さらば
え~~スギ花粉です。毎日の更新は難しいと思います。感想とかあったら本当に励みになります。ではどうぞ~~
今一人の盗賊が立ったまま、壺ごと酒をごくごくっと飲んでいる。そして……
「うぃ~~~…やっぱり酒は最高だ~~」
「おいおい…いいかげんにしとけよ」
「そうだ……明日はついに総攻撃だ。宝石の奪い合いに遅れちまう」
今、砂漠の野営地で見張りの3人が酒を飲んでいる。所詮、盗賊だ……やはり軍とは違う。
盗賊達の長いギガン族との闘いも明日で遂に決着を見せるだろう。
予想以上の犠牲は出したが、はっきりした事が一つある。
あれだけ必死に守っているのだ……やはり莫大な財宝があるとみて間違いはないだろう。
「あ?はん!!まったく馬鹿な奴らだ…素直に明け渡せばいいのグ!!」
ボキ!!っと骨が折れるような音とともに…………ドサっと前のめりに倒れた。
「「は??」」
突然の事に呆気にとられる二人。そして倒れた仲間の背後には……………茶色のローブを着た一人のギガン族がいた。
ザシュ!!ザシュ!!っと倒れた男の正面に座っていた二人も後ろから刺される。
「がぁぁぁぁぁ!!」「ぎゃぁぁぁ!!」
あっという間にドサドサっと屍にきす盗賊達。砂の大地がみるみる赤く染まっていく。
「………よし。では手はず通りに。二人とも、雑兵には目もくれるな。俺達が狙うは頭とそれに準ずる者共だ」
「分かってるよ~。オガンちゃ~ん。指揮系統をズタズタにしてやるよ~~」
コクコクっとクライダスも頷いている。
オガンはじっと盗賊共の野営地を見渡す。さすがに4万人を超える野営地だ、かなり広い。月も出ていない闇夜に、無数の篝火がきらめいている。
そして、かすかではあるが盗賊共がドンチャン騒ぎをしている声がここまで聞こえてくる。
「…………今生の別れになるだろうな」
オガンは二人の方を見もせずに重々しく語る。だが、ケヴァンはにやにやっといつものように笑っている。
「まぁね~~…生きて帰る気なんてないさ。一人でも多く道づれにしてやるよ」
「……………我らは、みなギガンの神の申し子なり。すぐに会える………神の懐で」
オガンはクライダスの言葉を噛みしめ……
「そうだな…………二人とも、多くは語らぬ。…………さらば」
そして、3人は、別々の方向へと消えていった。
=========== 天幕 ====================
「お、お頭!!」
と天幕に血相を変えた一人の盗賊が、走り込んできた。
「何だ…騒々しい!!…明日は大仕事だ!!いいかげん寝ろ!!」
寝台で寝ていた無精ひげをはやしたた男は寝むそうな目で、ゆっくりと起き上がる。この男は人間族が主に集まってできたコーラン盗賊団の頭。人間族のコーランだ。
かなり飲んだらしく頭を押さえたまま怒鳴り散らす。いつもならその剣幕にびびるはずの手下も今はまったく怯まない。
「そ、それどころじゃねーんで、頭!!やべーんで!!他の盗賊団の頭が続々と殺されてるんでさ!!」
「な、何だと??」
「一応警戒ぎゃ!!」
と慌ただしく喋る手下の胸から……ズブリっと、血まみれの長剣が突き出された。そしてズボっと抜かれる。
手下はゆっくりと地面に伏し、そして目の前には長剣を傾かせ、黒いローブを着たギガン族が凍りつくような笑みを浮かべていた。
「こんにちは~~。盗賊さ~~ん。そして、さようなら~~」
と長剣を振り上げた。それを見て体面もなにもかなぐり捨てて、逃げようとする。だが……
「た、助け……ぎゃ!!」
ザシュっと背後から斬り殺してしまう。その男から血しぶきがあがり、天幕の中を真っ赤に染める。
ケヴァンは一応屍に近づき、生死を確認する。その顔には笑みが張り付いたままだ。
「うんうん……死んでるね。さて…これで14人目か~~さすがに辛くなってきたね~」
暗闇でよく見えないが、その黒いローブには赤黒い染みが所々に出来ている。かなりの手傷を負っているのだろうが、ケヴァンはなおも笑ったままだ。
そして、ゆっくりと天幕から出る。するとそこには……自分を半円状に囲む形で武器を構えた盗賊共がわんさか待っていた。
「ここに居たぞ!!」「て、てめー!!お頭をどうした!!」「生きて帰れると思うなよ!!こら!!」
その罵声を聞き、ゆっくりと周りを見渡すケヴァン。
そして懐から一本の煙草を取り出すと、天幕の前の篝火で火をつけ、ふ~~っとおいしそうに白い煙を吐く。
「あ~~うめ~~。やっぱり煙草は最高だよ…ミオちゃんとケーシーちゃんに嫌われたくなくて禁煙してたけどよ……うめ~~な~~」
そして煙草をくわえたまま上を見上げるケヴァン。
(………悪いな~~~……エミュア……俺はよ~~~……先逝くわ)
ケヴァンは、す~~っと息を大きく吸い込み………
「てめーら!!どうしてくれんだ、オラ!!ミオちゃんとケーシ―ちゃんの花嫁姿見れなくなっちまったじゃねーか!!ただで死ねると思うなよ、コラ!!」
ジャリンっと剣を構えるケヴァン。それを聞いた盗賊共は……
「な、何訳わかんね―事言ってんだ!!」「構うな!!頭の敵だ、殺せ!!」
わぁぁぁぁぁっと雄たけびを上げて、四方から盗賊共が襲いかかってきた。
「かかってこいやーー!!」
ケヴァンも雄たけびを上げて突っ込んでいった。
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ビエーーー!!エ―――ン!!っと二人の赤ん坊が泣き叫んでいる。そして、部屋の隅っこで一人の男がいじけている。
「情けない!!子供が泣いたぐらいで、落ち込んでんじゃないわよ!!顔が怖いあんたが悪いんでしょうが!!」
「グス…グス…だ、だってよ~~俺だってミオちゃんとケーシーちゃん抱っこしたいのに」
床にのの字を書いているケヴァン。やれやれっとため息を吐くエミュア。
「まったく……だ~か~ら~顔が怖いのよ!!もっと笑いなさい!!」
「こ、こうか??」
と両手を使って、笑顔をつくるケヴァン。自分でも馬鹿な事をしてるな~~と思う。だが、それを見た赤ん坊が……
「「きゃっきゃっきゃっきゃ!!」」っと笑顔を見せた。
「お!!わ、笑ってくれた!!やったよ、エミュア!!お、俺ずっと笑うよ!!」
と二人を抱っこしてくるくるっと部屋の中で回っている。
それを聞いたエミュアは、はいはいっと心底馬鹿らしく相槌をうっていた。
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「はぁ…はぁ…」
っと息を切らせて一人のゴブリン族が走しり、一際大きな天幕の前まで来る。
「おい!!これは、いったい何の騒ぎだ!!」
「はぁ…はぁ…ギガン族の男が…はぁ…暴れまわっていたらしい…いくつかの人間族の盗賊団の頭も殺されたらしぞ。だが、安心しろ5、60人斬り殺されたそうだが、死んだそうだ」
「そ、そうか。はん!!所詮人間族なんて、そんなもんだ。たった一人のギガン族ごときに情けない」
「まったくだ…ハハハハ…じゃ、俺はこの情報を他の仲間にも知らせてくる」
ばっと自分から走り去っていくゴブリン族の男を見つめる。
「はぁ~~…本当に馬鹿な事をしてくれバガ!!」
見張りのゴブリンは、背後から口を押さえられ首を掻っ切られた。
プシュ――っと鮮血をまきちらし、目を見開いたまま息絶える。
「………」
その薄紫のローブを着たクライダスは、右手にナイフを持っている。
そして、黙ったまま天幕に忍び込む。そこにはかなりでかい寝台が置いてあり、3メートルはあろうかという巨躯がいびきをかいて眠っていた。
「…………死ね」
クライダスがナイフを振り上げた瞬間………
「……何だ?てめーは?」
「!!!」
ぶわっと空気を切り裂く音と共に、クライダスの真横に巨大なこん棒がクリーンヒットした。
びりっと天幕が破れ、その勢いのまま7、8メートル吹っ飛ばされる。
「ごふ…はぁ…はぁ…」
クライダスは何とか立とうとしたが、がくっと倒れてしまう。
ズシ…ズシ…っとオ―ガ族の男がゆっくりと近づき、クライダスを見下ろす。
「てめー。危ねーじゃねーか。このカメロン様ともあろうものが、こんな所でおッ死ぬ所だ」
「…はぁ…はぁ…」
クライダスはギロっとカメロンを睨みつけている。
「…気にいらねーな。その目……死にぞこないのくせに、何つー目をしてやがる。イラつくぜ!!」
カメロンはその右腕にもったこん棒を天高く振り上げる
「……はぁ…はぁ…」
(……ケヴァン……オガン…すまない)
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神聖帝国よりの大砂漠には、様々な種族が集まる街があった。街といっても荒れくれ者ばかりが集まる、やさぐれた街だ。その酒場では毎日のように、喧嘩が絶えなかった。
ガチャン!!パリン!!ドゴ―ン!!
「ハハハハハハ…そ~~れ!!」
オガンに持ち上げられた一人の荒くれ者が、3階の窓から投げ落とされた。
「オガンちゃ~~ん。最高!!ハハハハ」
「………くくくくく」
俺とケヴァンも何人もの魔族・人間族関わらずのしていた。
喧嘩…酒…博打……何にでも手を出した。二人と一緒なら怖いものなんてなかった。
毎日が楽しかった……いつまでもこんな馬鹿みたいな日が続くのだと思っていた。
自分の両親が…………死んだ。俺は砂漠中を遊びまわっていたから、死に目にも会えなかった。
チャングル山に戻った時には、すでに火葬も終わった後だったのだ。
岩盤事故だったらしい。両親にとって俺は、ろくでもない息子だった。恥以外のなにものでもなかったはずだ。
…………………後悔した。初めて………後悔した。
その時、旅から帰ったというラグナ―様が言ってくれた。
「……今からでも遅くはないぞ…クライダス・クエイサー。皆………変われる。神の懐におる両親が誇りに思うような生き方をしてみよ」
俺は……決めた。変わって見せようと………誰もが…両親が誇りに思うような男になろうと……
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クライダスは振り上げられたこん棒を、ぼんやりと見つめていた。
(………俺なりに……頑張ってみた……ほめて……くれるかな……)
ドゴン!!っとカメロンのこん棒が振り下ろされ、クライダスの頭が潰れ、血が飛び散る。
「ゲハハハハハハハ!!俺様がこんな所で死ぬ訳にはいかねーのさ!!
おめ―らが悪いんだぜ?弱えーのが悪いのさ!!そう…この世は所詮…弱肉強食!!
全部奪ってやるぜ……この………オ―ガ族のカメロン様がな!!ゲハハハハハハハハハハ!!」
カメロンの笑い声が、砂漠の野営地に響き渡った。その声は、本当に楽しそうな笑い声だった。
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