プロローグ 神王編
毎日毎日が同じことの繰り返しだ。特別な事などありはしないのだ。
だが、その日はいつもとは違っていた
「名はなんという??」
その日はいつもと同じ、雪の降る寒い日だった。神聖帝国の北部では雪は降らない日の方が珍しい
そんな中知らない男が、いきなり自分に話しかけてきた。
「・・・・ジョン」
自分は、橋の下で目を覚ましたばかりだ。
そしていつものように、ゴミ箱を漁って今日の食糧を確保しようとしていた所だった
「ふむ。ジョン………お前…両親は何をしている」
「知らない………いないと思う……昔から橋の下で暮らしているから」
と、ジョンは正直に答える。
「ふむ・・・・・・ジョンか・・・ジョンね」
何やら顔に手をついて考えている。ジョンは少し注意深くその男を観察してみた。
茶色い髪を短く刈り込んでいる。身長は180近くあるだろうか……スラッとした印象を受ける。
どこにでもいそうな男だ。特徴がないともいえる。
そして着ているものは、高そうなものばかりだ。きっと金持ちなのだ……もしかしたら貴族なのかもしれない。
そんな事を考えていた時、ある不安が頭をよぎる。
(もしかして……これが人さらいというものなのかもしれない)
確か、橋の下のロビー爺さんがいってた。彼らは子供を連れ去って奴隷のような扱う。そして、使えない子供は魔法使いの生贄にされてしまうのだ。
すごい怖いから、絶対近づいちゃだめだって。
…………けど………この人はあんまり怖くない。
「ルーウィン・・どうした?行くぞ」
そこに、路地裏からもう一人自分の前に現れた。
その人物は筋骨たくましい男だった。髪は頭にまったくない。
そして腰に剣を吊るしている。すごく強そうだ……兵士か何かなのかもしれない。
こっちの人は怖そうだ。
「ダリオン、こいつを見てみろ」
と、自分を指さすルーウィンと呼ばれる男。
「チっ、捨て子か。あっちへ行け!!何もやらんぞ!!」
と、いきなり怒なられた。ジョンの体がびくっと跳ねた。
(や、やっぱり怖い………逃げるべきだ・・でも、足が震えて動かない)
ジョンはカタカタっと震えている
「ダリオン、まぁ待て。怯えておるではないか……ここは私に任せておけ」
そういいながら、ジョンに近づくルーウィン。
そして、しゃがみ込んでジョンと目線の高さを合わせる。
「ジョン・・・一回しか聞かんぞ・・・・・・私たちと一緒にくるか?」
「ルーウィン!!何をいってる!!」
大声を出すダリオンという男を、手で制す。
「どうだ?ジョン?私たちと共に来れば、こんな所とはおさらばだ。そして暖かい家…おいしい飯がお前を待っている。さぁ……よく考えろ」
と真直ぐに自分を見ている。
ジョンは一生懸命に考えた。暖かい家なんて想像もできない。街の人が薄着で家の中にいるのを窓からのぞいた事しかないのだ。
でも……こんなうまい話があるのだろうか?自分を騙しているのではないか?
様々な考えが浮かんでは消えていく中で、一生懸命考える。こんなに真剣に考えたのは生まれて初めてかもしれない。
そして………
「・・・・・・・・行く」
なぜか、そう答えていた。
「ほう。なぜかな?飯がもらいたいからか?寒いからか?」
と、先ほどまでのやさしい表情ではなく、厳しい顔をして問う。
凄まじい威圧感に逃げ出したい衝動にかられた。先ほどまでは、ダリオンと呼ばれる男の方が怖いを思っていたが、今はルーウィンと呼ばれる男の方が怖い。
そんな中…ジョンはこの男に会った時から、感じていたことをいっていた。
「えっとね・・・・あの・・・その・・・・ごにょごにょ」
「聞こえんぞ・・・・大きな声でいってみよ」
「……お、大きかったから!!」
ジョンは勇気を振り絞った。
「何が?」
と、怪訝そうにするルーウィンという男。
「わかんない・・・・・でも・・でも・・大きい・・・から」
ジョンは自分の感じてることを、必死に言葉にしようとした。
だが、うまい言葉が見つからない。
一生懸命に考えるジョンを、にやにや、と見つめるルーウィン。
「ふむ。おもしろい!!ダリオン……こいつは、私が連れて行くぞ!!」
「ルーウィン!!何を馬鹿なことを!!気でも狂ったのか?こんな、どこにでもいるような孤児を拾ってどうしようってんだ?」
「もう決めた。こいつは私が連れていく」
それを聞き、勝手にしろ!!と、ダリオンは先に歩き始めてしまう、
「ああ。自分の思うがままに生きないと・・つまらない」
そういうと、この寒い中。
わざわざ手袋をはずし・・・・自分に手を伸ばしてくるルーウィンという男。
ジョンはその手を見て・・・・・ゆっくりと・・・・自分の手を伸ばし