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王たちの宴  作者: スギ花粉
58/200

文字 神王編

「………そんな」


カイから、神聖帝国軍と神王軍との闘いの顛末を聞いたジョンは掴みかかっていた手をはなし、愕然とした表情で床に膝をつく


(……ルーウィン様とダリオン様が死んだ?………自分が必ず護り抜くと決めたのに


 なぜ……自分にこんな仕打ちをするのですか? ……なぜですか!!ルーウィン様…ダリオン様)


そこにカイ師匠の声が聞こえてくる


「………ジョン…つらいと思うが聞いてほしい。実は二人から手紙を預かっているんだ。受け取ってくれ」


と、手紙を差し出された。自分の学のなさをここまで呪った日はない。自分は何とか絞り出すように言葉を発した


「………カイ師匠。自分は…………字が読めません。お願いします。どうか…どうかここで…読んでください」


しばらく黙っていたカイ師匠であったが、


「…………分かった……いいんだな?」と言ってくれた


「………………はい」


カイ師匠は手紙を開いて、声に出し始める


「・・・・ジョン・・許・・・」と、お二人の最後の言葉を語り始めた


=============    ===============



――――――――ジョン…お前にした事を許してほしい。


――――――だがな…私はお前に語ったような人間だ。汚く、卑怯な男なのだ


―――――お前に護ってもらうほど、価値がある人間ではないのだ


――――カイ将軍とレン殿からお前の様子を聞いた。


―――――お前には武術に関して天賦の才があるそうだ。このままお二人に教えをこえば、さらなる高みへと進むはずだ。


―――――その力があれば、多くの事ができるだろう


――――――――将来…困っている人を数多く救うことも。


―――――自らの選んだ王へと仕え、騎士になる事も可能だろう。


―――――さらに…自らが「王」となり国を建てることも、もしかしたらできるやもしれん。


―――――お前は、無限の可能性に満ちているのだ。


――――お二人についてゆけば、人の道を踏み外す事もないだろう


――――――ジョン…お前は真面目で、正直で、努力を怠らない子だ


―――そんなお前の未来を奪うことなど私にはできないのだ


―――人生は思うさま生きてみないとつまらない……自分の信ずる道をゆけ!!ジョン!!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



―――初めルーウィンがお前を拾った時、こいつは何を考えているんだと思った。


――その頃のお前はいちいち暖炉を見てははしゃぎ、小さなパンに涙を流していたな


――子供というものはうるさく、うっとおしい存在だと思っていた


――――お前は知っているだろう。俺は結婚もしていないし、子供もいない


―――俺の嫁は戦だ。そう決めた。いつ死ぬとも分からぬ身だ。悲しい思いなどさせまいとな


―――だが、その生活は寂しいものだった。情けない事だがな。


――――お前に武術を教えた時……不覚にも息子を持つとはこういうものかと思ってしまった。


―――成長していく姿を見て……ああ~~!!まどろっこしい!!こんな事俺らしくもない!!


―――おい!!お前も知っていると思うが、俺は馬鹿なやつが大嫌いだ!!


――見ているとイライラする!!


――――――だから……


―――お前は、俺達みたいな


―――――――大馬鹿野郎にはなるなよ



―――――――――――――――――――――ジョン




===============ジョン    ==================



(ルーウィン様…分かりません!!自分には…分かりませんよ!!自分は孤児なのですよ…文字も書けないし…掃除・選択・調理だって……自分よりうまいものなど山程いるじゃないですか


 武術だって!!お二人のために……学んだのです!!それなのに……それなのに!!


 ダリオン様!!………いつもみたいに………叱って下さい!!……怒鳴って………くださいよ!!)


ジョンは床を見つめることしかできない。そこにカイ師匠の声が聞こえてくる


「ジョン・・これは君のものだ」


と、手紙を手渡された。それをまるで触れたら壊れてしまうものを扱うように受け取るジョン。


(…………お二人の字だ………読めないけど………自分には分かる)


「………カイ」


レン師匠がカイ師匠に話しかけている


「ああ………ジョン俺達は少し出てくるよ……じゃあな」


といって二人は部屋を出ていく。


目から涙が溢れてくる……………止められない………止めようとも思えない


嗚咽がどうしても出てしまう…………自分は・・・自分は・・・・・・・



―――――――――――――そして扉が閉まり


――――――――――――――自分は




――――――――――――一人きりになった


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