表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王たちの宴  作者: スギ花粉
145/200

当然 竜王編

え~~スギ花粉です。ラジオコーナーは不評だったので、一回打ち切りです。すでに削除しましたので、読んだ人しか分からないでしょうが一応の報告です。

では、楽しんでいただけたら幸いです。

セシルとライサがマーテル家に保護されてから、すでに5日がたっていた。セシルの放った檄によりマーテル家の城には南部領主が続々と集まってきている。


「アーサー様~~!!…アーサー様~~どこですか~~」


そんな状況の中、ライサはマーテル家の城中を駆けずり回っていた。アーサーを探すためである。ライサが少し目を離した隙にアーサーはまた、どこかへと姿をくらましてしまったのだ。


ライサはセシルより、アーサーが無茶をしないように見ていて欲しいと命ぜられていた。少し前にも、アーサーは突然いなくなった事があった。その時は、マーテル家の鍛錬場にて何十人もの兵士を叩きのめしてしまっていたのだ。


その時は一人も死人が出なかった。アーサー様の話ではあまりに手ごたえがなさすぎて、途中で完全にやる気を失ってしまっただけらしいが、不幸中の幸いだった。


(……はぁ~~~。私にどうしろって言うんですか)


例え自分が傍にいた所で、アーサー様が何かをしようと考えたら止める事など不可能なのだ。厄介な仕事を押し付けられた気分だった。


ライサははぁ~~っと深いため息を吐きながら捜索を再開した。城の中はくまなく探したがいなかった。そして、鍛錬場にもあれ以来訪れていないという事だ。だとすると……後は正門近くの中庭であるこの辺りにいるはずなのだが…………


その時…………ライサは見つけた。一本の木から、金色の鎧を身に付けた足がプランっと垂れ下がっているのを。


「アーサー様!!」


ライサは叫びながら、木に近づいて行った。そして、ライサは木の枝で退屈そうに徳利のお酒を飲みながら寝転がっているアーサーを見つける事ができた。


「アーサー様!!どこかに行く時は、私に一声かけて下さいと言ったじゃないですか!!」


ぎゃんぎゃん騒ぐライサをアーサーは胡乱げな表情で見て………無視した。まるで何も聞こえなかったがごとくに酒を嗜んでいる。


「ち、ちょっと!!無視しないで下さいよ!!」


「……………騒ぐな…煩わしい。そんなに大きな声を出さないでも聞こえている。だが、なぜ我がいちいちお前に声をかけねばならぬ?安心しろ。この城の人間のあまりの弱さは、この前身にしみて味わった。あれでは唯の弱い者いじめだ………我の方が虚しくなるわ」


アーサー様は、ふんっと鼻をならすとまた徳利のお酒を飲んでいた。ドラゴンがお酒好きというのは本当だったようだ。暇さえあれば酒ばかり飲んでいる…………ただ、ドラゴンの体の造りはやはり人間とは違うようで、まったく酒臭くならないのがライサにとってはありがたかった。


(というより、ドラゴンであるアーサー様と渡り合える兵士がいたら、とっくの昔に英雄になってますよ)


ライサが呆れながらそんな事を考えていると、ドドドドドドっという地鳴りとヒヒ――ンという大量の馬の嘶きが聞こえてきた。そして、南部領主の兵士たちが正門付近に集まりざわついている。


「…………何の騒ぎだ?」


アーサー様は木の枝から怪訝そうな声を漏らした。私はアーサー様のその言葉を聞き、そちらを見てみた。そこには何千という騎兵隊が正門から続々と入場してきていた。その騎馬隊は白字にドラゴンの刺繍が施されたドラグーン王国の旗印と、ドラグーン王国の最精鋭である元帥の旗印である雲を貫く剣の旗印が掲げられていた。


そして、先頭の指揮官は濃褐色の双眸に、乱雑に切りそろえられたオレンジの髪をし、他の者と同じように白い鎧をその身に纏っている。


「あれは……アシャ将軍!!」


「ほう…………チビ助。お前の知り合いか?」


「わ、私はチビ助ではありませんよ!!」


グルルルルルルっと今にもアーサーに噛みつきそうな勢いで喋るライサ。それをアーサーは心底面倒そうに流した。


「あ~~分かった分かった。そういちいち喚くな………うるさくて敵わん。それで…何者だ?」


「…………………はい…ドラグーン王国の最精鋭と言われているガウエン元帥の副将の一人です。しかも、彼女が指揮した戦はこれまで負けた事がないという逸話まであるのです」


「…………ほう?面白い……続けろ」


今まで、胡乱げに聞いていただけのアーサーは少しその話に興味を示した。ライサとしても、ちゃんと聞いてもらえるのは嬉しくいつになく饒舌になった。


「はい。何でも戦場では、常に敵の裏をかき、伏兵を見抜き、さらに死角からの矢を素手でつかんだと事もあるという話です。そこでドラグーン王国の者は彼女をこう呼ぶのです。‘無敗の神将’っと、さらに驚くべきはその剣の腕前です。女性であるにも関わらず、敵を鎧ごと真っ二つにしたという話もありますし、ドラグーン王国の武術大会でも優勝の経験がおありで、戦場ではまさに……ってアーサー様!!」


ライサは自分の説明を止めざるをえなかった。なぜなら、今まで木の枝に横になっていたアーサーが急に立ち上がったかと思うと、突然空高く跳躍したからだ。そして、アーサーが跳躍した方向には今まさに馬から下りた…………現ドラグーン王国最強の騎士がいた。





=============    ================




ドドドドドドドドド……っとゆっくりと開いた城門をアシャが率いる5千の騎馬隊が続々とくぐっていった。


「休止………休止!!」


アシャはそう叫びながら右手を上げる。それで騎馬隊はきれいにその足を止める。簡単なようでいてこれがかなり難しい。その動き一つが、この騎馬隊の精強さを物語っていた。


先日、ガウエン元帥の元に書状が届いた。それはセシルが、王家の名の元に謀反の首謀者であるイライザ王妃を討つというものだった。それを受け、ガウエン元帥はセシルと面識のある私を派遣されたのだ。


アシャが率いる騎馬隊の者たちが、一人また一人と馬から下りていく。周りには多くの南部領主の兵がいるが、アシャの軍の兵士たちは放つ空気からしてすでに周りを圧倒し始めていた。


当然だった。アシャの軍は神聖帝国の侵攻が盛んな国境付近で、闘い続けた者たちからなる精鋭だ。それに比べ国境から離れた領主の軍など、まともに戦の経験すらないような者たちだ。農民や平民あがりもチラチラ見える。


「アシャ将軍。我らはいかがいたしましょう?」


馬から華麗に下りたアシャに、一人の老将が近づいてきた。名をスイプト・バックウェル。アシャが小さい頃からヴェラリオン家に仕えてきた騎士であり、常にアシャを影から支えてくれている。アシャからは爺の愛称で親しまれていた。


「うん……私は、これからセシル王女との謁見を求めてくる。神聖帝国西部での異変や、国境の状況について説明し……」


(アシャ!!上です!!)


アシャがスイプトと話していたまさにその時、ファルナの声が頭に直接響いた。アシャはそれを聞いた瞬間……スイプトを突き飛ばし、それと同時に腰の宝剣を抜き放つ。刀身が神秘的な薄紫色であるヴェラリオン家の宝剣が、太陽の光を受け煌びやかに輝った。


キン!!っと鋼同士がぶつかり合う音が響き渡り、火花が散った。アシャはそのまま後方へと飛んだ。いや……吹っ飛ばされた。そのままゴロゴロゴロ…っと地面を転がり勢いを殺し、ざっと膝立ちになりながら宝剣を構える。


自分が今までいた所に一人の男が立っていた。金の長髪を後ろで縛り、全身に金色の鎧をまとっている。そして、その両手には見事な双剣が握られていた。片方の剣は順手持ち……そして、もう片方の剣は逆手持ちにし、体の前で交差させている。


その金色の瞳は、まっすぐに自分を射抜いている。心なしか笑っているようにも見えた。


(アシャ!!大丈夫ですか!!)


ファルナがふわっと自分の横に現れる。ファルナは自分以外には見えない……だが、姿を保つのにも魔力を使うらしく普段はずっと魔剣の姿のままだ。


アシャは心配してくれる自分の相棒へと心の中で返答をする。いつもは声に出しているが、ここではさすがに人の目がありすぎる。


(……ああ、大丈夫だ。ファルナをすぐに握ったおかげで、何とか間に合った)


ファルナはある大魔導師があらん限りの魔力を込めて造り上げた、意思をもった魔剣だ。この剣の主となるものはその柄を握りしめる事で、自分の魔力だけでなく、魔剣であるファルナの魔力も使う事ができるの。さらにファルナがアシャに憑依する事で剣の技術も跳ね上がるのだ


もともと、女性の中でもトップレベルの魔力と剣技をもつアシャである。そこにファルナの力が加われば、どんな相手も敵ではない………はずなのだが。


「………貴様。何者だ?なぜ、私を襲う?」


アシャはその謎の男に問うた。だが、それに男が答える暇も与えず、アシャの軍の兵士たちは瞬時に抜剣し、千人あまりが男をあっという間に取り囲んだ。皆、目の前の男を睨みつけ、罵倒している。


「貴様!!我らが‘神将’を襲うとはいい度胸だ!!」「アシャ将軍!!お下がりください!!」「………動くなよ?一歩でも動いたら、その体に風穴開けてやる」


その兵士たちは、剣を……槍を……弓を、自らの得意な武器を構えながら殺気を放つ。周りに集まっていた南部領主の兵の中にはその殺気にあてられ腰が抜けるものまで、出る始末だった。


だが、その男はまったく意に介しているように思えない。そして、その謎の男はこの状況の中不敵に笑っていた。


「……………ほう?我の攻撃を受けきるだけでなく、すぐに立ち上がるか。………うむ、面白い。それに………お前は何やら、おかしな魔力の流れ方をしておるな」


「!!!」


(……こいつ!!いったい何者だ?魔力の流れだと?そんなものが分かるなど聞いた事もない)


(アシャ!!気をつけて……この者が放つ闘気、ただ者ではありません)


(……ああ……それはさっきから感じている)


アシャは驚愕しながら、その男を見つめた。だが、男はカカカカカカ……っと空を見上げながら狂ったように笑っている。


「ふん……まぁ、良い。小娘、お前が何者であろうと我には関係ない。我はお前を、最低限の資格ある者として認めよう………カカカカ。我はお前に!!‘古の決闘’を申し込む!!」


その男は、未だ事態を把握できずに呆然としているアシャの様子にお構いなく喋り続けた。それを聞いたアシャは一瞬だけ怪訝な表情をみせたが、すぐに激昂した。


「認めてもいい?………決闘?…………いきなり襲ってきて、何を言っている!!ふざけるな!!なぜ、私がそんな事をしなくてはならない?貴様はかなり怪しい…………こんな馬鹿な事をする間者がいるとは思えないが、一応捕えさせてもらうぞ!!」


アシャは刀身が薄紫色である宝剣を振り上げた。振り下ろせば、それを合図に囲んでいる千の兵士が男を取り押さえるはずだ。だが、そんなアシャの様子をしばらくじっと見つめ、男はある言葉を呟いた。


「………そうか。お前は…………………逃げるのか」


ピタっとその言葉を聞いた瞬間、アシャの動きが止まった。


「………何?」


(今、……………こいつは何て言った?)


アシャは微かに声を震わせながら、聞き返した。だが、男はそんな様子に気づいてもいないように続ける。


「我としても、逃げる者に用はない。我は、弱い者を追いつめ、嬲り、優越感に浸るというような人間族の感情を持ち合わせておらぬのだ。そんな行為は、虚しいだけだ。………………強い者から逃げるのは生物としては、当然の反応だ。それを我が変える事はできぬ」


「………貴様」


アシャがどすの効いた声を小さく漏らす中、目の前の男は……キンっと双剣の一本を鞘におさめてしまった。


「他の人間とは違い、少しはやるようだが…先の一撃で何となく分かった。お前では我の相手は務まるまい。さぁ、去るがいい………弱き者よ」


「………ふ~~~~」


アシャは深く…深く息を吸い、ゆっくりと吐きだした。周りの兵士は気温が2、3℃一気に下がったような寒気を感じた。


(アシャ!!いけません!!この者はあなたを挑発しているのです!!)


アシャの心のざわめきを感じ取ったファルナが、必死に止めようとした。だが、今のアシャにその説得はまったくもって無意味だった。


男の口調は…挑発しているようなものではなかった。ただ、淡々と事実を喋っているだけのように感じた。だからこそ!!アシャの自尊心をこれでもかというほど抉った。


振り上げた宝剣をゆっくりと下ろし、ピタっと男を指し示した。アシャからメラメラっと目に見えない闘気がほとばしり始める。


「………逃げる……だと?ふざけるな!!私は、誇り高き騎士だ!!そして、騎士は絶対に逃げない!!貴様は私の誇りを今傷つけた………ただでは済まさん!!」


そう叫ぶアシャを男は意外そうに見つめる。そして、先程おさめたばかりの双剣の一本をジャリンっと引き抜いた。


「カカカカ……心地よい闘気だ。うむ……久方ぶりにこの我が猛っておるわ。決闘の流儀だ…先に名乗らせてもらおうか。我が名はアーサー……‘黄昏の支配者’だ。小娘…………改めて、お前に‘古の決闘’を申し込む!!」


アシャは男を囲む自分の兵士たちに、手を出さないように厳命した。そして、ひたっと目の前の男と相対した。


「……私は、ドラグーン王国・ガウエン元帥が副将・アシャ・ヴェラリオン。ヴェラリオン家は誇り高き騎士の系譜。それを穢されて黙っている訳にはいかない!!その決闘……受けて立つ!!」


二人の叫び声は、大気を震わせ、そして………激突した。

誤字・脱字。感想。ご意見ありましたら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王たちの宴・アンケート!!
王たちの宴アンケート
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ