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王たちの宴  作者: スギ花粉
122/200

悪童

え~~楽しんでいただけてるでしょうか?スギ花粉です。ではどうぞ~~

周りは闇に包まれている……今日は新月だ……月の光すらない


そんな中ザッザッザっとチャングル山を下りていく者がいる。


「…………」


その人物は茶色のローブを着こみ、黙ったまま進んでいく。かなり急な斜面だが、それをまったく気にならないかのごとく進んでいく。


そしてチャングル山の麓辺りにたどり着いた時………


「どこに行くのかな~~?オガンちゃ~ん」


それを聞きピタっと足を止める………ギガン族…族長オガン。そして声のする方を振り返る。


すると岩山に二人の人物が胡坐をかいていた。一人は黒いローブを着て、オガンを見つめてにやにやと笑っている。


もう一人は、薄い紫のローブを着こみ、賛同するようにコクコクっと首を動かしている。


それを目を細めて見つめ……


「………ケヴァン…クライダス…貴様らこんな所で何をしている!!」


と一喝した。だが、その二人はまったく怯まない。


「それを聞いているのは俺だよ?オガンちゃ~ん」


二人はザッと岩山から飛び降り、オガンの前に立ちふさがる。


そして黒いローブを着た、ケヴァンと呼ばれたギガン族の男が親しげにオガンに話しかける。


「クライダスから聞いたんだよ。オガンちゃ~~ん。ラグナ―様が何人かの神官見習い達に抜け道を掘らせてるってね~~」


それを聞き、キッとクライダスを睨みつけるオガン。


「クライダス!!…私以外には漏らすなと言っただろうが!!」


それを聞いたクライダスが、コクコクっと頷く。先ほどから一言も言葉を発していない。


イライラしてクライダスに掴みかかろうとしたオガンを、ケヴァンが止める。


「まぁ…まぁ…いいじゃない?俺たちは何も告げ口しようって訳じゃないよ?ただ…オガンちゃんが何でこんな所にいるのかを聞いてるだけさ~~」


それを聞き、ぐっと唸るオガン。


しばらく黙ってから………


「私には……私には族長として……みなを守る義務があるのだ。行かねばならぬ」


と言った。それを聞き、ケヴァンはやっぱりねというように頷いている。


「なるほどね~~……今なら盗賊共も油断してるだろうからね。そこにたった一人で奇襲をかけて時間稼ぎをしようという訳だ


または………本気で皆殺しにしようとまで考えてる?いやいや……族長が板についてきてるね~~オガンちゃ~~ん。


 ……………………………………………………


 なぁ……誰がこんな事を予想できただろうね?


 俺たち……3人。この……ギガン族の恥さらしとまで言われた……悪童3人組みがだよ?


 クライダスは、今や神官見習い……それも一番神官に近いとまで言われている。


 そして…この俺は、世界一きれいな嫁さんもらって子供までいる。


 しかも子煩悩な父親ってご近所では有名なんだぜ?


 そして………あの暴れん坊のオガンちゃんが、今や掟に厳しい族長だ。


 子供達に掟を教えているオガンちゃんを見ると、大笑いしたくなる」


コクコクっとクライダスが頷いている。少し笑っているのが、腹が立つ!!


「………それで?そんな昔話をするために、ここまで来たわけではあるまい?」


この二人を見た時から、聞かずとも何となく理由は分かっていた。だが、止めねばなるまい。


「くくくくく…………俺たちも一緒に行くよ。オガンちゃん」


コクコクっと頷く、クライダス。


この男もまったく変わらない。長い付き合いである自分でさえ、クライダスの声を最後に聞いたのはいつだったか思い出せない。


この二人を連れていくわけにはいかない。これは私一人でやると決めているのだ。


「……クライダス…お前なら知っているだろう。子供達を抜け道で逃がすにあたり、誰かが導かねばならぬ。


私には分かる。あのラグナ―様が逃げるはずがない。誰かが、ラグナ―様の代わりを努めねばならぬ。


お前は血の滲むような努力をして、神官になろうとしていたではないか。それをこんな所で無駄にしてはならぬ。


それにケヴァン、お前にはエミュアがいるではないか……そして子供達も……子供には父親が必要なのだ。家族の元にいてやれ」


だが、そんなオガンの言葉を聞いてもケヴァンはにやにやっと笑っている。


「……オガンちゃ~ん。俺たちだって馬鹿じゃない……このままじゃ俺たちは死ぬ。ここで命を賭けないでいつ賭けるのさ?」


「だが………」


「オガン!!!」


ケヴァンとオガンはびっくりして、クライダスを見る。


「…………何様だ…オガン!!族長になって自惚れたか!!


 俺たちは悪童といわれた!!そんな俺たちはいつも何をやるにも一緒だった。


 馬鹿な事も沢山した……たった3人で50人を超える盗賊団に喧嘩を売ったこともあった。


 だがな……俺たちはただ守られるような関係じゃなかったはずだ!!


 言えよ!!頼れよ!!俺たちの中で遠慮なんて反吐が出る!!


 舐めるなよ……オガン……お前を動けなくしてここに置いていく事も出来るんだぞ!!」


ふ~~~ふ~~~と荒い息を吐くクライダス。


オガンとケヴァンはポカ~~~~ンっとあまりの事に呆気にとられている。


そして……顔を見合わせて


「ハハハハハハ」「ヒヒっヒヒいっヒヒ」


と腹の底から大笑いする二人。クライダスはそれを不愉快そうに見つめている。


しばらくオガンとケヴァンは苦しそうに笑いあい……


「ヒヒヒっヒ……あ~~久しぶりにクライダスの声聞いたな~オガンちゃ~~ん」


「ああ……懐かしいな。昔に戻ったようだ」


(そうか……もう100年も前になるのか。この二人と共に碌でもない青春をおくってしまったものだ………あの頃は自分は本当に愚かだった)


自分の満たされぬ思いを周りにぶつけていただけだったのだ。


そしてそんな時……あの方と出会った。


(族長としてはラグナ―様のやった事を許すわけにはいかぬ。


 だが……悪童オガンとして、あの方には言葉では語りつくせぬほどの恩がある。


 教えに反するかもしれぬ。だが、それでも……あの方がそれを望むなら、私はそのために全力を尽くさねばならぬ)


オガンは二人の顔をみる。その目はギラギラっと光っている。


(自分もこの二人のような目をしているのだろうか……いや…できているだろうか)


ここから先は……私は…………いや……俺は昔に戻ろう。あの頃のような……悪童として。


ゴキバキっと拳を鳴らすオガン。


「すまなかった……クライダス…ケヴァン……頼む。だが、俺についてくるというのなら…命の保証はできんぞ」


「オガンちゃ~~ん…水臭いね~~。俺達にも最後くらいかっこつけさせておくれよ~~」


コクコクっと頷くクライダス。もう喋る気はないようだ。


「そうか…………では……行こうか」


「おう!!悪童3人組みが……最後の悪さをしにいきますか?」


コクコクっと頷くクライダス。


そして3人は、砂漠へ踏み出し………消えていった。




===========   =================



それから……かなりの時がたった頃。


カイは、チャングル山の砦の中を歩き回っていた。オガン族長を探しているのだが、見つからないのだ。


「あ!!魔王様」


その時ギガン族の見張りの者と出会った。


瞬時に自分が想像する……‘魔王’……としての人格に切り替える。


「うむ……ごくろうであるな。あ~~我はオガン族長を探しているのだが、知らぬか?」


「オガン族長ならずいぶん前に、砦の外に見回りに出かけました」


それを聞き、怪訝な表情を見せるカイ。


「……見回り?しかも………砦の外に?……!!!。い、いつだ!!オガン族長はいつ出て行ったんですか!!」


カイはその見張りの兵士に掴みかかる。そのあまりの剣幕に驚きながら……


「は、はい……詳しい時間は分かりませんが、かなり前ですね。そういえば、ずいぶん遅いですね…」


だが、最後まで聞かずに叫ぶ。


「こ、この事をラグナ―様に伝えて下さい!!」


それだけいうと、ばっと見張りの者を突き飛ばし、全速力で走った。


「魔王様!!」


後ろで何がなんだか分からずに叫ぶ兵士に構わず………カイはチャングル山を下っていった


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