魔王様 神王編
「……ハァ……ハァ……ハァ」
今、ジョンは魔王城の鍛錬場で仰向けに倒れている。朝のレン師匠の鍛練は、非常に厳しい。
前日よりも確実にきつい鍛練となっているのだ。死に物狂いでやらないと、鍛錬しないぞっとレン師匠からは言われているから、必死だった。
さっきカイ師匠が自分に針を打ってくれた………すると不思議な事にすぐに疲れが抜けていく。
不思議に思って自分でも針をさしてみたが、血がでただけだった。きっと特殊な技術なのだろう。
カイ師匠はなんと異世界の方なのだ。そんな世界があるなんて、自分には想像もつかない。
初めは槍だけを教えてもらうはずだった……しかしカイ師匠が体術もやってみないか?と言ってくれた。
自分も体術には興味があった。槍が折れた時などに絶対必要だと思うのだ。だから自分からも頼み込んだ。
しかし、それを聞いたレン師匠がカイ師匠と一度喧嘩をしてしまった
「………ジョンは俺の弟子だ」
「い、いいじゃないか…俺もジョンに教えたいんだよ」
ジョンはすぐに二人の間に入った
「け、喧嘩はダメです!!」
それを見て、カイ師匠とレン師匠は顔を見合わせて、照れたように笑いあっていた。
「…………そうだな」プイッとレン師匠は恥ずかしそうに遠くを見てしまう
「ハハハハハハ……いや~~恥ずかしい所見られちゃったね…ありがとうねジョン」
ワシワシっとカイ師匠が頭をなでてくれた。少し、恥ずかしい。でも二人にはいつも仲よしでいて欲しいのだ。
カイ師匠の鍛錬は夕方だ。それまでは自由・・・自分なりに鍛える時間だ。一瞬でも無駄にはできない
「………よし!!」
と気合を入れると立ち上がる
すると………………………そこに銀髪の魔族の男がいた
「おお…やっと起きたか…どうだ?疲れはとれたか?」
と聞いてきた
「……あの……どちら様でしょうか?」
(誰だろうか?魔族の人と話すのは初めてだ)
すると、それを聞きニヒルに笑う。
「うむ。我は…ギルバート・ジェーミソン……魔王である」
「魔王様!!えっと、あの………ご、ごきげん麗しゅう」
と、あわて始めるジョン。
それをおもしろそうに見るギル。
「まぁ・・まぁ・・・落ち着け。そんなに緊張する事はない…公式の場でないのだからな。毎日毎日魔国のために真面目に働いてな……少し休憩しているのだ」
(そ、そうなんだ……やっぱり王様ともなると大変なんだろうなー)
ジョンは尊敬の眼差しをギルに向ける。
「さて……実は少年に聞いてみたい事があってな」
「何でしょうか?」
「うむ……少年……………神をどう思う?」
「神……ですか?」
ジョンは首を傾ける。うむっと真面目に続けるギル。
「ああ、そうだ。この世界…大地…木々…水…生きとし生けるものを創造したという神…運命を司るという存在………人間族はそれを信仰する。まぁ…ギガン族も独自の神を信仰しているが。魔族は神などを信仰せんのだ。神王の傍にいる少年に聞いてみたい・・・神とは何だ?」
「えっと……ですね…自分は……学もないので難しい事はいえません……けど」
「けど??何だ??」
「会ったことがないので、分かりません」
ジョンは、はっきりと言い切った。
パチクリっと驚いたような表情をするギル。そして……面白そうに笑いだした。
「・・・・・・・くくくくく、ハハハハハハ!!
単純明快であるな・・・だが・・真理かも知れぬ。
そう………誰も見たことがない
だが……存在するとは思う……不思議なものだな」
「はぁー」
「いやいや、興味深い話を感謝するぞ・・・少年」
ジョンは、何がなんだか分からず、いつまでも困惑していた
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「・・・・魔王様…自分もひとつ聞いてもいいですか?」
「うん?何だ…少年。我が答えられる事なら、答えてやろう」
「カイ師匠とレン師匠は夫婦なのですか?」
ほう?と少し面白そうにこちらを見る魔王様
「なぜ・・そう思うのだ?」
「え、えっとですね・・・仲の良い男の人と・・女の人は・・夫婦になるって聞きました。師匠たちはすごく仲が良いから、夫婦なのかなーって」
ハハハハハハと笑う魔王様
また・・・・・自分が馬鹿な事を言ってしまったのだろうか
「くくくくく、少年・・・レンが女に見えるか?」
「????」
(どういう事だろう・・・女の人が女に見えるって)
と、一人で混乱するジョン
「良い良い・・あの二人は夫婦ではないぞ・・・・仲はいいがな。それとな・・・レンが女であるとか…そういう事は絶対にカイや他の者に言ってはならぬぞ」
「???……何故ですか?」
「何故か?だと?…………それはな……そっちの方が……おもしろいからだ!!」
と、大声で笑う魔王様
魔王様がおっしゃっている事は、よく分からなかったが、その笑い声が楽しそうだったので、自分もいつの間にか笑っていた