危うい
え~~楽しんでいただけてるでしょうか?ではどうぞ~~
神聖帝国の攻撃が始まってから、すでに1週間がたっている。
今、壁は大攻防である
何度も城門が破られそうになったが、その度に決死隊を募って対処している状態だ
神聖帝国の方がこちらの犠牲よりも多いが、大軍の中では微々たるものだ。
こちらの犠牲も無視できないものになっている
「カイ将軍!!バリスタン将軍から援軍の要請です」
「5番隊を援護にまわせ!!あの攻城兵器を狙うように魔法部隊に伝えろ!!これ以上近づけるな!!」
「・・・・・将軍!!城門に敵兵がおし寄せています!!」
「く・・・手を空いている者は俺に続け!!行くぞ!!」
カイは城門の真上に急ぎ走る
敵兵が上に盾を持ち陣形を組んでしまっている、このままでは攻城鎚が来てしまう
矢や魔法を浴びせているが、魔法を込めている盾なのか効いている様子はない
「おい!!縄を持ってこい!!」
「は?どういう事ですか?」
怪訝な表情をする兵士
「いいか!!お前たちは俺が合図したら、縄を投げるんだ!!分かったな!!」
よく理解できない兵士が聞き直そうとした時、カイはすでにそこにいなかった
剣を一本兵士からかっぱらうと、バっと飛びおりる
「将軍!!」
驚きその兵士が身を乗り出すようにしてみる。
そこには剣を壁に突きさして威力を殺しながら、下へ下へとおりていくカイの姿があった
それを見て、カイが言ったことの意味をやっと理解する
「く・・・おい!!急いで縄を持ってこい!!カイ将軍を見殺しにするな!!」
============ 城門前 =================
「・・・何だあれは?・・・・・・岩?・・・・・・違う!!敵だ!!」
城壁を見上げていた神聖帝国の兵士の一人が異変に気付くが、少し遅かった
「ハァァァァァァァァァァァ!!!」
ズドーーーーーーーーン!!
と戦場に凄まじい轟音が響き、巻き起こった土煙で何も見えなくなる
シュン・シュン・シュン・シュン・シュン・シュン・シュン・・・・・・
とその煙の中から、無数の何かが飛んでくる
「「「が!!」」
と悲鳴をあげ、盾を持ち陣形を組んでいた兵士たちが次々と倒れていく
その場で陣形を組んでいた兵士たちが、盾を横に持ち替え少し距離をとる
風が吹き・・・・その土煙がだんだん晴れていく・・・・
そこには・・・・一人の黒髪の男が立っていた
「俺の名は!!・・・魔国将軍!!・・・・カイ・リョウザン!!・・・魔国の敵を討ち滅ぼす者なり!!・・・死にたい者は前に出ろ!!」
そう叫び、ザッと構えをとる。その両手はすでに黒いオーラを纏っている
しばらく呆然と見ていた神聖帝国の兵士たちも、指揮官の号令で我にかえる
「何をしている!!あの者を倒して名を上げろ!!討ち取れーーーー!!!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・と神聖帝国の兵士たちがカイに襲いかかる
「ウラァァァァァァ!!」
カイも凄まじい雄たけびを上げて、その大群に踊り込んでいった
============ 夜 ===============
今・・・二人の将軍が、今日一日闘いの報告をしている
「バリスタン様・・そちらの状況はどうでしたか?」
「フォッフォッフォ・・・いやカイ将軍からの援軍で何とかもちこたえることができました」
「・・・・・・・私も何とかもちこたえました・・・ですが・・・明日はどうなるか・・・」
「フォッフォッフォ・・・リサ様・・あまり無理をなさいますな・・・陛下がお亡くなりになってから・・まだあまり日も経っておりません」
「そんな事もいっていられません・・・ここが正念場ですし・・・それに」
「それに?」
「・・・カイ将軍も頑張っていますから」
「・・フォッフォッフォ・・今日の兵士たちの話題はカイ将軍で持ち切りでしたな・・たった一人で城壁から飛び降り、神聖帝国の兵士を何十人もなぎ倒し、時間を稼ぐ。そして兵士の縄に掴まりながら、雨あられと浴びせられる矢と魔法をすべて防いで、無事帰還する。兵たちの歓声がこちらまで届きましたからな」
「・・・・それでも、少しも嬉しそうには見えません」
「・・・カイ将軍も悲しんでおられましょう・・・陛下とは随分仲がよろしゅうございました」
「・・・・・・バリスタン将軍は陛下の病の話を知っていたのですね?」
その質問に対してしばらく沈黙し、重い口を開く
「・・・はい、存じておりました。黙していた事をお許しください、陛下からの厳命でしたので」
「どのような・・・病だったのですか?あんなに強かった兄上が・・・」
「・・・・・・・・それが原因でございます」
「え?」
「・・・・リサ様もご存じの通り、魔族も女性の方が魔力が高いのが常、男はほとんどその恩恵を受けません。ですが・・・陛下は男でありながら、誰にも負けない膨大な魔力をお持ちでした。その力で魔国統一を成し遂げられることができたのです。
・・・が・・・・・強すぎるその魔力は、陛下の体に負担をかけすぎたのです」
「そんな・・・」
「・・・・・・私も医者という医者を訪ね・・時には人間族の医者にまで相談し診てもらいました。ですが・・・・魔力を取り除く事など不可能、と言われました。
その時、ルーウィン様・・・・・つまり神王ですが、魔力を消し去る事ができるという噂を聞きつけ陛下を連れて訪ねた事がございます。
ですが、ルーウィン様ができたのは体から放出された魔力を消し去ることのみ。根本的な解決には至りませんでした。
そして長い月日がたち・・・・・・・陛下の体はすでにボロボロだったのでございます、いつ死んでもおかしくないくらいに」
「・・・・・・・・・」
「ですが・・・陛下から弱音を聞いたことはございません。私におっしゃって下さったのも、自分なき後の魔国を守るためでありましょう・・・そのお気持ちはカイ将軍が誰よりも強く感じているようですな」
「・・・カイ将軍はすごいです。悲しいはずなのに、私を気遣ってくれ、さらに凄まじい闘いぶりです」
「戦に集中する事で、考えないようにしているようですが・・・・危のうございますな」
「・・・・・危ない?」
「はい・・・・死にたがっているようにも見えます」
「そんな」
「・・・・後を追いたいのではないですかな。カイ将軍の家は代々主君に仕える一族といいますし」
それ以上二人の間に会話は続かなかった
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それから数日が過ぎたころ・・ある変化が訪れた。
朝になっても神聖帝国軍が攻撃してこないのである
「油断するな!!小さな変化も見逃すなよ!!」
と叱咤するカイ
すると兵たちがある事に気付き始める
「お、おいあれを見ろ!!」
そこには西へと西へと撤退していく神聖帝国軍がいた
「おい!!撤退していくぞ!!」
「本当だ!!やった!!追い払ったぞ!!俺達は勝ったんだ!!」
と歓声をあげる兵たち
それを冷静に見つめるカイ
(何か策か?・・・それとも・・・・何か問題でも起こったのか?)
カイの疑念は晴れない
感想・意見ありましたら。後、明日から「王たちの宴・・third・・北の王編」
が始まります。神王編と同じように、読まなくても話は通じます。同時進行は難しいかもしれません。