陰と陽
(・・・なるほど・・・・なるほどね・・・うん・・・・・・全然、わかんないや・・ハハハハハ)
カイは軽く現実逃避をし始める。
その美少女は、すたすたと俺の幼馴染の方へ近づいて行って、こう云った。
「ようこそ。私はこの神聖帝国が第一王女。エリシア・グランワールと申します。歓迎いたします。勇者様。」
王女様はニコっと笑う。すげー美人だ。
「・・・・・・・なぜ、私が勇者だと断定したんだ?そっちにも、もう一人いるだろ?」と俺の方を指さす。
「いえ。その輝かしい白髪は、我らが神・・・・・・・絶対神アートスの光の顕れです。」
そう。
水月家の嫡流は、日本人とはかけ離れた、白い髪をたずさえて生まれてくる。
これが1000年続いているというのだから、驚きだ。
「そして何より・・・・・・・・・あなたは女性ではありませんか」
そう・・・・・・俺の最強の幼馴染の名は、水月楓。
史上最年少の師範代であり・・・・史上初の女性師範代でもあるのだ。
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俺た二人は、謁見の間といった所に案内される。そこには、貴族の服をきた、紳士淑女がたむろしていた。
赤い絨毯の先には、二つの玉座があり、王様と女王様らしき人が座っている。
だが・・・この光景にひっかかりを覚える。
(う~~ん?何なんだろう?)
この異世界?に来てから感じている違和感は何なんだろう・・・・ちぐはぐの様な・・・・・
女王様らしき人が口を開く。
「エリシアよ。そちらが、勇者であるか?」その問いに対して
「はい、法王様。彼女、カエデ・スイゲツ様が神聖帝国に光をもたらす勇者です。」とエリシアはカエデを紹介する。
(てか、何か俺の方にまわりの視線が集中してない?チクチクと・・・・・)
「そうですか。その光の髪。アートス神の賜物ですね。」と法王がにっこりと笑う。
そこに、王様が恐る恐る、本当に恐る恐るといった感じで、話かける。
「・・・・・エリシアよ。そちらの黒髪の者は何者じゃ?」
エリシアは、先ほどの法王の時とはうってかわり、感情の一切こもらない声で
「はい。彼は、カエデ様の付き人のようなものだと思われます」と云った。
(てか、いきなり付き人宣言!?いや、確かにおまけみたいなものだけどさ。あんまりじゃないですかエリシア姫?)
「しかし、その者も召喚の儀により、召喚されたのであろう?では、その者が勇者の可能性もあるのではないか?」
と、なぜか俺を擁護しようとする王様っぽい人。
すると、今まで黙っていたカエデが
「私も、そう思いますね。いきなり勇者といわれても納得できませんし、それにカイが勇者の可能性もある。」と、はっきり言う。
(いやいや、それはお前だよ!! だってピエロ倒したじゃん!!)
それにうまく乗る王様。
「うむ。そうであろう。そうであろう。やはり、宝玉で確かめねばの。」
(・・・・・やたら、嬉しそうだな・・・・・)
それを睨む、法王と王女様。空気がピンっと、張り詰めるのが分かる。
(何この空気?そして、宝玉って何?)
混乱している俺の前に、馬鹿でかい水晶がでてくる。
そして、水晶を指さし王様が云う。
「さぁ、これに手をかざしてみるがよい」と、大きな声で宣言する王様。
(いや、みるがよいっていわれても・・・・・何これ?)
その巨大な紫色の玉を怪訝そうに見ている俺達に、王女様がやさしく説明してくれる。
「これは王の宝玉といいまして、その者の魔力の属性を教えてくれるものです」
ささ、カエデ様と、王女様がカエデの手をやさしくとり、導いていく。
カエデは困惑しながらも、水晶に手を置く。
すると水晶が光を放ち、無機質のような言葉を発した。
「・・・・・光・・・・・・輝かしいほどの光・・・・・・すべてを照りつける太陽・・・・・導くもの・・・・」
おおおー、と周囲がどよめく。
(てか、完全な勇者だよね?これ?つまり・・・・・俺は・・・・・うん・・・巻き込まれただけ?
あれ、何だろう・・・しょっぱいや。ハハハハ)
水晶はゆっくりと光を失い、元に戻る。
「これぞ、勇者の証!!」と、法王が高らかに宣言する。その横で、明らかに嬉しそうでない王様。
(王様?なぜ、そんなに苦々しげなんですか?)
水晶から戻ってきたカエデが、バンと俺の肩を叩く。
「次は、カイの番だな」
(いやいやいやいや、この盛り上がりを見てみろお前。絶対しらけるだろうが!俺をオチに使うなよ)
と、その時・・・誰かのすがるような・・・執念のこもった・・・・視線を感じる。
その視線の先には・・・・・・・・王様が・・・・
(王様?そんな、血走った目をしないで下さい!!無理だから。カエデを超えるなんて)
そう思いながら仕方なく、宝玉へと近づいていく。
(あれ?エリシア姫?俺ん時は何もないのですか?またか・・・嫌われたのかな・・・・・)
と悲しく思いながら、宝玉に手をかざす。
また、無機質の音が響く。
そう・・・・・残念なことに・・・その声は、しっかりと響いてしまった。
「・・・・・・・・闇・・・・・・・・・影となりしもの・・・・従う・・・者・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」
(な、何かどよめいとる!い、嫌だなー、本気にしちゃーー。この水晶は~~お茶目なんだから!!
冗談何だろ?冗談だと言えよ、コラ!!
後ろの兵隊のみなさ~~~~ん、殺気を出さないで!!剣呑な空気を出さないで!!)
するとさらに、追い打ちをかけるように、王家の宝玉とやらがピキっと・・・・ひび割れた。
もはや、どよめくどころではない。
謁見の間は完全な騒ぎになっていた。
(・・・・・・この水晶め・・・・俺は完全にお前を敵と認識したからな・・・)
と、来世での水晶への復讐を心に誓っていた俺にカエデは・・・・・・・
「・・・・・なるほど。陰と陽というわけだ。私とお前にふさわしいな、カイ」
と、バンバンと肩を叩いて祝福してくる・・・・・真正の馬鹿。
(カエデ、この空気を感じてくれ!!祝福してのお前だけだから!!)
重々しい空気を打ち破り、法王様が口を開く。
「・・・・エリシア・・・お二人はお疲れのはず。お部屋へご案内なさい。詳しい話は明日以降にしましょう」
「はい、法王様」
と、エリシア姫が先導して謁見の間から出ていく。
兵士たちが親の仇を見るような形相をしている。
俺の第6感が告げている。これは・・・・・・・やばい。
アドバイス待ってます