目覚め 神王編
自分は目を覚ました。木目の天井が見える。
また……あの夢だった。
あの日以来………幾度となく見た夢。この夢を見るたびに心が引き締まるような気持ちになれる。
むくっとベットから起き上がると、眠い目をこすりながらテキパキと着替えていく。
まだ、日が昇る前であり。外は薄暗いままだ。
毎日毎日この時間帯に起き、準備を整えておくのが自分の役目だ。
井戸へ向かいその日使う水を用意する。
台所へ向かい、パンを作り、スープを作る。
朝食の用意ができたら、雑巾をもって屋敷の中を掃除するのだ。小さな自慢だが、埃一つ自分は見逃さないのだ。
もう、3年続けているので慣れたものだ。
それが終わるころには、ちょうどルーウィン様が起きだしてくる時間になる。そこで、部屋の前で待機しておく。
ガチャっと、扉が開く。
「はぁぁぁぁー」
大きな欠伸をする自分の主。
「おはようございます。ルーウィン様」
と、元気よく挨拶するジョン。
「うむ。よき朝だな・・・・ジョン」
ぼさぼさの寝ぐせ頭のまま、自分に応えるルーウィン様。
これが、孤児であった自分が手にした・・・・一生手にするはずのなかった日常であった。
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朝食は少なめにしておく、ルーウィン様は低血圧なので、あまり召し上がられない。
ちなみに自分も一緒のテーブルで食べることを許されている。自分などにもルーウィン様は、やさしくしてくれる。
そしてルーウィン様と取り留めもない話をしながら、朝は過ぎていく。
「ジョン。今日はダリオンが訪ねてくると思う。そのまま、奥に案内せよ」
「かしこまりました」
「うむ」
そういうと、ルーウィン様は新聞を見始める。しばらくするとルーウィン様は朝の散歩に出かけて行った。
その間にジョンは、食器の片付けをし始める。これが終わったら、洗濯をしなければならない。
今日の陽ざしなら、昼頃にはすべて乾くだろう。
================ 昼 ===================
すでに昼になった頃。
ドンドン!!ドンドン!!
屋敷の扉を叩く音が屋敷に響きわたった。
ジョンは急ぎ、入口へ向かい扉をあけと、そこには、筋骨逞しいい壮年の男が立っていた。
「いらっしゃいませ。ダリオン様」
と、ジョンは挨拶をする。
「遅いわ!!小僧!!もっと早く来られんのか!!」
と、いきなり罵声を浴びせてくる。
ダリオン様にとっては、これが当たり前だ。
「申し訳ありません」
「ふん!!」と鼻をならす。
ジョンは朝言われたとおりに、ダリオン様をルーウィン様の元へと案内する。
「おお、よく来たダリオン。待っていたぞ」
と、嬉しそうに喋るルーウィン様。
「ああ、久しぶりだな。ルーウィン」
「ジョン。私たちは少し長く語り合う。だから、夕方になったら夕食を運んでくれ」
「かしこましました」
ジョンはそういうと、扉を閉め、階段を降りて行く。
二人は昔からの長い付き合いであるらしい。
今でもよく、二人で旅に出たりを繰り返している。
旅の目的はジョンは、知らない。知らなくていいとも思っている。その間はジョンが、この屋敷の管理を任されている。
いつ主が戻ってきてもいいように、常に掃除・洗濯・料理もかかさない。
――――――――これが自分の与えられた役目だ
================ 夜 ======================
すでに夜遅くになっていた。
ダリオン様とルーウィン様は未だ奥の間から出てこない。
夕食はすでに届けたが、ここまで長い話合いをジョンは、初めて経験した。
夜食を届けようか、ジョンが真剣に悩んでいると、奥の間の扉がバンっと大きな音とともに開いた。
ルーウィン様がドタドタと台所に走ってくる。
「ジョン!!旅の準備をしろ!!出かけるぞ」
「かしこまりました。今回はいつ頃お戻りでしょうか?」
「いや、今回は戻らん。それと、お前も旅の準備をせよ」
「???」
ジョンはルーウィン様の言ってる意味がよく分からなかった。
「始まるぞ…………ついに……な」
アハハハハハっと高笑いをするルーウィン。
ジョンが普段、目にしているルーウィン様とは明らかに雰囲気が違っていた。