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王たちの宴  作者: スギ花粉
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何の根拠もない?

「ギャルルルルル!!」「ガラララララ!!」「ガルルルル!!」


『ルードンの森』へと向かう三人の前に、また魔獣の群れが現れた。ベアウルフよりも小型だが、凶暴な牙をもつ犬の魔獣の群れだった。


正直な話………神聖帝国の光の勇者であるカエデ、魔王であるカイ、さらには伝説の傭兵・赤き狼のレンの三人組みである。これっぽっちの魔獣の群れでは脅威にもならないのだが……


「…………何がどうなっているんだ」


レンは忌々しげに呟いた。そこには魔獣に襲いかかられる恐怖はまったく感じられず、ただただ苛立ちが含まれているように感じられた。


もちろん……スタットック王国内とはいえ、森深くを三人は進んでいるため、魔獣に遭遇する事自体は何ら不思議ではない。そう、遭遇する事自体は何ら不思議ではないのだが…………


「…………今日だけで十数度も魔獣に襲われるだと?………ありえん」


そう………魔獣との遭遇率が異常なのだった。朝早くに三人で『ガックスウェア』を出て、『ルードンの森』へと一直線に向かっていた。


すると、いきなり『ベアウルフ』の群れが現れ……『ワイルドボアー』に遭遇し……二頭の『白猿』が道を塞ぎ……といった具合に魔獣のオンパレードにあったのだった。


初めの頃は今日はよく魔獣に遭遇する日だと思っていたレンだったが、その回数を重ねるにつれてその異常さに気付き始めていた。


「せい!!」


レンがそんな事を考えていた時、カイが最後の一匹に見事な胴回し蹴りをくらわし、襲ってきたすべてを返り討ちにすることができた。


もちろん……怪我をした者などいようはずもなかった。しかし、レンは深刻な表情をしながらカイに話しかける。


「……………なぁ…カイ、少しおかしいとは思わないか?」


「え?あ…あぁ……そう…かな?」


と、なぜかカイからは歯切れの悪い答えが返ってきた。それに多少の違和感を覚えながらレンは続ける。


「いや………明らかにおかしい。考えてもみろ……今まで、一日でこんなに魔獣に襲われた事があったか?…………『ルードンの森』に近づいた途端にこれだ。もしかしたら、これもエルフ族の凶暴化に何か関係しているのかもしれない」


「………ごめん、多分これはそういう事じゃないと思う」


レンが深刻そうに考える中、カイは何か思い当たる節があるかのように言った。


「???…………カイは原因を知っているのか?」


「ま、まぁ……多分だけどね」


これまたあやふやな回答が返ってきた。レンはカイにどういう事なのか説明してもらおうとした時、少し先の方から刀を鞘に納めながら、カエデも戻ってきた。


「ふ~~……こう魔獣に行く先々で前を塞がれては、『ルードンの森』につくのに時間がかかってしまうな」


「……………なぁ、カエデ。少しおかしいとは思わないか?」


「うん?何がだ?」


レンは今度はカエデにカイにしたのと同じような質問を投げかけた。しかし、それを聞いたカエデは不思議そうに首を傾げていた。


「そうか?私はそこまで多いとは思わなかったが………」


「…………いや、どう考えても異常だ」


さらにブツブツと深刻そうに悩み始めるレン。そんな中、カイが恐る恐るというようにカエデに尋ねた。


「ねぇ……カエデ、一つ聞いてもいい?放浪している最中さ、毎日どのくらいの頻度で魔獣に遭遇してきた?」


なぜそんな事を尋ねるんだ?と思ったレンであったが、カエデの返答を聞いて言葉を失ってしまった。


「う~~ん………数えた事がないから正確な数字は分からないが、まぁ……軽く二十は超えるな」


「!!!………二、二十だと!!」


「そうだな……まぁ、大体それくらいだろう。それがどうかしたのか?」


驚愕の表情を浮かべるレンと、不思議そうな表情を浮かべるカエデ。そして、何やらやっぱりかという納得半分、諦め半分の表情を浮かべるカイ。


(はぁ~~……思った通りだ。いや、まぁ……さすがカエデというべきかもしれないな)


カエデと一緒にエルフ族の調査に赴くことになったのだが、カイがずっと心配していた事があった。できれば異世界に召喚されたことで、都合良くなくなっていればいいなとは思っていたのだが、現実はそんなに甘くなかったようだった。


あらゆるもの……というより、むしろ面倒事ばかりを引き寄せるカエデの恐るべきトラブルメーカーぶりは健在だった。


(俺がそれにどれだけ振り回されてきたことか……さらにもう一つ面倒な事があるんだよね~)


カイは過去に元の世界で巻き込まれた事件の一つ一つをまざまざと思い出し、軽く頭を抱えたくなった。しかも、ここは異世界である。本当に何が起こっても不思議じゃない。


まだ対処できるような魔獣だからいいものの、そのうち悪魔やら太古に滅んだというドラゴンやらも蘇るなんてこともありうるかもしれない。さすがに考えすぎかもしれないが。


カイはため息とともに、未だに驚愕しているレンに話しかけた。


「あのさ、レン。その……はっきりした事は言えないんだけど、こんなに魔獣に遭遇するのは多分カエデの体質が……」


「待て……カイ」


しかし、カイがレンにこの異常の原因を説明しようとしたところ、その寸前のところでカエデに止められてしまった。やはり来たか……と思うカイに対して、カエデがさらに続ける。


「まさかとは思うが………あの何の根拠もない与太話をするつもりじゃないだろうな?」


「いや……けど、レンも一緒に行動する以上やっぱり知っといてもらわないと」


そう言うカイに対して、カエデは馬鹿にしたようにさらに否定した。


「何を馬鹿な……何度も言うが、そんな事はどう考えてもありえないだろう?科学的に証明できないじゃないか」


「………」


そう……もう一つさらに面倒なのは、そのトラブルメーカーっぷりをカエデが断固認めないというところだった。しかも、さらに厄介なことに……確かに面倒事をひきつけるなど普通に考えればありえないというところが話を混沌とさせていた。


しかし……カイはそんな証明などがなくとも、絶対にカエデがそうだと断言できる。それを断言できるだけの修羅場の数々はずでに経験済みである。


いつもならカイもここで引き下がるのだが、今回ばかりはそうもいかない。レンも一緒なのである……知らないのと知っているのでは大きな違いがあるのだ。


「???………いったい何の話だ?」


まったく事情がつかめないレンは、軽く混乱しているようだった。


そんなレンにカイが意を決して事情を話そうとした時、なぜかカエデが先に口を開いた。


「なぁ………カイ、私も前から思っていたんだがな」


「うん?何を?」


「いやな……確かに私達は何かと面倒事に巻き込まれるだろう?まぁ、互いに秘伝の武術を会得していたり……私が少し突っ走ってしまう事が多少関係しているだろうことは認めよう。しかし、それだけでは説明できない事が多すぎると思うんだ」


「そ、そうなんだよ!!」


ついにカエデも自身の特異体質について自覚してくれる時が来てくれたかとカイは胸を踊らした。しかし、カエデの口から放たれたのは恐るべき言葉だった。


「こんな事は言いたくないんだが………カイ、お前がそういう事に巻き込まれやすい体質なんじゃないか?」


ド――――ン!!……っとカイの頭の中に火山が噴火したような衝撃がはしった。


「カカカカカカ…カエデ…おおおおおおお前…今、何て言った?」


カイはもはや呂律すらちゃんとまわらない程、動揺しまくっていた。しかし、カエデは淡々と衝撃の事実を語っていく。


「だからな……私が何かしらのトラブルに巻き込まれる時は、常にお前も一緒じゃないか。いつも面倒事に巻き込まれるのは、カイ……お前のせいなんじゃないのか?」


カイはそれを聞いた瞬間……顎が外れるかと思うほど口をあんぐり開けてしまう。しばらくそのままの状態で固まっていたカイであったが、森中に響き渡るような大声で絶叫してしまった。


「ア、アホか―――!!な、何言ってんの?え?俺?俺のせいなの?京都での妖怪騒ぎも?隕石も?その他もろもろの面倒事も?俺のせいだって言いたいのか!?」


そんなカイの絶叫に対して、カエデはコクりと頷いた。


「そうだ。それならすべて辻褄が合うじゃないか……まぁ、なぜ私の時だけ魔獣の出現回数が多いのかはよく分からな「ぐきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


しかし、そんなカエデの言葉を遮るようにして、耳をつんざくような獣の咆哮が聞こえてきた。そして、何かが群れとなって走る地鳴りのようなものまでも。


それが聞こえた瞬間、スッと戦士の顔になるカエデ。そして、軽く息を吐くように笑った。


「ふ……また、魔獣が来たようだな。カイ、一旦この話は終わりだ…………先手をとる!!」


そういうとカエデは自らの得物である刀を鞘から抜き放ちながら、地鳴りが聞こえるほうへと疾駆する。そんなカエデの後ろ姿にカイの怒りの絶叫が響き渡る。


「ちょ、ちょっと待て―――――――!!カエデ、この件だけは絶対にしっかりとけりを付けるからな!!そうじゃないと……そうじゃないと、今まで散々な目にあってきた俺の……」


カイが怒りなのか、困惑なのか、絶望なのかよく分からない感情に打ちひしがれていると……そんなカイの肩にポンっと優しくか細い手が置かれる。


カイが震えながら振り返ると、そこには何かを察したようなレンが何とも言えない表情で佇んでいた。


「…………まぁ、何だ………何となく理由は分かったぞ………その……頑張れ」


そんな……レンに優しい言葉をかけられたカイは、涙が零れおちそうになった。

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