宗教反乱 神王編
ジョンはこれだけの人を、一度に見たことはなかった。
それに・・・・全員の雰囲気が・・・何かおかしい
全員が熱があるようにボーっとしているのだ。
ジョンは、その異常な光景に恐怖を感じずにはいられなかった。
始めは軍営を出て、いつもの兵士と共に進軍していただけでだった。
だが、進むにつれて兵士の集団が1つ2つと加わっていき、瞬く間に大軍となった。
さらに、進んでいくと、兵士ではない集団も加わってきた。
手に手に、鍬や棒などをもった・・・明らかに兵士ではない者ばかりだ。
だが・・・・その人数は半端な数ではなかった。
彼らは信者と呼ばれている。
どういった者たちかなのか、ダリオン様に聞いてみた。
「ルーウィンを、崇拝している奴らだ」といった。
自分もルーウィン様を守りたいと思っている。
だから、自分も信者ですか?と聞くと。
「馬鹿な小僧だ・・」
と言われた。自分と信者では、違いがあるらしい。
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今自分たちは、あんなに大きかった領主様のお城を、完全に取り囲んでしまっている。
信者たちが丸太を、城門に何度も何度も打ちつけている。
門が壊れるのも時間の問題だろう。
領主さまの兵たちが、城壁から必死に手をかざして何かを叫んでいたが・・・・・何も起きなかった。
================ 夜 ======================
ルーウィン様がゆっくりと、城壁にある高台へと登っていく。
城壁の外に集まっている、何万という信者たちが、固唾を呑んで見守っている。
ルーウィン様は、高台へ登るとゆっくりと両手を広げて、天を仰ぎ見る。
静かなる沈黙が、闇夜に伝わる。
どれらいの時が経ったのか?永遠のような気もするし、一瞬のような気もする。
ルーウィンが、両手を下ろし。闇夜のある方向を指さす。
「我が子らよ、次はトーレンへ向かえ。向うのだ。そこにも悪しき気が満ちている。それを打ち払わない限り、未来はない。我が子らよ、そこで待つのだ」
シン、と静まり返ったところに、ルーウィン様の声が響く。
「トーレンへ・・・」
誰かがつぶやいた。
それが、どんどん広がっていく
「トーレンだ」 、「トーレンへ行くぞ」、「トーレンへ!!!」
「「「トーレン!!!」」」
トーレンと城外から声が上がり始めた。
次に上がった声はすでにもう闇をうるわせるほどに大きくなっていた。
万を超える信徒たちが、進み始める。
ジョンはそれに、凄まじい恐怖を感じた。
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ルーウィン様が戻ってきた。
「いやー疲れるものだ。あんなもの、やるものではないな。毎回思うが、寿命が縮んでしまいそうになる・・・・」
ルーウィン様はすでにいつものルーウィン様だった。
「どうした、私の顔に何かついているか?」
ジョンは一度でいいから、聞きたいと思っていたことを聞くことにした。
「ルーウィン様はなぜ、反乱を起こされたのですか?神のお告げがあったのですか?」
ルーウィンは、アハハハッハ、と笑いながらいった。
「これは神のお告げなんかではない」
そこで、酒をぐいっと飲んでいう。
「人が集まった。戦ができると思った。そして多くの者が希望を欲しがっていた。私はそれを与えただけだよ・・・そして神聖帝国を相手に選んだ」
アハハハハハ、とルーウィンは大笑いした。
「思うさま生きてみないと損だ。思うさま生きられる。それだけで、生きている意味がある、と思おうではないか」
ルーウィンの笑い声だけが、部屋へと響いた。
ジョンは思う。
ルーウィン様は、すごい方だと思う。
自分は信者ではない。
いまいち宗教というものが、理解できないところがある。
それでも、ルーウィン様の役には立ちたいと思う。
近くにある槍を強く握りしめる。
学がない自分にできる唯一のこと。
死んでも、ルーウィン様を守りぬくこと・・・・・・これが自分に与えられた役目だ。
ジョンは心に、決意を固めるのであった。