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王たちの宴  作者: スギ花粉
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バークルホイート

    

「カイ!!あれを見ろ!!うまそうな食べ物があるぞ!!お?あっちにも何かあるぞ!!」

    

と、あっちこっちを動き回る、この国の最高権力者・・・・・魔王。


「ギル!!待て!!もう少しゆっくり・・・・・こら!!勝手に裏路地に入るな!!」

    

魔王の勝手さを、全力でカバーするカイ。


それを、横で冷静に観察するレン。


「ハァァァァァー」


深く深く溜息を吐くカイ。

 

「・・・・・・・・大変そうだな?・・・・・」


レンが、少し心配そうに聞いてくる。


「ああ。ギルの相手がここまで疲れるとはね」


心底疲れたというように、喋るカイ。

    

「最近忙しくてな。こうしてレンと喋るのも久しぶりじゃないか?」


「・・・・・・ああ・・・・確かにな」


と、ほんの少しうれしそうに話すレン


「懐かしいね。異世界に来て、初めてできた信頼できる友達がレンだったよ。二人っきりで旅をしたのが遠い昔みたいだね」


「・・・・・・ああ・・・・・・・いきなり槍をぶん投げて悪かったな・・・・」


「はは。気にしてないよ。まぁ、実際・・俺も本気だったしね」

  

「・・・・・まぁ、まだ決着はついていないがな・」


赤い槍を傾けるレン。


「・・できれば、ごめん被りたいね。勝てるとは思わないし・・それに・・・・・・・本当に大事に思っている人とは真剣になれないよ」


「・・・・・・・・・・・・」


驚いたような表情をするレン。

    

ポリポリと顔を恥ずかしそうに掻くカイ。

    

少し気まずい雰囲気が流れそうになる。


それを壊したのは・・・・・


「カイーーーー!!カイはどこだ?早く来い。あそこで、口から火を噴く犬が・・・・・・」


「今行くぞ!!今行くからな!!だから、何も触るなよ!!分かったか!?」

    

カイが血相を変えて裏路地へと入って行く

    

一人さびしく取り残されるレン。


「・・・・・・・・・・・・・・・チッ」


珍しく舌打ちをすると、ゆっくりと裏路地へと向かっていった。


==========  ==============   ==============



テラスで、3人で落ち着いてお茶を飲んでいる。

   

「いやー楽しいな」


終始、にこにこな魔王。


「いい加減にしてくれ」


心底疲れた表情のカイ。

   

「・・・・・・・」


いつものように、冷静に座るレン。


しばらく、お茶を飲んでいると魔王が突然。

   

「カイ。我はバークルホイートが食べたい」


と、言い始めた。


「バークルホイート?」

   

「そう、バークルホイートだ!!どうしても、食べたい!!今すぐに食べたい!!」

   

「わかった。わかった。市場にいけば売ってるんだな??」

   

「ああ!!できるだけ早くな!!」


溜息を吐き、急ぎ席を立ち、市場の方へと小さくなっていくカイ。


==============  ================


「レン・・・・・・」


「・・・・・何だ?」


急にまじめになる魔王に、冷静に対応するレン。

    

「もう・・いいのではないか?」

    

「・・・・・・・・」

    

「いつまでも、隠し通せるものでもあるまい。まぁ、むしろ今までばれてない方が驚きだが・・・・」


と、肩をすくめる魔王。

    

「・・・・・・・・」

     

沈黙を貫くレン。

    

「お前も気づいていると思うが、あいつは相当鈍いぞ。生半可な態度では気付きもせん。・・・・・いい加減、素直になったらどうだ?」

    

「・・・・・・・・」

    

「まぁ、これ以上は何も言わんが・・・・・我としても、カイは優秀な人材だ。できることなら主君と臣下という絆で結ばれるだけではなく、血という繋がりで結ばれたいとも考えている」

    

「・・・・???」

    

「我が妹、リサとの婚約」

    

「!!!」

    

「驚くことはあるまい。優秀な血を加えることは必要だ。例え人間族でもな・・混血種などざらだ。さらに・・・・リサはカイを嫌ってはいないしな。まぁ、あいつも素直になれていないがな」

    

と、目の前の紅茶をすする。

    

「・・・・・・・・」

    

レンは冷静さを装っているが、相当動揺しているのが丸わかりだった。


すでにティーカップの取っ手をへし折っているが、気づいた様子はない。


そこに手に、ココナッツらしきものを持ってカイが戻る。


すると、普段のギルに戻る魔王。

   

「ギル。何とか見つけ出したぞ。これが、バークルホイートでいいのか?」

   

「おお、それだ。それだ。よく見つけてきたな」

   

「・・・・・・・・・・」


   

それから、レンは城に戻るまでカイが話しかけても、心ここにあらずといった状況であった

    

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