闇魔法連合
鍛練場で、部下二人と訓練をしているカイ。
「動きがまだ固い」
と、手にとった棒で軽く打ち込む。
「ぐ」
といいながら、しゃがみ込むシルヴィア
「も、申し訳ありません」
と、そこに兵士が一人現れる。
「カイ将軍」
「うん?」
とそちらを振り向く。
「魔王陛下がすぐに、謁見の間にくるようにと」
「・・分かった。すぐに行くと伝えてくれ」
「よし!!今日はここまで・・・後は個人で自主練しておくように」
と、倒れている二人に近づくと、一本づつ針を打つ。
「・・・・・これで明日に疲れは残らないはずだから」
と、言い残し去っていくカイ。
「「ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・」」
とはずむ息を落ち着ける二人。
「・・・シルちゃん?・・・」
「・・・ハァ・・シルちゃんと呼ぶな」
「やっぱ・・・・将軍には・・・敵なわへんな~・・・」
「・・・・ああ・・・近くで感じれば感じるほど・・・底が見えない・・・それに・・」
「・・・それに?」
「・・・や、やさしくもある」
と、少し言いにくそうに喋る。
「お!!まさか・・・・あの男嫌いのシルちゃんからそんな言葉が聞こえるとは!!ええ?どうなん??・・惚れてもうたの??」
「ば、馬鹿なことをいうな!!」
「お!赤くなった!!これは、本物やで!」
「く・・・・マリア~~~」
「え?ちょ、シルちゃん?何で鞘から剣を取り出して・・・いや・・ちょっと・・ギャー!!」
==========謁見の間===========
「陛下ただいま参上いたしました」
「うむ。お前に客だ」
「客?」
「・・・・・あなた様がカイ様ですか?」
とローブで頭をすっぽりかぶった男が話しかけてくる。
「初めまして・・・私はコーリンと申します」
「???・・・・どなたですか?」
「私は頭領です」
「頭領?」
「はい・・・・闇魔法連合の・・・です」
「闇魔法連合・・・・」
「はい・・・・私たちは神聖帝国の迫害を受け、魔国に逃れて参りました。それでも、レイスによる追撃はやみませんでした。そこで我々は団結したのです。それが・・・・闇魔法連合です」
「それで・・その闇魔法連合が俺に何の用ですか?」
「どうか・・・・・・・・我々を導いてほしいのです。お願いします。レイスに対抗するため、ある程度の訓練は積んでいます。闘えない子供・老人もおりますが・・・必ずやお役に立てると思います」
「ま、待って下さい・・そんな急にいわれても・・・」
戸惑うカイに、ギルが話しかける
「よいのではないか?・・・カイ」
「陛下?」
「今、お前の軍は慢性的な人手不足だ・・願ってもないことであろう。それに・・・・」
「それに?」
「この者では・・・・その重圧にこれ以上耐えることはできん」
それを聞いて、コーリンが驚いたような表情をする。
「な、何を」
「隠すな・・・自分が一番よく分かっているはずだ・・・そんな器でない事がな。だが、他の者のために今まで無理をしてきたのであろう?」
「・・・・・」
カイは黙ってギルの言葉を聞き、コーリンを見つめる
コーリンはふるふると震え始める
「だから、カイが将軍になった噂を聞きつけ、一抹の期待を胸にここまで来たのであろう?もう・・・楽になってもよいのではないかな」
その言葉が突き刺さり、プライドの壁が崩壊したのか・・泣き崩れるコーリン。
「・・・・怖いのです・・私は。私は・・・私のせいで300人の仲間が・・死ぬかもしれないのです。恐ろしくて堪らないのです・・・・初めは・・自分が生き残るためでした・・それがだんだん人数が増えていくにつれて・・みなが私を頼り・・頭領として仰ぐようになりました・・・こんな私をです」
「「・・・・・・」」
「・・その時、闇の力を持つ勇者様が召喚され・・・さらに魔国の将軍になったという噂を聞きつけました・・・・私は汚い男です・・・これで助かるかもしれないと思ってしまった。会ったこともないあなたに助けてもらえるなどと・・・・」
と、泣きながら自分の本心を語るコーリン
それほどの歳にも見えないが・・・・・・
ローブから見える髪には白髪が混じっている
相当の緊張の中で生きてきたのだろう・・・・・・
「カイよ・・・我が命じなければならんか?」
「・・・その必要はない・・コーリン」
と泣き崩れる男の肩に手を乗せる。
「・・・俺が・・お前たちの命を預かろう。命がけで働いてもらうこともあるだろう・・・だが・・これだけは言っておこう。俺を信じて・・ついて来い」
「・・・はい!!ありがとうございます」
そこには・・・・・・・・・・・
カイの手を握りしめ・・・
号泣し続ける男の姿があった。