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王たちの宴  作者: スギ花粉
152/200

赤と黒

どうも、スギ花粉です。えっとですね、感想なんですがユーザーの人のみだったらしく、その他の人が書けない状況だったらしいんですが。指摘を受けたので全員かけるようにしました。お気に入り登録している人以外に何人読んで下さっているか分からないのですが、感想などは励みになるのでもらえたらありがたいです。えっと荒らしなどがあったら、元に戻したいと思いますので。ご理解下さい。では、楽しんでいただけたら幸いです。

今、魔王城の中庭にある鍛錬場に二人の人物がいた。一人目は深紅の髪を耳元にかからない程度に短く揃え、その手にはその髪と同じ真っ赤な槍を持っている。茶色のなめし革の軽装の上から黒いローブを纏い、その顔の半分をローブと同じ黒いマスクで隠している。伝説とまで言われている傭兵・赤き狼・レンである。


もう一人は褐色の肌に、珍しい黒髪を後ろで縛りポニーテールのようにし、真っ白なローブにバンダナを頭に巻いており、その腰には半月刀がぶら下がっている。魔国第2代魔王であるカイ・リョウザンの盗賊としての師匠であり、自称・魔国を盗んだ‘盗賊王’……メリル・ストレイユである。


二人は楽しそうにお喋りを…………というより主にメリルが楽しそうに喋っている。


「つまりな?俺っちはこう思った訳なんだ。じゃあ…一番頑丈な扉ってのは何なのかってな」


「…………そうか」


レンはメリルの話を聞きながら、真っ赤な槍を傾けて穂先が曲がっていないか確認する。少し傷んできているようだが、曲がってはいないようだった。


「おう………そこで俺っちは考えた。ここで扉から一回考えを切り替えたのが、俺っちのすごい所なんだ」


「…………なるほど」


レンは鑢を取り出すとジャージャージャーっと丁寧に穂先を研いでいく。しばらくしたら、あのアイゼンブルグの爺の元にいって手入れをしてもらう必要があるかもしれない。


「ほいでな。俺っち達が大切に保管しておきたいと思うものって何だと思う?」


その問いをジャージャーっと槍の穂先を手入れしながら考えるレン。


「…………宝……とかか?」


しばらく考えた後、ボソっとその問いに答えるレン。それを聞いたメリルは、パンっと両手を叩いた。


「その通りだぜ!!レンは頭の回転がカイより早えーー!!盗賊に向いてるぜ!!」


「…………そうか。ありがとう」


「そう!!つまり宝とかを盗られないように頑丈な扉を用意する。じゃあ、逆に考えればだ!!宝物庫の扉が一番頑丈って事になるじゃねーか!!」


「………」


メリルはちょくちょく魔王城に遊びに来る。メリル的にはここは自分の城なのだから、いつ来ようが勝手だという理屈らしい。しかし、すでに何度も門番と言い争いになっている。その度にメリルが兵士を、全員気絶させて魔王城に入ってくるのだが。


メリルを魔王城に入れるとリサから叱責と減給があるらしい。だが、メリルを止められるような者が兵士の中にいるとも思えない。だから、兵士達にとってメリルは天災のようなものなのだ。


そして、まずカイの所へ行く。だがカイは仕事で忙しい事がほとんどだ。そうすると決まってメリルは自分の所に来るのだ。


(まぁ…………俺も仕事がある訳じゃないから、別にいいんだが。それに、メリルには何だか憎めない所がある)


「あ~~あ~~早くカイの仕事終わらね~かな~。あの銀髪がいなければ、すぐに遊びに行けんのにな~~なぁ?レンも一緒に行こうぜ、絶対楽しいぞ~~」


メリルは自分の隣で胡坐をかきながら、左右にふらふらっと上半身を揺らしている。リサとメリルは、水と油だ。会う度に喧嘩ばかりしている。


ジャキっと研いだ槍を水平に構えながら、レンはメリルに前から聞こうと思っていた事を世間話のつもりで口にしてみた。


「…………そういえば、メリルはカイが記憶を失っている間ずっと一緒にいたんだろ?」


「おう!!俺っちが、瀕死の重傷のカイを助けたんだ。それから、ず~~と一緒だったぞ」


「………そうか。記憶を失っているカイはどんな感じだったんだ?」


メリルはそれを聞き、う~~んっと腕を組んでしばらく考えていた。そして……


「う~~ん、別に今と変わらなかったぞ。ほんで、カイが盗賊になりたいって言うから、俺っちが子分にしてやったんだ。俺っちが盗賊の技術を教えて~~そのかわりにカイが料理とか掃除をして~~」


メリルが楽しそうに喋っているのを聞きながら、レンは黒いマスクを外し水筒の水を口に含んだ。先ほどまで一人で鍛錬をしていたため、喉が渇いていたのだ。喉を水が流れていくのが感じられる。


レンが喉を潤している間中もずっとメリルは喋り続けていた。


「それから、俺っちとカイは一緒に旅をして~~一緒にお酒飲んで騒いで~~一緒に寝て~~」


ブ―――――っと飲みかけていた水をすべて吐き出し、レンはごほごほっとむせてしまった。


うわぁぁぁ…レン、汚ね~よ~っとメリルが騒いでいたが、それどころではなかった。


「ゲホッゲッホ……な、何だって?」


レンは声を完璧に裏返していた。だがそれとは対照的に、相変わらずメリルはゆらゆら揺れている。


「うん?だから~~お酒飲んで騒いでな?そうそう……カイは笑い上戸なん」


「そ、そこじゃない!!その……その後だ………一緒に…その…ね、寝たとか…あの…何とかき、聞こえたんだが」


っとレンは、しどろもどろになりながらメリルに確認した。それを聞いたメリルは……


「うん…一緒に寝たぞ。お酒飲んで~~特にカイはべロンべロンだったからな、その勢いのままベットに倒れこんだんだ。ほんでそのまま一緒に寝た訳だ。気持ち良かったぞ(ポカポカで)」


「………」


レンは震える手でもう一度自分の槍を握りしめ、ジャージャージャーっと槍を研いでいく。先ほど幾分かそれに力が入っているようにみえる。


(……メ、メリルとカイが。ま、まぁ………俺には、まったくもって関係ないがな)


ジャージャージャージャージャージャージャージャーっと槍を研ぐスピードが少しずつ早くなっていく。しばらくの間レンは無言で研ぎ続け……ハッとある事に気付いた。


その考えに愕然としながら、横で相変わらず楽しそうにゆらゆら揺れているメリルに話しかけた。


「………メリル。その……こ、この前、カレンという女性と会っただろ?」


「カレン??」


「その…金髪でこの辺まで髪を伸ばした……」


っとレンは身ぶり手ぶりでメリルに説明すると……メリルはポンっと手を叩く。


「あ~~……キキキキ。あれは面白かったな~~」


っとメリルはその時の事を思い出したのか、面白そうに笑っている。レンは少し戸惑った。予想外の反応だったからだ。


「……メ、メリル?その…あの…そ、それだけか?」


「何がだ~~?」


「い、いや……カイがその……つまり、そういう事なんだぞ?メリルはそれでいいのか?」


「???…う~~ん……よく分かんないけど、カイだしな。まぁ…別にいいんじゃないか?」


「…………」


(カ、カイなら許せる……という事か?……いや、しかし……)


ジャージャージャージャージャージャージャージャー……略……レンは無言でさらに鑢で研いでいった。しかし、あまりに力が入り過ぎているためか、槍の穂先が削れ始めてしまっていた。


だがそのおかげか、レンはほんの少し……ほんの少しだけ冷静になった。


(い、いや待て。その……メリルは、カイと一緒に寝たといっただけだ。な、何もなかった事も考えられる……っと思う。俺にはまったくもってどうでもいい事だが…い、一応確認しておこう)


す~~は~~す~~は~~っと何度も深呼吸をして心を落ちつけるレン。そして、ゴホンっゴホンっと何度も咳払いをして、何でもない風を装い話しかけた。


「………な、なぁ?メリル?その…ね、寝たというのは、その……そ、そういう意味なのか?」


「そういう意味?む~~~レン、俺っちよく分からないぞ。もっと分かりやすく言ってくれよ~~」


メリルは無垢な瞳でレンを見つめた。それを受けてぐっと唸るレン。しばらく、ワタワタと慌てていたが意を決したように……


「つ、つまりだな。その……カイと……あの…契を結んだというか……女男の営み…をしたのかという事なんだ………」


顔を真っ赤にしながら言葉を紡いだ。だが、その言葉は少しずつ小さくなっていき、最後の方はぼそぼそっと一人言のようになってしまっていた。しかし、メリルにはしっかりと聞こえていたようだ。


「む~~~~何か起きたカイも、冷や汗をダラダラかきながら同じような事聞いてきてたな。ただ、くっついて寝ただけじゃね~か。そんなに重要な事なのか?俺っちにはよく分からない………あ!!あれは、カイじゃねーか!!」


「!!!」


メリルは突然魔王城の方を指さしたかと思うと、ばっと立ちあがり城の方へと走って行った。そして、鉤爪のついた縄を取り出し、ヒュンヒュンっとあっという間に投げつけ、魔王城の外壁をよじ登っていく。


レンは目を細めてメリルが登っていく先を見てみるが……どこにカイがいるのかまったく分からなかった。


(メリルの話を総合すると……つまり、何もなかったという事……でいいんだよな)


レンがほっと胸をなでおろしたのもつかの間……はっとしてブンブンブンっと頭を左右に強く振って雑念を追い払った。


「……………はぁ~~~」


レンは改めて地面に胡坐をかきなおした。もうすぐ自分で決めた休憩の時間が終わるが、今日はもう何をする気もなくなっていた。


(…………俺は何を動揺しているんだろうな。別にカイが誰と付き合おうが、関係ないはずじゃないか)


傭兵となってからは、魔国、神聖帝国、ドラグーン王国を一人で渡り歩いてきた。主な目的は強い奴を探すということだったが、路銀を集めるために様々な仕事をこなしてきた。


傭兵稼業は男社会だ。情報を集めるために酒場などに行くこともざらだった。だから、そこでの男共の会話というのは嫌でも耳に入ってきたし、酷い時などは酒場に妓館から遊女を直接呼んできていて……その……つ、つまりはそういう事をしている場面を見てしまった時もあった。軽いトラウマだが。


だから、男にそういう欲望があるというのも理解してはいた。だからと言って納得できるものではないが。女性をそういう性の対象としてしか見れないような連中には嫌気がはしる。


歴代のスタットック王国の‘北の王’の大半は男だった。女性が差別された訳ではなく、ただ単に男に恵まれたという事なのだろう。当然、女の‘北の王’もいたのだから。


王として後継ぎをつくる事は義務でもある。後継者がいないと戦乱の火種になりかねないからだ。だから歴代の男の‘北の王’は、何人もの妃を同時に娶っていたという話だ。


だが神聖帝国の女領主や、女の‘北の王’はそんな事はしない。理由は簡単だ。酷い話だが、何人もの夫を持ってしまうと誰の子か分からなくなるからだ。当然、父親が分からないっというような事態になれば、それこそ血生臭い争いが起きてしまおう。


どうしても後継ぎが生まれず、一族の血を絶やす訳にはいかないような場合にのみ精霊の加護による離縁が認められる。だが、それは特例としてだ。だから、生涯の伴侶というのは一人だけというのが常識といっていいと思う。


「……………カイ……か」


俺はカイの事を友だと思っている。不遜だが、カイもきっと俺の事をそう思ってくれているだろう。だから、カイの事が気になるだけなのかもしれない。……………………本当にそうなのか?本当にそれだけ……だろうか


レンが真剣にそんな考えていとその時………………背後からいるはずのない者の声がした。


「呼んだ??」


「!!!」


ジャキンっとレンは振り向きざまに槍の先端を向けた。そこには顔をひきつらせながら、両手を上げるカイがいた。


「レ、レン!!お、俺だよ!!危ないから、どけてーー!!」


「…………」


レンは驚愕の表情を浮かべたまま、カイを見上げていた。相手がカイとはいえ、自分がここまで誰かが近づいてくるのに気付かないとは。これが敵だったら、自分はすでに死んでいるだろう。レンは愕然としながら、ゆっくりと槍を下ろした。


それを見てほっとした顔をしたカイが………


「あのさ?メリル、知らない?仕事終わるまではレンの所に行くっていってたんだけどさ?」


「………あ、ああ。メリルなら、あそこにいるぞ」


っとレンは魔王城を縄をつたって登るメリルを指さす。それを見たカイは驚いていた。


「メリルは何をしてるの?」


「………いや、カイの姿を見たらしくてな。そのまま登って行ったんだ」


それを聞き、カイは苦笑しながらレンの隣に恐る恐るという風に座った。何やら少しだけカイの様子がおかしく感じられた。


「「………………」」


そしてそのまま二人の間を沈黙が支配した。いつもなら、何かしらカイが話題を振ってレンがそれに答えるという形で会話が弾むのだが、今日に限ってカイは少し黙りこんでいる。


実をいうと、カイと会うのは久しぶりだった。毎日のように自分はカイに深夜の鍛錬につきあってもらっていたのだが、例の一件から少し躊躇うようになったからだった。相手の事を考えれば、俺とカイは何もないとはいえ、気分がいいものではないだろうから。


「…………ねぇ?レン。ちょっと確認したい…っていうより、はっきりさせておきたい事があるんだけどさ」


しばらくその静寂が続き、さすがにレンも少し居心地の悪さを感じ始めた頃、カイが何やら意を決したかのように話しかけてきた。


「…………どうしたんだ?改まって。言いたい事があるなら、はっきり言ったらどうだ?」


それを聞いたカイは、自分の目を真っすぐに見てきた。そして…………こう言った。


「その……あのね?正直に答えてくれていいんだけどさ……………お、俺の事、どう思う?」


レンはそれを聞いた瞬間………………自分の手から槍がすり抜け落ちていくのを確かに感じた。


感想・誤字脱字ありましたら。本当に励みになります。

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