覚えている 盗賊王編
え~~楽しんでいただけてるでしょうか?スギ花粉です。感想とか欲しいです。励みになりますので。ではどうぞ~
「………我らはみな………死ぬ」
「「・・・・」」
会議の間を静寂が支配した。ポカ~~ンっとラグナ―様を見つめていたメリルは…やっとその意味を理解し、
「あん??」
っとだけ言った。そして、ゆっくりと立ち上がり座っているラグナ―様を見下ろすメリル。
「………今……みんな死ぬっつったか?」
メリルがドスのきいた声でラグナ―様を問い詰める。
「……そうじゃ」
だが、ラグナ―様はまったく動じていない。
「………ラグナ―もか?」
「ああ………儂もだ」
左右に座っている族長達をゆっくりと見渡すメリル。
「………族長たちもか?」
「ああ………族長たちもだ」
「…………ガキんちょ共もか?」
「ああ………子供達もみんなだ」
「………」
それを聞いたメリルの体から、メラメラメラっと目に見える程の殺気が立ち上る。
「…………ふざけるな!!いったいどういう事だ!!事と次第によっちゃ、全員許さねーぞ!!」
メリルの声が部屋中に響き渡り、ふーふーっと息も荒くラグナ―様を睨みつける。
だが、ラグナ―様はメリルの殺気をまったく意に介さずに、説明する。
「……・…この大砂漠中の盗賊共が手を組んだのじゃよ。このチャングル山を明け渡さなければ……全員殺すと言ってきよった」
はぁ~~っとラグナ―様は小さなため息を吐く。
「奴らはこのチャングル山に大量の宝石があると勘違いしておるのだ……ワシらは長いこと、商人から食糧を、メリル…………お前が盗ってきてくれた宝石で賄っておった。
……その商人が盗賊共に情報を漏らしたのだ。……ギガン族は無尽蔵と思える程の金銀財宝を持っているとな」
それを聞いて驚いた表情をする。
「そんな……そ、そうだ!!闘えばいいんだ!!俺っちだって一緒に闘ってやるよ!!」
「……闘う?もちろん…我らは戦士の一族じゃ。戦わぬ事などありえぬ……じゃが、盗賊共はどう少なく見積もっても4万強……よくそれだけ集めたと思うがの。
それに対し、ワシらは四千じゃ……女・子供は闘えぬからの。勝ち目はないに等しい」
すっかり殺気をおさめ、メリルはオロオロとし始める。
「そんな………で、でも死ぬ事ねーじゃねーか!!みんなでここを出てけば…」
「……それは出来ぬ」
「な、何でだよ!!いいじゃねーか!!みんな助かるなら…それで…」
だが、そこで…
「ふざけるな!!これもすべて貴様のせいではないか!!」
左の列に座っていたカシム族長が立ち上がり、メリルを怒鳴りつける。
「お、俺っちの?」
メリルはあまりにも急に自分が出てきたので、何がなんだか分からないという顔をしている。
そんなメリルに、カシム族長はたたみかける。
「そうだ!!掟に反するお前が、いつまでもこのチャングル山にいるから!!我らは、滅びる事になったのだぞ!!」
それを聞いて、みるみる蒼白になっていくメリル。ふるふるっと震えている。
「お、俺っちのせいなのか?俺っちのせいで……みんなが…みんなが…」
「そうだ!!すべては貴様の…」
「黙らんか!!愚か者が!!」
鼓膜が破れるかと思う程の大声が聞こえてきた。
その声を上げたのは……オガン族長だった。
オガン族長はそのまま立ち上がると、ズンズンっとカシム族長に近づきその首を片手で絞め持ち上げる
「がは!!…がぁぁぁっぁ!!」
カシム族長の足は完全に宙に浮いている。
バタバタっと苦しそうに暴れていたが、オガン族長はそのまま思いっきり壁に叩きつけた。
ドゴ―ン!!と凄まじい音と共にカシム族長の体が、変な方向に折れ曲がっていた。
そのままズルズルっと壁から落ち、カシム族長は気絶してしまったようだ。
それを冷ややかな目で一瞥してから、オガン族長は振り返りメリルの目をじっと見る。
「オ、オガン……俺っちは…俺っちは…」
そんな不安な表情をしているメリルを宥めるように、語りかけた。
「………メリル…よく聞きなさい。15年程前……お前の母メリタ―ザは、砂嵐の中このチャングル山にたどり着いた……小さなお前を抱いてだ。
そしてメリタ―ザは死の病を患っていた。だから聖地に入る事が許された、さすがに子供を置き去りにする事はできずにお前も一時的に受け入れた。
だが、メリタ―ザは我らにこう頼んだのだ
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「私が長くない事は分かっています。しかし、自分が死んだらメリルは一人きりになってしまう。お願いします!!この子が一人前になるまで、ここで暮させて下さい!!」
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当然……私達は断った。それは掟に反して許されぬとな。近くに人間族が多くすむ街もあるから、そこで預かってもらうといいと説得した。
だが、メリタ―ザはそれではダメだといった。ここしかないのですとな。なぜかは知らん……しかし必死だった。
それでも……それでも我らは断った。それはお前の理由であり……我らには関係ないとな
それからだ……立つ事もままならぬ体でメリタ―ザはしばしば出かけて行った。そして……大量の宝石を盗ってきて……こう言ったのだ
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「あなた方が砂漠の盗賊達に、様々な物を奪われているという事は聞きました……私は…私は実は盗賊なのです。私がそのすべてを取り返して見せましょう………あなた方を襲った盗賊達からしか、奪いません。ですから……ですからお願いします。この子が一人前になるまでここに置いて下さい!!」
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………恥ずかしい話…我らも限界であった。チャングル山からはもう何も出ないのだ…すべて掘りつくしてしまったのだよ。
掟に反するかもしれぬ……だが、それでも仕方がないという事でこの族長の会議で決まったのだ。
お前が負い目を感じる必要はないのだ。我らはそれだけの物を受け取っている。
そして、メリタ―ザはお前に…普通の女の子になって欲しいと願っていた。
だから、私はその意思を尊重したかった。母のように盗賊になりたいといったお前を、私は叱った事もあったな。
お前は不服そうにしていたが、しぶしぶ承諾してくれたな。
それでいいと思っていた。私が嫌われてもよい……それでお前が…幸せになるのならとな。
…………だが!!」
ギュッとその拳を握りしめ、ギリっと歯ぎしりの音が聞こえた。
「………その後も盗賊共は増え続け…このチャングル山に避難してくる者が増えてきた。メリタ―ザが用意してくれた財宝も少しずつ底をつき始めた。
その頃だ………私があの事を聞いたのは!!誰かがお前にこう言ったそうだな!!
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「……お前の母は我らのために、色々と働いてくれた……なのにお前は何もしないのか?」
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とな!!私は腸が煮え繰りかえると思った……そしてお前を問い詰めた。
誰だ?誰がお前にそんな事をいったのだ!!と。
だが、お前は頑なに拒んだ。なぜ…庇う?そんな事を言いそうな輩など…大方の予想はついている。
お前が一言いえば……私がその首をねじ切ってくれる!!さぁ!!言えメリル!!」
だが、メリルはきつく唇をかみしめ、俯いている。
オガン族長は、ゆっくりと首を横にふる
「………私は覚えているぞ……お前がその小さな手を傷だらけにしながら、必死に盗賊共から小粒ほどの宝石を盗ってきた時の事を。
私はお前の手に包帯を巻きながら、何度も諭した。そんな事をお前はする必要はないとな。そのたびにお前は笑いながら言った
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「キキキキ……いいんだ!!俺っちはギガン族のみんなのために働きたいんだ!!」
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……お前はもう…充分我らのためによくしてくれた。これは我らギガン族の長きにわたるものへの審判なのだ。だから、もう……いいのだ」
ハッと顔を上げてオガン族長を見るメリル。オガン族長の覚悟を感じ取ってしまったのかもしれない。
「ダ、ダメだ!!死ぬなんて…絶対ダメだ!!死ぬってことは、もう二度と会えないんだ!!凄く悲しいんだ!!だから………ダメだ!!命より大切なもんなんてねーんだ!!」
そう叫ぶメリルに対して……
「それは違うぞメリル……命よりも大切な物は確かにある」
「そんなものは、ねぇ!!」
「ある!!それぞれ……千差万別…違いはあれど確かにある。ここはな…メリル。我らの先祖が眠る聖地なのだ。我らも死ねば、魂魄となりこのチャングル山に宿るのだ。
ここを守ることは我らの責務なのだよ……逃げる事は我らの神の教えに反する!!
我ら……たとえ滅びる事あろうとも、最後の最後まで……」
そこで気絶しているカシム族長以外の族長達もみな声を合わせ始める。
「「「この砂漠の地に誇り高く立ちづづけて見せよう!!
我らは決して逃げぬ!!強大なる敵からも!!この砂漠からも!!
例えそれが肉体の死につながろうとも!!この誇り高き魂だけは、死なせはしない!!
我らがギガン族の神よ……今あなたの申し子が、参ります!!
その大いなる懐に受け入れて下さいますよう!!」」」
それぞれの族長達が、自らの武器を……剣を……槍を……ナイフを……手にとる。
オガン族長はゴキゴキバキっと拳を鳴かせている。
「………ただではやられぬ。薄汚い盗賊共が!!我らが聖地を奪うだと?許さぬ…決して許さぬ!!我らも舐められたものだ…この身滅ぶとも盗賊共に思い知らせてくれる!!…………だがこれは我らの問題だ。メリル…カイ…今なら何とか無事に……」
だが、そのオガン族長の言葉を高笑いが遮った。
「くくくくくく……ハハハハハハハッハッハ!!」
カイが目に手を当て、心底馬鹿らしいというような笑い声を上げる。
あまりの事にオガン族長も……他の族長も……メリルでさえも呆気にとられた。
「くくくくく!!何と愚かな種族だ…………自ら滅びるというのか…」
「何だと!!我らを侮辱するか!!」
キンっと鞘から剣を抜きかける族長もいた。だが、それをオガン族長が手で制す。
カイはそんな事お構いなしに、ゆっくりと立ち上がる。
「…………我が救ってやろう」
「ふざけるな!!お前に何ができるというのだ!!」
それを聞き、カイはニヒルに笑う。
「救えるとも。なぜなら、我こそ……魔国第2代魔王…カイ・リョウザンなのだからな!!!」
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