感謝
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけたら幸いです。ではどうぞ~~
風………砂漠の風。下から吹き上げてくるような乾いた風………身を切るように冷たかった。砂漠は昼と夜ではまったく違う顔を見せるのだ。
新月…………その星の光のみの暗闇を、野営地の篝火が明るく照らす……そう惨劇を…明るく照らす。
「がぁぁぁっぁぁぁ!!」「あぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」
メキメキメキ……とまず骨の軋む音が聞こえ、グシャ!!っと頭が潰れ、鮮血が飛び散る。
ドサドサっと砂漠に倒れる屍ふたつ。その真っ赤な血は砂漠に吸い込まれていく。
「はぁ……はぁ……ふ~~~~!!」
っとその影は思いっきり白い息を吐き出し、息を整えている。
それは異様な光景だった…………屍…………人間族・魔族を問わず死んだ盗賊共が積み重ねられ、所々に屍の山ができている。
そして……生首が槍に突き刺さり、所々に立て札の様に立っている。誰もが知っているような……有名な盗賊団の頭達ばかりだ。
オガンの周りを武器をもった何百という盗賊達が取り囲んでいるが、誰ひとり動けないでいる。
それはあまりに突然だった……野営地の所々で頭達が殺され始めたのだ。
パニックになりながらも、野営地中を探し回り………こいつを見つけた。
初めに罵声を浴びせながらこの男に斬りかかっていった何十人もの盗賊達のなれの果てが、この屍だ。
強いなんてものじゃない………まともに闘って殺せる気がしないのだ。
「…………おいおい…こりゃ、何の冗談だ?」
そんな時、ズシ…ズシ…ズシ…っと巨大なこん棒を引きずりながら、3メートルはあろうオ―ガ族が現れた。
「お、お頭!!無事だったんですね!!」
それを見た、一人のゴブリンが叫んだ。他の盗賊達もその巨人族にも劣らない巨躯に気付き、ヒソヒソっと近くの仲間と囁きあう。
「………おい…ありゃ」「ああ……カメロンだ」「オ―ガ族のカメロンだ」
その盗賊共の囁きを聞いた瞬間……ピクっとオガンが反応した。
「…………カメロン……カメロンだと!!」
ギロっとオ―ガ族の方を睨みつけるオガン。その目には先ほどまでとは比べ物にならない殺気が宿る。
カメロンはそれに気付き、不思議そうにオガンの方をみる
「何だ~?俺様を知ってるのか?」
「ああ!!よく知っているぞ!!………忌々しいあの商人が情報を漏らし……そしてこの盗賊共をけしかけた張本人…………盗賊・鷹の団の頭………オ―ガ族のカメロン!!」
「…ゲハハハハハ…よく調べたじゃねーか!!…それで?ハリスの奴はどうした?」
オガンは底冷えのするような笑みを浮かべる。
「……我らに仇なし…無事で済むわけがなかろう?」
「あ~~あ~~殺しちまった訳か?残念だ、まだまだ利用価値があったのによ~~」
「そんな心配は無用だ……貴様ももうじき同じように死ぬのだからな」
「ゲハハハハハ!!言うじゃねーか!!魔法もつかえねー劣等種族がよ~~……おいおい勝てるとでも思ってるのか?てめー一人に何ができる?……てめーら!!さっさと殺っちまえ!!」
だが、周りを囲む盗賊達は一歩も動かなかった。カメロンが頭をつとめる鷹の団の一員達でさえもだ。
「あん?」
「お、お頭…無理でさ…あ、あいつの強さは半端じゃねー、俺たちじゃ相手にガバ!!」
そのゴブリンは最後まで喋りきる事ができなかった…なぜなら……カメロンのこん棒によって首から上を吹っ飛ばされてしまったのだから。
その生首が盗賊達の間に落ち、それを見て皆がうわっと一歩下がる。
「…聞こえなかったのか?俺はよ~~お願いしてんじゃねーんだよ……命令してんだよ!!野郎ども!!相手はたった一人だ!!あいつをぶっ殺した奴にはこの俺様が直々に、金貨50枚くれてやる!!…………ぶっ殺せ!!」
「う………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
っと鷹の団の盗賊達がカメロンへの恐怖心のためにオガンに殺到した。それを見た他の盗賊団の者たちも
「ぶっ殺せ!!」「金貨50枚だ!!」「相手はたかが一人だ!!」
わぁぁぁぁぁぁ!!っと四方八方から、武器を構えた何百という盗賊共がオガンを殺すために殺到した。
それを冷静にじっと見つめ…………ゆっくりと目を瞑るオガン
(すべては…………すべては!!)
=========== オガン ===============
久しぶりにチャングル山へと帰ってきた。だからといって感慨深いわけではない……誰かが待ってくれている訳ではないのだ。
ここでは自分は厄介もの扱いだ……まぁ、いいさ。さっさと砂漠に遊びに行っちまおう。
オガンはいつものようにチャングル山を肩をきって歩いていた。
「………お前か?オガン・ストレイユというのは?」
「あん?…んだ?てめぇは?」
ギロっと自分を呼びとめたギガン族の男を見る。見た事ね~野郎だ……だがそんな事は関係ね~~。今俺は虫の居所が悪いんだ。
「ほっほっほ……ワシか?ワシはラグナ―じゃ。旅に出ていたのじゃが、今戻っての…」
紫色のローブを着ている……つーことは神官になるための修行から戻った野郎か。そろそろ帰ると誰かが噂をしていた事をオガンは思い出した。
だが、自分にとっては関係ない。掟なんて糞くらえだ。
「…………爺みてーな喋り方してんじゃねーぞ…こら!!」
「ほっほっほ……これは癖みたいなもんじゃよ…まったく威勢のいい馬鹿じゃ」
それを聞いた瞬間……ブンっと拳を突き出していた。
誰であろうと関係ねー!!俺を馬鹿にした奴はぶっ殺す!!
だが、ガシっと止められた。驚いた……俺の拳を片手で止めただと!!
バッと離れた。だが、そいつは動かない。
「ほっほっほ……中々やるではいか。ふむ……では少し相手をしてやるかの?」
そう言うとそのラグナ―という男は、羽織っていたローブを脱いだ。
そして、流れるように構えをとり、ちょいちょいっと挑発してきやがった。
「来なさい……少し揉んでやろうかの?」
言ってはならない事を、いいやがった。こいつは今……俺を見下しやがった!!
「…………なめんなよ、こらぁぁぁっぁぁぁ!!」
生まれついて怪力だった……ギガン族の中でも珍しいくらいの。
世の中には武術というものがある。何年も何年も修行を積む事で、力なき者でも、強者をねじ伏せる事ができるという至高の技。
だが、それを鼻で笑うような生き方をしてきた。講釈をたれるような輩をこの力でねじ伏せてきた。
しかし………自分は負けた……初めて本物にあった。まったく相手にもならなかった。
……………悔しかった。悔しくて涙が出た。
それから、俺は武術を学んだ。あの野郎をぶっ殺すためだけのために。
本人にも教えを乞うた。屈辱にも耐えた……すべてはそれだけのために。
刹那………………たったそれだけ動きを速くするために、何年もの修行が必要だった。
つらく……厳しく……確実にものになるという保証もなかった。何度も心が折れそうになった。
そして皮肉な事に、そんな自分を支えてくれたのは…………ラグナ―様だった。だから頑張れた。
そして…………長い年月がたったある日、ラグナ―様ともう一度本気の勝負をする機会がおとずれた。
闘った……自分のすべてを……ラグナ―様にぶつけた……目標に対して。
負けた…・……・…・…・…だが、確実に自分が強くなっていることを実感した。
――――――――――――――――そして
―――――――――――――――――――――――――そして
ラグナ―様が…確実に衰えていることも、また実感した。
当たり前の事だ…誰もが歳をとる。分かっていたはずだった。だが、分かっているつもりだったのだ。
凄まじい衝撃だった。よく分からない感情……どうしていいのかまったく分からなかった。
そんな自分の拳を握り、ラグナー様はいった。
「…オガン…よくここまでたどり着いた。この拳をみれば分かる。どれだけ辛く厳しい修行をしてきたのかもな。
お前はいづれワシを超えるだろう………ワシにははっきりと断言できるぞ。
誰もがいづれ死ぬ。それは自然の摂理じゃ……誰も抗う事はできぬ。
だがワシは……残したかった。このラグナ―・プリ―ストが確かにここに……この時代に……生きたという証を。
お前と初めて闘ったときに直感した……この者こそワシなりに極めた武を……継いでくれる…否!!さらに極めてくれるものである事ということを!!
――――――――――――――――――――――――――――オガン
―――――――――――――――――――――――――――ワシはお前に
―――――――――――――――――何かを伝えられたか?」
自然と……涙が溢れてきた。初めて……認められた。自分の標的に…目標に…そしていつの間にか父親のように思っていた男に!!
自分には両親がいなかった。二人はギガン族の未来のためと、砂漠を出る所に苦心していたのだ。
だが結局二人とも死んだ………ギガン族の運命を変える事はできなかったのだ。
だから、物ごころついた頃には一人だった。そんな自分だからこそメリルの辛さもよく分かる。
自分の自尊心はあっという間に吹っ飛んだ。今までの行動…辛さを暴力で発散していた自分が何よりも小さく思えた。
――――――――――――頭を下げる事が、感謝なのではない!!
――――――――――――心の奥底から、感じる!!
謝りたいと…感じる!!あなたに……自分の言動を…行動を…謝りたい!!
―――――――――――――――――――そうしたいと…させてくれと!!
――――――――――――――――――――自然と頭が下がるのだ
――――――――――――――――自分のこの力に、意味を見出してくれた
――――――――――壊すという事ではなく…かけがえのないものを守る力として
―――――――――――この力は、すべてこの時のためにあったと思いたい!!
ラグナ―様との……私の友たちとの……そして……あの娘との思い出が詰まったこの地を!!
―――――――――――――そのすべてを守るために…あったのだと!!
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オガンはカッ!!っと目を見開き……バサっとその血で赤黒くなったローブが宙を舞う。
そこに突進してきたゴブリンに対し、オガンは華麗に跳躍し、きれいな踵落としを喰らわせる。
ドゴ―ン!!っというその音とともに、その頭が砂漠にめり込んだ。
そして……ざざっと流水のような……構えをとる。
「――――――――――――――すべては……この時のために!!
―――――――――――――――ラグナ―・プリ―ストが愛弟子!!
オガン・ストレイユ!!いざ…………………参る!!
―――――――――――――――――――――はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その雄たけびと共に……………オガンの死闘が幕を開けた。
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