務め
え~~楽しんでいただけたら幸いです。感想とか欲しいですね。ではどうぞ~~
‘壁’にたどり着くと同時に、馬からギルと共に下りる
「陛下!!」
リサ将軍が駆け寄ってくる
「・・・・ゴフ・・・・おお・・リサか・・どうした?血相をかえて・・美人が台無しだぞ」
と口から血を吐きながらも、極めて明るく話すギル
「喋らないで下さい!!今………今、治療班が来ます!!」
リサ将軍が今までに見た事がないほど、動揺しているのが伝わってきた。
「………我はどこも斬られておらぬ…ハァ……ハァ…それどころか……光の勇者の得物を吹っ飛ばしてやったわ」
くくくくくく、ギルは笑う。
かなり場違いな………楽しそうな笑い声が響く
「最後を………あんな猛者との……勝利で飾れるとは……僥倖よ。まぁ………本調子ではないだろうがな・・」
「やめてください!!もう・・・喋らないで!!」
リサ将軍の言葉にも耳をかさずに、話続けるギル
「・・ハァ・・命を懸けた真剣勝負………あの肌をぴりつかせる・・闘気・・久しく忘れていたわ…………時が満ちる前に………よかった」
ギルは苦しそうにしながら、言葉を紡ぐ
バリスタン将軍も近づいてきたが………リサ将軍ほど動揺はしていない
「時?いったいどういう事ですか!!」
「・・・・ハァ・・ハァ・・我は・・長く生きられない体だ・・・・病魔に蝕まれておる・・・
・・それが少し早まっただけのこと・・・」
「そんな・・・」
「なぜだ!!なぜ・・・言ってくれなかった!!」
カイは絶叫する。ギルはしばらく黙っていたが、
「・・・・・ハァ・・ハァ・・・・・・言ったら止めたであろう・・お前はやさしい奴だ・・・だがな・・・これは我が自分自身でやらねばならぬ事・・・死んでも・・運命と・・思い定めておる」
っと言った。その答えにカイは大声を張り上げてしまった。
「そんな事言ってる場合か!!安静にしてれば……もっと……もっと!!」
その言葉を聞き、ギルはニヒルに笑う
―――――――――――あのジャーン湖の時のように
―――――――――――謁見の間の時のように
「ふん!!我に……老人のように……ベットの上で死ねとでも?……くくくく……ハハハハハゲホゴホ・・ハァ……おもしろい冗談だ・・・御免こうむるがな」
だが、それを遮りカイは力の限り叫ぶ
「馬鹿野郎!!リョウザン家の針で治癒力を高めれば」
「……我の体だ・・・我が一番よく分かっている・・・・そんな都合の良いものなどない事もな・・・それに・・良いのだ・・ハァ・・我が・・・いなくなっても……ハァ・・ハァ・・おまガフ」
とギルの口からさらに大量の血が流れる。カイだからこそ分かる。きれいな鮮血だ。きれいすぎる……これは……もう……もう!!
「やめて下さい!!死んでしまいます!!」
リサ将軍が泣き叫ぶ。
「・・リサ・・ハァ・・お前は・・やさしい奴だ・・ちと説教は長いがな・・迷惑をかけた」
ギルはぼんやりとリサ将軍を見つめながら、ゆっくりと語りかけていた。リサ将軍は泣き続けている。
「・・・バリスタン」
「ここに」
今まで黙って立っていたバリスタン将軍が前に出る
「………今まで御苦労であった……感謝している」
「もったいないお言葉です、陛下」
バリスタンは頭を下げている。
「………ハァ…………カイ」
ギルの小さな声が聞こえる。その銀色の目が、俺を真っすぐ射抜いてくる。やっぱり………きれいだと思った
「・・・・・」
「すまんな……お前にこんな事を頼みたくはない。だが…我の墓はあそこがいいのだ……我らが……初めて出会った……あの」
「………ああ」
と何とか言葉を振り絞った。
「………そうか」
その答えを聞くとギルは満足そうに目を瞑り、ふ~~と息を大きく吐き出す
――――――――――――そして
―――――――――次の瞬間
その閉じていた目をカッと開く、その目には意思の光が宿っている。
ギルは剣を杖に立ち上がろうとする。
「やめて下さい・・どうか・・どうか」
リサ将軍がが必死に止めるが、ギルはそれを振り払った。
「……ハァ……我には……王として………やらねばならぬ務めがある!!兵を集めろ!!」
カイはそれを止めることもせず、ギルの姿をじっと見つめていた。
=========== 魔王 ==================
ツカ・・・・ツカ・・・・ツカ・・・・・ツカ・・・・
ギルが‘壁’への階段を一段一段ゆっくりとのぼっていく。バサっとその漆黒のマントが風になびいている。
その姿を兵士たちが見つけ、騒ぎ始める。
「おい!!見ろ!!」
「陛下だ!!」
「陛下が生きておられるぞ!!」
集められた兵士がギルの姿を見て、歓声を上げる。その歓声の中、魔王は頂上へと登り、じっとある物を見つめていた。
バタバタバタっと旗が……一本の大きな魔国の旗が堂々とたなびいている。黒地に……光り輝く銀の流星が見事に刺繍されている
魔王はバッと振り返り、眼下に集められた魔国の戦士たちを見る。そして歓声を右手を上げることで制す。
「……みなの者……よく聞け……我こそ、魔王…ギルバート・ジェーミソン!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今、我が光の勇者に敗れ……死んだという噂が流れている!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
見よ!!……我は………生きている!!」
「「「「おお!!」」」」
とまた、歓声が上がる。涙を流しているものまでいる。
「・…………我は!!光の勇者になどやられておらぬ!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
だが………我はもうじき………………………死ぬ」
「「「「・・・・」」」」
辺りが一瞬のうちに静寂に包まれた。戦士たちは皆がみな自分が聞き間違えたのだと思った。だが、魔王はさらに驚愕の事実を淡々と語っている。
「………これは病魔だ………どうすることできぬ」
‘壁’に集められた者たちを、どよめきが支配した。
「静まれ!!」
それを魔王が一喝した。ざわめいていた場が一瞬のうちに静まりかえる
辺りをぐるりと見渡し、ゆっくりと語りかける
その声は、大きな声というわけじゃなかった・・・だが不思議とよく通る
「……我は……夢をかかげた…………この大陸の覇者になることを!!我が民を導くことを!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
だが………………時間切れのようだ」
と、そこで魔王は大粒の涙を流す。とめどなく魔王の両目から涙がこぼれおちている。
「…これを!!……真に理解できるものなどおるまい!!
夢半ばで、病魔に倒れる。………我の!!王としての悔しさを!!」
みなが魔王の言葉の一言一句を聞き逃すまいと、聞き入っている。方々で嗚咽も聞こえてきた
「我の肩には……魔国のすべてが……何万という民の命がかかっている
―――――――――――――――――――――――――守らねばならん!!
皆の者!!壁の向こうに・・これより先に・・神聖帝国を行かせてはならぬ!!
これが我の……魔王!!ギルバート・ジェーミソンの………遺言ぞ!!
………ハァ……ハァ………剣を抜け!!」
ジャリンジャリンジャリンと、集まっている者のすべての剣が鞘から抜かれる。将軍達も…隊長も…兵士たちも…その場にいるすべての者がギルのあの言葉を待つ。
魔王の剣が氷の魔力が込められていき、青いオーラを纏っていく。その青白い光は、月光とは比べものにならないくらいに辺りを明るく照らす
そして、その魔剣を天にかざし叫ぶ!!口から血を飛ばしながら。
「虐げられてきた我が民に発展と栄光を!!」
「我らが暗黒に対して燃える灯となろう!!」
バリスタンも剣を突き上げ叫ぶ。
「「「夜明けをもたらす、礎になろう!!」」」
魔国の戦士たちが呼応し、剣を天に掲げる。今や大気を震わすほどの声となっている。
「「「眠りし者は目覚めよ!!
すでにホルンは鳴り響いた!!
恐れず進め!!
誇りを胸に!!
我らは民を守りし楯になろう!!」」」
全員が一丸となり叫んでいる。その時…ギルは俺の方を向いて、何かをささやいた
―――――――――――――――それは兵士たちの叫び声で
――――――――――――聞こえなかった
――――――――――――――――――――だが
――――――――――――――――口の動きで何といったか
――――――――――――はっきりと理解できた
―――――――――――――――――そう
―――――――――――――――――はっきりと理解できてしまったんだ
「―――――――――――――――――――――――――――カイ
―――――――――――――――――――――――――――――後は
――――――――――――――――――――――――――――頼む」
ギルはそれだけ言い残して、ゆっくりと後ろに倒れていった
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