無の境地
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけたら幸いです。ではどうぞ~~
今、魔王城の廊下をスタスタっと歩いている一人の人物がいる
深紅の髪をし、黒いローブをまとい、顔半分をマスクで隠し、真っ赤な槍を持っている。
伝説とまで言われている赤き傭兵であり、スタットック王国の87代北の王…ソロス・スタットックの実の姉でもある。本名をシ―レン・スタットック…………レンである。
無表情で歩いているように見えるだろう……だが、親しい者ならすぐに気付く。かなり不機嫌であるということに
「………」
(何が伝説の鳥人族の戦士だ!!………あの耄碌ジジィ!!)
レンは噂を元にドルーン山脈を歩きまわり、目的の戦士を見つける事ができた。だが、はっきり言ってはずれだった。
その老人に勝負を挑むとこう言われたのだ。
「ほう?ワシと闘いたいと申すか……ふん!!若造が……まぁ、相手になってやらん事もないが…それなりの誠意は見せてもらおうか」
まずは薪割りからじゃ……っと斧を手渡された。
「…………いや…別に俺は弟子にしてくれとかではなく」
とレンはただ勝負がしたいという事を伝えると、鼻で笑われた。
「はん!!甘えるな…若造が!!簡単に勝負してもらえるなどとは思わん事だ。これは授業料じゃよ……お前さんは自分の未熟さを思い知る事になるだろうからな」
「……………ほう?」
それを聞いて…ますます闘いたくなってしまい……しばらくの間我慢して見る事にした。
だが…………それはまさに屈辱の日々だった。
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「おい……若造!!ここが汚れておるぞ……ちゃんと掃除したのか?これでは、いい嫁さんになれんぞ?」
つ~~~っとこれ見よがしに指に埃をためて、ふっと息を吹く。
「……………」
「おい……若造!!夕食を作ってくれた所すまんが、魚が食べたくなった。渓谷に沢山おるから、さっさと行って来い。まったく、顔をみて何が食べたいかぐらい判断せんか!!まったく気がきかん女じゃ」
とせっかく作ってやった飯を一口も食べずに飼っている犬に分け与えていた。
「……………」
「どれどれ……若造。疲れたのではないか?さぁ……風呂にでも入ってこい。ワシが背中でも流してやろう……何だぞの目は……はん!!お前さんの貧相な体などに興味がある訳なかろうが!!」
「…………」
レンは我慢していた。本当は今すぐにでもねじり殺してやりたいと思ったが、本気を出してもらわねば困る。不意打ちでは、鍛錬にならないではないか。
心の奥そこに、何やらどす黒いものが溜まっていくのをレンは実感していた。
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そんな生活が何と2週間も続き、やっと勝負してくれるという事になった。
「ふむ……若造にしてはなかなか骨がある奴じゃ……よかろう!!相手になってやる」
というと、部屋の奥から何かを取り出してきて、ドン!!っと自分の前に置く。
「ほれ……お前さんもさっさと準備せー」
「???……何だこれは」
それを聞いた鳥人族の戦士は………
「チェス盤にきまっておるだろうが……ほれ自分の分は自分で置くのじゃ。どれ一捻りにしてくれるぞ」
といいやがった。それを聞き、一瞬………思考が停止するレン。
真っ白だ……これほどまでに何も考えられないのは初めてだ……無の境地というやつか。
――――――――――――――――そして
「……………………………あん?」
―――――――――――――――――そこに赤鬼が召喚された。
その後の事は正直よく覚えていない。
その鳥人族の老人はいつの間にか、いなくなっていた。きっと長い長い……旅にでも出たのだろう。
ただ自分の槍と服に赤い液体がついていたが、どういう事なのかまったく分からなかった。
後、本当~~~に申し訳ないと思ったが、家に火をつけさせてもらった。長旅で戻らない間に、ならずものの根城にでもなったら大変ではないか。
さらに、飼われていた犬が置いてきぼりになっていたので逃がしておいた。鎖に繋がれたままでは、食べ物もとりにいけない。
ただ、その犬は俺が近づくとひどく怯えていたのが気になった。あれだけ世話してやったのに…酷い犬だ。
そして例の場所を訪ねてからアゴラスへと戻ってきていたのだ。
憂さ晴らしにカイと鍛錬でもしようかと思ったのだが、南へと休暇に行っているらしい。
仕方がないので寝る事にしようと自分の寝室へと向かった。
(まったく…イライラする)
そしてドアノブに手を伸ばそうとして、ピタッと動きを止めるレン。何か違和感を感じたのだ。
瞬時に戦士の顔になり、バタンっと扉を蹴破り、バッと槍を構える。
部屋の中は真っ暗だったが、誰もいないはずの自分の部屋に何者かがいた。
その人物はタンスをあさっていたようだが、バッとこちらを見てくる。
暗くてよくみえないが、長髪を後ろで縛り頭に布を巻いている女がいるのだ。
「………何者だ貴様」
とレンが問いかけた瞬間。その人物は、振り向いて可笑しそうに笑う。
「………キキキキ……ふ~~ん……ここはお前の部屋か?まったく……何もないぞ!!俺っちはな……魔王城にある手鏡を探していてな……持ってないか?」
「……………」
沈黙を貫くレン。相手が何を言ってるのかまったく理解できない。
(盗人……なのか?しかし、この落ちつきっぷりはどうだ……ただ単に部屋を間違えただけかなのか?だがこんな奴初めて見たぞ)
だから一応確認してみる事にした。
「…………お前は……盗人か?」
「違う!!」と大声で遮る謎の女。
「………じゃあ……何だ?」
「俺っちは、砂漠の女盗賊………メリルだ!!」
いったいどう違うというのか……うっすらと額に青筋が浮かぶ。
「………………お前はここで何をしている?」
「おう!!俺っちは、手鏡を探してた!!……だけどな…何もね―からお前に持ってないか聞いてるんじゃねーか!!まったく…お前は馬鹿なんだな!!」
やれやれっというように両手を上げる女。
もうはっきりと青筋を浮かべ始めるレン。
なぜ自分の物を盗ろうとしている者に馬鹿と言われなくてはならないのか?
そして、これは完全に八つ当たりであるが、小馬鹿にされた事であの爺の事がまた蘇ってきた
レンはすでに爆発寸前だった。そして……
「………つまり、お前は盗賊で…俺の部屋に忍び込んで…その俺に対して馬鹿だという訳だな?」
「キキキキ…頭の回転が速えーじゃねーか!!…あ!!…………………俺っちそろそろ待ち合わせの時間だから、退散するぜ!!じゃ……そういう事で」
とあまりに自然な動作で、自分の隣を素通りして廊下へと出ていこうとする…黒髪の女。
「…………………どういう事だーーーー!!!」
滅多にない事ではあるが………レンの腹の底からの怒声が響き渡った。
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