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王たちの宴  作者: スギ花粉
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ジョン 神王編

ドドドどドドドっと騎馬隊が平原を謳歌している


ザッザッザッザっと歩兵部隊がきれいな隊列をなして、蛇のようにズンズンっと進んでくる


そこかしこに、アートス神の旗がバタバタっと風に吹かれて、翻っている


それを少し小高い丘の上で見つめているものがいる。ジョンである

       

「………来た」

        

10人、20人の守備隊はすでに何度も蹴散らした。


ジョンの後ろには、アートス神に大きな黒いバツ印。


1本の神王の旗が堂々と、風になびいている。神王の旗がいつまでも、こんな城壁の外に立っているのは迷惑な話のはず。


ちりじりになってしまったとはいえ、まだルーウィンの信者は生きているはずだ。また集まってくる可能性も否定できないと考えるはずだ。


数万の軍勢がきれいに陣形を組んでいる。まさに鉄壁の陣だ。長い人生を闘うことに費やしてきた者たちの放つ威圧感が肌をぴりつかせる。


中央の軍の……………精鋭中の精鋭の出撃だろう。


予想外ではあるが、望むところだ。


ジョンは中央の本陣。大将のいる場所を確認する。


――――――――――――――――――あそこまで


手に漆黒の槍を持ち、懐に手紙を大事そうにしまい込む。そして目を瞑り心気を落ちつける


闘う前は心気を落ちつける。お二人に最初に教わった事だ


軍勢のほうで、パォォォォォォ――――!!っと進軍の合図があった。


前衛が雄たけびをあげ、攻め寄せてくる。


ジョンは漆黒の槍を構えて、そこに炎の魔力を注ぎ込む。


(……ルーウィン様……ダリオン様)


ジョンは槍をクルクルクルっとまわし、今か今かと敵兵が迫りくるのをじっと待つ。そして……


「ハァァァァァァァァァ!!」


と腹のそこから雄たけびをあげて…そのまま………………万の軍勢に躍り込んだ。




===========  神聖帝国   ===================



「…………信じられん」 

     

ジョルンは、自分の目が信じられなかった。


たった一人の少年が神聖帝国の精鋭を次々となぎ倒して進んでいく。

     

「く……………化け物か」


総大将のクレアが、一人に対して数万の軍での出撃を決めたときは、馬鹿な小娘だと思ったものだ。


神王との戦で、全軍の指揮をとれなかったから一度でもしてみたいという、思惑が丸わかりだった。


だが・・・・・・結果として正しかったといっていい。


中途半端な軍勢では全滅もありえただろう。


「何ですか、あれは!!止めなさい!!ここまで、辿り着いてしまいますよ!!」

    

クレアは怯え、慌てふためいている。


当然だ。あれに、恐怖を覚えないほうがおかしい。


すでに何人がなぎ倒されているのか


かつてこの神聖帝国を立ち上げた初代の王……………スタンニス・グランワール


彼は真の英雄であり、何万という敵軍に一人で突っ込み、撤退させたという


子供の頃………聞いた時は自分でも胸が躍り、そのような英雄に憧れたものだ


だが………歳を重ね、武術を学び、戦に出るたびに所詮は戯言だと思うようになった


英雄伝など、脚色があって当然なのだ………大袈裟に書かれただけだと


しかし―――――――――――――――――――――


目の前の光景をじっと見つめる


ゾクっと体が震えた

    

馬鹿げた話だが――――――――――――――ここまで来るやもしれん。

    

「そうです!!矢です!!神王の軍勢には、魔法は効きませんでしたが、矢は有効でした!!矢で遠方から射るのです!!」


思い立ったように叫ぶクレア。

    

「クレア将軍・・・相手は一人であり、それを我が軍が取り囲む形です。味方に当たってしまいます。矢は使えません」


と、ジョルンはクレアを諌める。


だが、返ってきたのは予想だにしない答えだった。


「構いません!!」

    

「な!!」


「味方ごと射なさい!!」


「何を申されます??」


バッとジョンの方を指さすクレア将軍。


「あれを見なさい!!もはや、あんなものは人ではありません!!あれこそ神王の切り札に違いありません!!ここで何を犠牲にしてでも止めるのです!!」


と、指をさすクレア将軍。


「しかし!!」


バンっと机をたたく。


「ジョルン副将!!この戦闘の総指揮は私にある!!口を挟まないでもらいましょう!!誰か、ある!!」


(自分が丹精こめて鍛えた精鋭が味方の矢にかかる…………だと!!)

    

ジョルンは拳をきつく握りしめた。




===========   ====ジョン====    ============




「ハァァァァ!!」


神聖帝国軍の兵士が左右から、5、6人が斬りかかってくる。


それを真上にシュンっと跳躍し、空中で神速の槍を繰り出す


「が!!」「ぎゃ!!」「ぐ!!」


バタバタバタっと倒れてる兵士たち。その鎧は槍に貫かれている

   

「うら!!」


と兵士の一人が後ろから斬りかかってきた。


「く!!」


それを何とか避けるが、少し肩を斬られた。だが、そのまま槍の石突で腹を打つ


少したたらを踏んだ瞬間。多くの兵士たちがジョンに槍を突き出してくる


「うりゃーーーーー!!」


槍を思いっきり振り回す。その一撃で何人もの兵士たちが吹っ飛ばされる


ジョンはバッと手をかざしてシュンシュンシュンシュンっと炎の球体を放つ


「ぎゃ!!」「魔法だ!!」「下がれ!!」っと兵士たちが少し距離をとる


ジョンは一度、大きく息を吸った。すでに息があがっていた。


しかし、レン師匠の鍛練の時ほどではない


「がぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁっぁ!!!」


ジョンは腹の底から、雄たけびを上げた。


突き、走り、転がり、跳躍し、立ち、なぎ倒す。


既に、何人倒したのか分からない。

     


(あと少し)


数人を槍でなぎ倒しながら突き進む。


(もう少し)

     

一歩、また一歩と進んでいく。


その時、ジョンは見た・・・・・・空を覆わんばかりの矢を!!


「くっ」


それを何とか、槍で凌いでいく。周りの兵士が次々と倒れていく。


(まさか!!味方ごと!!)


そこに、第2射、第3射が続く。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


ジョンの雄たけびが戦場に響く。






=============   ==================   =========




「……ハァ……ハァ………ハァ…」



すでに、どれだけの矢が射られたのか分からない。腕、足、肩、胸すでに何本も矢が刺さっている



――――――――――――――――――――――――体がうまく動かない。



――――――――――――――――――――――立っているのがやっとだ。



ゴフっと―――口からは血が、噴き出してくる。だがジョンは本陣の方をじっと見ている。



また空が―――――――――――――大量の矢で埋め尽くされる。


「うりゃぁぁぁぁぁ!!」


口から血を飛ばしながら、その漆黒の槍を高速回転させ、何本も叩き落とす。


だが、それでも数本の矢がジョンに突き刺さる。


「ぐ!!」


ふら……ふらっ……と体が揺れたかと思うと、ガクっと両膝をおり地面に倒れそうになる。


だが、それを槍をガシっと地面に突き立て、杖代わりにしてまた立ち上がる。


そして…一歩一歩近づいていく。


また―――――――空が大量の矢で埋め尽くされる。それをゆっくりと見上げるジョン。



(…ハァ…ハァ…もう避ける体力も気力……残ってない)


上に放たれた矢が孤を描き、自分にめがけて急降下してくる



「―――――――――――――ダリオン様――――――――――――――ルーウィン様」



――――――――――――――――――――目の前まで迫りくる大量の矢








「―――――――――――今―――――――――――参ります」


そして――――――――――――ジョンの体に大量の矢が吸い込まれていった

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