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王たちの宴  作者: スギ花粉
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騒乱 竜王編

お久しぶりです。中々時間なくて書けませんね。まぁ…そんな中新しい小説を書いちゃうあたり何しているんだろうとか思いますが。あっちはホントに不定期で、こっちを疎かにはしないので許して下さい?では、楽しんでいただけたら幸いです。

今、ダガルム城のガウエン元帥の部屋で私とエドリックは直立している。


「さて……先ほどの喧嘩の事は後で叱るとして。……二人とも、ワシに何か言いたい事があるのではないかな?」


ガウエン元帥は椅子に深く座り、自らの長い白髭をなでながら私達に聞いてきた。


「……はい」「……恐れながら」


私とエドリックはチラっと互いに顔を見合わせて、恐る恐るというように言った。そして、先にガウエン元帥に疑問をぶつけたのはエドリックだった。


「ガウエン元帥…なぜ、あの状況で撤退を指示されたのですか?自分もヴェラリオンの軍も共に犠牲は軽微でした。もし、元帥の撤退の指示がなければ神聖帝国軍の壊滅も不可能ではなかったと思います」


(……やっぱりエドリックも不審に思っていたんだな)


自分たちがいるドラグーン王国の東部はしばしば神聖帝国の地方軍の進軍を受ける。それに対処するのは私達だ。だが、ガウエン元帥はなぜか、ほとんどこのダガルム城を動こうとなされない。だから、戦は副将である私とエドリックがすべてを任される事がほとんどだ。


正直な話、1か月に何度も何度も神聖帝国は侵攻していくる。しかし、ガウエン元帥の頃よりはかなり頻度が落ちてはいるらしい。ガウエン元帥の将軍時代がどれだけ過酷な時代だったかをその話が物語っていた。


「……ふむ。二人には申し訳ないと思っている。エドリックからの伝令もこまめに受け取っていた。確かに壊滅も可能であっただろうな。じゃが………こちらとしても緊急の事態が発生しての」


ガウエン元帥はスッと机の中から一枚の用紙を取り出した。そして、まずエドリックにこれを見なさいっというように手渡した。


エドリックはそれを受け取ると、じ~~っとその用紙を凝視していた。その視線が下にいくにしたがってみるみる眉間の皺がよく深くなっていく。


「…………なるほど」


エドリックはしばらく黙ったままだったが、重々しく一言だけ漏らした。そしてチラっと私の方を見た。


「………何だ、エドリック。早く私にも見せてくれ」


だが、エドリックは中々その用紙を渡そうとしなかった。そして………


「………いいか?ヴェラリオン。無駄だろうとは思うが………冷静にな?」


「??……何を言っている」


私はそういうと、エドリックからその用紙を引っ手繰った。そして、上から下までその内容を読んでいった。だが…………


「な、何だと!!」


私はその用紙を握りつぶしてしまった。エドリックはあきれ顔で、やっぱりな…というような顔をしていたが、今はそんな事に構っていられなかった。


バン!!っと机をたたき、私はガウエン元帥に詰め寄ってしまった。


「ガウエン元帥!!これはいったいどういう事ですか!!」


しかし、ガウエン元帥は私のそんな行動を予測していたかのようにまったく動じていなかった。


「……その通達の通りじゃ。セシル王女が、ハイガーデン家へ向かう途中何者かに襲われ、お亡くなりになれた。イライザ王妃はこれを受けて、ビリオン様の継承順位を繰り上げるというものじゃよ」


「そんな馬鹿な……ガウエン元帥!!これは王妃派の謀反です!!」


そう叫ぶアシャの後ろで、チっという舌打ちが聞こえた。


「………少し、黙れヴェラリオン」


「何だと?」


振り返ると半ば予想した通り、エドリックが不愉快だといわんばかりの表情をしている。アシャはジャキっと帯剣している剣の柄を握る。それを見たエドリックは皮肉そうに笑った。


「…ほう?そのヴェラリオン家の宝剣を抜くのか?」


「貴様が私を侮辱するのであればな」


アシャとエドリックはそのまましばらく睨みあった。ガウエン元帥は止めようとはなさらなかった。極力、二人による解決を待っているようでもある。


しばらくエドリックとアシャは黙ったままだったが………


「……チ。俺は貴様のそういう所が嫌いなんだ。ヴェラリオン……貴様何か確証があっていっているのか?」


「王妃がセシルを殺そうと思っている事など、少し考えれば誰にも分かるだろうが!!」


「セシル様……だろ?ヴェラリオン。一国の王族を呼び捨てにするな。確証はないんだな?なら、滅多な事を言うな。いいか?どんなに貴様が馬鹿でも俺は構わない。だが、貴様は不本意だがガウエン元帥の副将だ。貴様の発言は、ガウエン元帥の責任にもなりかねないんだぞ?」


ガウエン元帥の責任という言葉を聞き、さすがにアシャもぐっと口ごもってしまう。


「少し、貴様はその沸騰した頭を冷やしていろ。………それで、国内の諸侯の動きはどうなっているのですか?ガウエン元帥」


「うむ……先代王妃を輩出したマーテル家を中心に、南では反発が強い。すでに兵を集め始める諸侯も出始める始末なのじゃ」


「………三大名家の動きは?」


ピクっと自分が少しだけ反応してしまったのが分かった。


「イライザ王妃の実家であるヴァンディッシュ家は、すでに王都へと反乱鎮圧の名目で兵を続々と集結させている。ヴァンディッシュ家に連なる諸侯もそれに続くだろうの。そして、ヴァンディッシュ家の政敵であるウェンデル家は、裏で謀反の証拠を死に物狂いで集めているようじゃが、表立って兵を集めようとはしておらぬ。……………そして」


チラっとガウエン元帥は私の方を見た。その視線の意味は理解できる。


「……ヴェラリオン家も兵を集結させている。じゃが、それは主に南の諸侯に対してのけん制じゃ。王都へと兵を向ければ、ヴェラリオン家のすべての力を結集し、駆逐すると明言しておる。ヴェラリオン家はドラグーン王国の一番南に位置しておるから、南部諸侯の背後に陣取る形になっておる。これはかなりの脅威となろう」


「………下手をすれば……ドラグーン王国すべてを巻き込んだ騒乱へと発展しかねませんね。それで我らはどうするのですか?今の状況では我らを加えた陣営がかなり有利になると思いますが……」


アシャは二人の話を聞きながら少し、落ちつきを取り戻し始めていた。確かに今ドラグーン王国は危ない状態になっている。


「いや、我らは動かん。そもそも報告ではセシル様の亡骸は見つかっておらぬということなのじゃ。真実を見極める必要がある。だが、国内の騒乱のためにいくらか兵を割くことになるじゃろう」


「……ガウエン元帥。実は少し、お耳に入れたい事が」


「うむ。少しは、落ちついたようじゃの?アシャ。それで?」


「は!!実はさきの戦の後、国境の向こう側まで神聖帝国軍を追っていったのですが……その軍が全滅しておりました。」


「……………全滅じゃと?しかも、自らの領地である神聖帝国西部で?」


「はい」


ふむっとガウエン元帥は腕を組み考え込んでいる。


「………これはいったいどういう事じゃろうか。ワシも長年神聖帝国と闘っておるが、こんな事は初めてじゃ。少し……調べてみるとしようかの。よし、エドリックはいつものように国境付近を警備。アシャは機動力のある騎馬隊を率いていつでも出動準備を整えておくように。それと………アシャ。お主がセシル王女と親交があった事を聞き及んでおる。じゃが、今はお主は責任ある将軍の身じゃ。勝手な行動をとるでないぞ?」


「………はい」


私は一言………そう絞り出すのが精いっぱいだった。




============     ==================



バタンっとダガルム城にある自分の部屋へとはいって扉をしめた。


(……セシルが死んだ?)


そんな事が本当にありえるのだろうか。こんな所で終わってしまうのか……私達の理想はこんな簡単に崩れてしまうものなのか。


だが、一人で悩んでいても答えが出るものではない、誰でもいいから話し相手が欲しいという思いから、とある名を口にした。


「………………ファルナ」


(はい……アシャ)


返事はすぐだった。私の目の前に半透明の一人の女性が現れた。長い黒髪をし、漆黒のドレスをまとっている。そして、その両目には白い布が巻かれており、完全に視界が遮えぎられていた。


「………」


私はその女性をじっと見上げる。私がファルナと初めて出会った日の事は今でもはっきりと覚えている。


私が5歳の誕生日を迎えたちょうどあの日。ヴェラリオン家には様々な諸侯がおとずれ盛大な祝いの宴が開かれた。


そんな中、私はその場を抜け出したのだ。昔からあの貴族の社交場というものは苦手だった。そして父の部屋から宝物庫の鍵を盗み出した。


ヴェラリオン家には800年前、伝説の女騎士がいた。名をファル―ゼ・ヴェラリオン。800年前、ドラグーン王国は滅亡の危機に瀕していたと云われている。それを救ったのが、ファル―ゼ・ヴェラリオンだ。


私は小さい頃からファル―ゼ・ヴェラリオンに憧れていた。私もファル―ゼのような騎士になりたかったのだ。だが、父はそれを許さなかった。父は戦場というものは女が出るものでないと考えている。だから、騎士になりたいという私を父は叱った。そして、家にあるファル―ゼ・ヴェラリオンに関する物をすべて宝物庫へとしまってしまったのだ。


そして………忍び込んだ宝物庫には、ファル―ゼ・ヴェラリオンが使っていたという宝剣が飾られていた。それはいわくつきの宝剣だった。800年の間……ファル―ゼ以外抜けたものがいないというものだったのだ。


私は誘惑に勝てなかった。試しに私はその宝剣を手にとってみた………そして、ファルナと出会ったのだ。


(あぁぁぁ……あぁぁぁ!!800年…長かった。本当に……長かった)


驚かなかったといえば嘘になる。突然、ポロポロっと涙を流す半透明の女性が目の前に現れたのだから。私は宝剣を投げ捨て、そのまま自分の部屋へと走り去ってしまった。宝物庫の鍵を握りしめたまま。


その夜は恐くて眠れなかった。自分が何かとんでもない事をしてしまったような気がしたのだ。それから1週間は宝物庫に近づかなかった。


だが、少しずつ恐怖よりも好奇心が勝るようになってしまった。そして、誕生日から10日たった深夜。私はまた宝物庫へと忍びこみ、あの宝剣を握った。


すると、10日前と同じように半透明の黒の長髪の女性がふわっと現れた。


(よかった……もう来てくれないかもしれないと思っていましたから)


その女性は、ふふふふっと楽しそうに微笑んでいる。


「あ、あなたは……何なの?」


(私はこの魔剣そのものですよ。1200年前、ドラグーン王国の建国祝いにある大魔導師が私をお造りになったのです。この名剣に自分のあらん限りの魔力を込め、そして意思を持たせることにも成功したのですよ……淡泊なお人でしてね。名前すらつけては下さらなかった。ですが……今は、ファルナというきれいな名前があります。800年前……ファル―ゼが私につけてくれた名前がね)


それから私はファルナを宝物庫から持ち去った。ファルナの話ではこの魔剣は誰にでも抜けるものではないらしい。抜ける条件はファルナも分からないらしいが、ファル―ゼ・ヴェラリオンが使用してより800年抜けた者はいないらしい。


あれから14年。私は常にファルナと一緒だった。剣の師匠でもあり……何でも知っている人生の先輩でもあり……秘密を共有できる友でもあった。


「………ファルナ」


(ええ…分かっていますよ。アシャ。ずっと話は聞いていましたからね)


「セシルは本当に死んでしまったのだろうか?」


(……それは私には分かりませんよ。ですが……亡骸は見つかってないのでしょう?なら最後まで希望を)


コンコンっとその時、扉が急に叩かれた。アシャは、ピタっとファルナとの会話をやめ、扉を開けた。


「………エドリック」


開けた扉の前にいたのはエドリックだった。相変わらず何がそんなに不愉快なんだっというほど眉間に深い皺が刻まれている。


「……誰かいたのか?誰かと話しているようだったが?」


「いや……私一人だ。私には独り言をいう癖があってな。気にするな…アッ八ハッハ」


そう高笑いするアシャをエドリックは気味の悪いものでも見るかのように見てきた。かなりむかついた。


「それで?いったい何の用だ?エドリック」


私がそう少しむっとしたように聞くと…………


「……まぁ…いい。ヴェラリオン…先の戦で左翼からの矢を避ける判断が少し遅かった。あれで10名ほどの余計な犠牲が出た。次からは気をつけることだ」


「………」


「俺の用事はそれだけだ。苦労をかけたな」


っと本当にぶっきらぼうにそれだけ言うと、エドリックは部屋の前から立ち去って行った。


「……エドリック!!」


アシャが大声でエドリックを呼びとめると、エドリックは廊下の先で無言でこちらを振り向いた。


「…………感謝する」


そういったアシャの方をしばらく見つめ、エドリックは何も言わずに廊下の角を曲がっていった。


「あ、相変わらず愛想のない」


(ふふふふ……実直で真面目な青年ではないですか。少し無愛想なのもかわいいものですよ)


ファルナはアシャの少し上でカラカラっと面白そうに笑っている。


「………あれが、かわいい?……………………どこが?」


カラカラとずっと笑っているファルナに嘆息し、アシャは自分の部屋へと戻っていった。


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