「黙りなさい!!恥知らずは貴方達の方です!!私の名は……神聖帝国第1王女・…エリシア・グランワール!!!!祖国に対する侮辱を許すわけにはいきません!!」
「はん!!事実ではないですか!!神聖帝国の馬鹿げた教えのために、いったい何人の同胞が犠牲になったことか!!」
「その言葉…そっくりそのまま返して差し上げます!!村を襲い、弱き者から搾取することしか知らない魔族にどれだけの民が苦しめられたことか!!」
両陣営も色めき立つ、いつ開戦の火ぶたが切られるか分からないのだ。
「カエデ様!!騙されてはなりません!!この者は神聖帝国を裏切り、魔国に寝返った男です!!どんな卑劣な手を使ってくるか分かりません!!」
「……俺がそんなことをするか奴かどうか・・お前が一番わかっているはずだ・・カエデ」
「……」
カエデの唇が一瞬震えた
(……自分には分かる…かなり動揺しているな…カエデ)
その動揺を十分理解しながら、カイは宣言する
「明日の正午・・・ここで勝負だ!!カエデ!!」
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