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王たちの宴  作者: スギ花粉
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エピローグ 盗賊王編

「ひ~~ん……ぐす……ひ~~ん」


「メリル……そんなに泣かないでよ」


今、魔王城の客間には3人の人物がいる。一人目はこの城の主……第2代魔王……カイ・リョウザン。


もう一人は深紅の髪をし、真っ赤な槍を持ったまま壁に寄り掛かっている。伝説とまで言われている傭兵、赤き狼……レン。


そして最後の一人は、褐色の肌をし、カイと同じ漆黒の長髪を後ろで縛りポニーテールのようにし、頭にバンダナを巻いている…メリルである


チャングル山での鎮魂の祭が終わり、カイ達は無事アゴラスへと帰還していた。


その途中で、バリスタンとサンサも合流してきた。逃げた盗賊のほとんどを討ち取ったようだ


まぁ……そこでひと悶着があった。バリスタンとサンサが共に自分を処断してくれとカイに詰め寄ったのだ。まさか、バリスタンとサンサがあそこまで頑固だとは思わなかった。


カイとしては、二人を処断する気などさらさらない事を何度も…何度も言ったのだが、一向に首を縦に振ろうとしなかった。


カイとしても、自分がサンサに盗賊退治を命じたのであり、しかも誘拐の犯人は自分の隣にいるのだ。何とも言えなかった。


そう楽しそうに話しかけるカイをメリルはちらっと見て……はぁ~~っと呆れたようにため息を吐く。


「…いいよな~~カイは。事の重大さが分からね~んだからな」


「へぇ~~どう大変なのかな?」


カイはおもしろそうにメリルに尋ねてみる。それを聞いたメリルはやれやれっといいながら、説明し始めた。


「いいか?俺っち達は、今から魔王の居る所に案内されて、殺されるんだ!!」


「ふむふむ…それはとっても大変だね~~」


メリルはアゴラスに戻る途中もず~~っとカイが魔王を演じきっていると信じ切っていた。おもしろいので、いつ気付くかカイは面白がっているのだ。


にこにこっと相変わらず笑っているカイに、がばっとメリルが抱きついた。ぽにゅっとやわらかいものが顔に押し付けられた。


「ぐむ!!」


「カイ!!お前はいい子分だったぞ!!俺っちだって悲しいさ!!お前は特に魔王を名乗っちまったからな……きっとぐつぐつ煮だった釜でゆっくりと茹でられちまうんだ!!助けてやりてーよ!!でもよ~~~」


そこでカイを放し、ちらっとレンの方を見る。カイはげほごほっとむせている。


「なぁ?レン!!俺っち達を逃がしてくれよ~~」


そんな二人の様子をじ~~っと見つめていたレンは……


「………なぜ?」


心底理由が分からないという返事をした。それを聞いたメリルは………


「なぜって………俺っち達は友達じゃねーか!!」


「…………」


「ああ……俺っちまだ死にたくねーよ!!」


メリルはまた泣きながら遺書らしきものを書き始めた。メリルから解放されたカイはにこにこしながら、レンに近づいていった。


そんなカイに、レンは不思議そうにに尋ねる。


「………メリルにまだ話してないのか?」


「へへへへ……うん。ちょうどいいから、メリルを驚かしてみようと思ってね。ふっふっふ……メリルの驚いた顔が目に浮かぶよ」


そんな、わくわくしているカイの様子をしばらく、じ~~~っと見つめて………


「…………ずいぶん……仲がいいんだな?」


とだけレンは言った。


「うん?まぁ…メリルとは色々あったからね」


「…………そうか」


だが、カイはレンの素っ気ない返事のなかに何やら静かな怒りを感じ取った。少しびくつきながらレンに話しかけてみる。


「え?な、何かレンさ……あの……怒ってない?」


「…………そんな事はない」


プイッとあらぬ方向を見てしまうレンを見て、カイはかなり動揺した。


(え?…お、怒ってるよね?なぜだ……俺…何かした?)


カイがそんな事を考えていると、メリルが大声を上げた。


そして、今まで書いていた遺書らしきものをぐちゃぐちゃに丸めて壁に投げつけていた。


「ちくしょう!!俺っちとした事がーーー!!オガンに書いても意味ねーじゃん!!」




============ レン  ============





「おう!!おう!!魔王め!!あ……俺っちの名前は~~………違うな~、何かしっくりこないんだよな~~」


自分の隣ではメリルが、何やらぶつぶつっと独り言をつぶやいている。自分なりに納得のできる演説らしきものを考えているらしい。


はぁ~~~っとため息を吐くレン。


(まったく………めんどくさい。カイも悪戯が過ぎる、何で俺がこんな事をしなくちゃならないんだ)


今、二人は謁見の間の玉座の前にいる。赤い絨毯の両側には、リサとバリスタンを先頭にずらっと魔国の将軍達が並んでいる。


みなが厳粛にカイの登場を待つ謁見の間に、メリルの言葉発だけが聞こえてくる。右側の先頭にいるリサなどは先ほどからイライラしているからなのか、ぴくぴくっと眉が小刻みに動いている。


自分はカイから、メリルを何としてでも謁見の間に連れてきてほしいと頼まれた。


カイのシナリオでは、俺がメリルを連れて謁見の間に入り、そこで魔王であるカイが登場して、驚かせるというものらしい。


…………メリルはかなりの腕だ。俺が本気で闘い、決着がつかなかったのは、これで3人目だ。


自分の武人としての血が騒いだ、だからチャングル山から魔国に戻る途中、もう一度手闘って欲しいとメリルに頼んだ。


だが、メリルから返ってきたのは予想だにしない答えだった。


「何言ってんだよ、レン!!友達とは仲良くしなくちゃならねーんだ!!喧嘩はよくねーー!!」


「………」


いったい、いつの間に俺はメリルと友になったのだろうか?


カイにメリルの事について尋ねてみたが、苦笑しながらこう言われた。


「ハハハハハ…メリルは結構変わり者だからね。でも、憎めないんだよね~~」


「………」


カイとメリルはどういった関係なのだろうか?


バクーダに跨り魔国へと進むカイの後ろに、メリルが乗っかっていた。二人は楽しそうに話しており、ときおりメリルがカイに抱きついている。その度にカイが慌てていたが。


(………………あ、後でそれとなくカイに聞いてみよう。それにしても……………どいつも、こいつも!!)


ギルは結局、俺との決着をつけないまま逝ってしまった。あんな‘約束’をした俺が馬鹿だった。まさしく騙された気分だ。


カイにいたってはすでに忘れてる気配すらある。俺が言ってものらりくらりと、かわしてくるばかりだ。


そしてメリルも、もう本気で闘う気はないらしい。俺としては肩透かしを食らった気分だ。


レンが自分の深層へと思考を落としている時、魔王の登場を知らせるラッパが謁見の間に響いた。


両側の将軍達がばっと頭を下げ、それを見たメリルが慌てて頭を下げていた。


自分はじっと玉座を見つめていた。すると……ツカ……ツカ……ツカ……ツカ……っとゆっくりとカイが謁見の間に入り、ドカっと玉座に座った。


「………面を上げてよ……メリル?」


バッとメリルがその声を聞いて頭を上げた。その顔には驚いた表情が張り付いていた。


「カ、カイ!!そこはダメだ!!それは玉座っていってな?多分魔王が座る椅子なんだ!!」


メリルは慌ててぎゃーぎゃー叫んでいる。それをカイは可笑しそうに見て、こう言った。


「いいんだよ…メリル……俺が魔王なんだから」


「………はぁ?」


「ふっふっふっふ……俺は本当に魔国・第2代魔王・カイ・リョウザンなんだよ」


「な、何ーーーーーー!!」


メリルの絶叫が謁見の間に響き渡った。




=============  カイ  =================




(ふっふっふ……驚いてる驚いてる)


カイはにこにこしながら、メリルを見ていた。メリルはわたわたと慌てている。


(結構メリルに振り回されたり、驚かされてばかりだったからね。俺も驚かしてみたかったんだよね。いや~~癖になりそうだ)


玉座から立ち上がり、ゆっくりとメリルとレンの方へと近づいていくカイ。そんなカイの様子を見て、メリルが叫んだ。


「カ、カイ!!お前!!これがどういう事か分かってるのか!!」


「さぁ?どういう事だろうね~~?」


相も変わらずカイはメリルの様子を見て楽しんでいた。だが、メリルの発言を聞いてすぐに凍りつくこととなった。


「……俺っちは…俺っちは…………国を盗んじまったってことになるだろうが!!」


し~~~~んっと謁見の間が静まりかえった。


カイはその笑顔のまま固まっていた。しばらくして…………


「…………うん?」


っと首を傾けるカイ。思考が停止してしまったのだ。そんな自分の様子を見て、やれやれっというように両手を上げる。


「まったく~~カイは相変わらず馬鹿なんだな!!いいか?カイは魔王なんだろ?ってことはだ……この魔国はお前のもんってわけだ!!そして………お前は俺っちの子分なんだ。子分のものは、親分である俺っちのものだ。つまり……………この魔国は……俺っちのものになったんだ!!」


やっほう~~っとメリルは小躍りしながら、喜んでいる。カイはポカ~~ンっとそれを見つめ、


「……………ああ……なるほどね」


カイはメリルとの付き合いが少しあったために、ある程度納得したが………謁見の間にいる武官、というよりリサだと思うけど凄まじい殺気を放っている。鳥肌がたつかと思った。


カイはメリルのその笑顔を見て、苦笑まじりにこう言った。


「まったく……メリルには敵わないよ」


「おう!!カイが俺っちに敵うはずないだろ!!……そうだな~~、魔王の親分がただの女盗賊じゃかっこ悪いじゃねーか!!う~~~~~~~ん………よし!俺っちは決めたぜ!!カイが王様なら、俺っちだって王様だ!!


 俺っちは今日から………‘砂漠の盗賊王’………メリル・ストレイユだ!!キキキキ」


謁見の間にメリルの本当に嬉しそうな笑い声が響き渡った。


どうも…スギ花粉です。盗賊王編おわりました。一応最初からこの終わり方を想定してました。


4人目の王様はいかがだってですか?テーマは自由な王でしたが、こんな王様がいてもいいのではと思いまして。


さて、実は自分は今年公務員を受けるんですね。まぁ、今年は受からないような気が凄いするんですが……ですからかなり更新が遅くなります。休載となるかも。


一応、今年中には完結はします。お許しください。すみません。一応、予告をのせておきますので。

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