ここにはない 盗賊王編
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?ではどうぞ~~
ヒュン!!…………タタタタタタ……………ヒュン!!……タタタタタ
アゴラス………魔国の首都であり、そこには多くの魔族達が暮らしている。
夜でも出店が立ち並び、そこは活気に満ちあふれている。
初代魔王……ギルバート・ジェーミソン……が残した功績は数あれど、彼がそのカリスマ性をいかんなく発揮し、心血を注ぎ、造り上げたものが二つある。
一つ目は、神聖帝国から魔国を守るために建設した…‘壁’…。長きにわたる神聖帝国との闘いでも、一度も魔国の地を踏ませなかった。まさに難攻不落の要害。
二つ目は……あの偏屈な種族であるドワーフ達の協力を取り付け、巨人族…鳥人族…様々な魔族の力を結集して造り上げた………アゴラスである。
中央にそびえたつ魔王城は、細部に至るまで細かい装飾がなされており、職人のこだわりが感じられる。
城の周りに一段目の城壁があり、そこから城下町が円をかくように広がっている造りである。そして、城下町をぐるりと取り囲む形でさらに城壁が取り囲んでいる。
この首都を攻め落とすとなると、敵は相当の犠牲を覚悟せねばならないだろう。まさに鉄壁の守りだ。
そして……アゴラスの街がきらびやかに光を放つなか……民家の屋根の上を疾駆する二つの影がある。
見事に国境の厳重な警備を突破し、アゴラスへの潜入を果たしたメリルとカイである。
ヒュン……タタタタタ…………ヒュン……タタタタタ………スタ…スタ。
パッと屋根から飛び降り、物影に瞬時に隠れ……こそこそと城壁の様子を確認している
「キキキキ……あれが魔王城か……さすがに立派だな!!」
「………」
だが、カイはそれに答えない。アゴラスに入ってから少し口数が少なくなっているのだ。
「お~~し……ここまでは順調だ!!…後はこの城壁をこの縄でよじ登ればいいんだ……よし!!………行くぞ!!」
と鉤爪のついた縄を取り出し、進もうとするメリル。だが、カイがメリルの腕をガシっと掴み止める。
「………メリル…ダメだ」
とっとっとっ踏鞴を踏んでしまうメリル。そして少し怒ったように振り向く。
「何だよカイ~~……今さら行かないってんじゃね~だろうな~」
「……違うよ……ただ、今はダメだ」
「???…ダメ?」
カイが何を言おうとしているのか分からず、首を傾げるメリル。
「うん……よく分からないけど、今の時間帯は見廻りのものがいるような気がするんだ…何の根拠もない感なんだけど…」
と自分自身でもよく分からない事を必死に説明するカイ。だが、今ここを登れば確実に見つかるような気がするのだ。
そんなカイをメリルはじっと黙って見つめていたかと思うと……
「……カイ……それでいいんだよ。盗賊ってのは感を大事にしなくちゃいけねーんだからな。よ~~し……俺っちはカイの感を信じるぜ!もう少し待とう!!」
と言ってくれた。
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しばらくの間……二人はそこでじっとしていた。そして1時間あまりがたった頃……
「………どうだ?カイ……そろそろ大丈夫か?」
「う~~ん……多分」
「よし!!行くぞ!!」
キン……キン…と鉤爪のついた縄で城壁をするするっと登り、見事に城の中庭に降り立つ。
そして二人は近くに生えている木にすぐさまよじ登り、作戦会議を始める
「……それで…これからどうするの?」
実は潜入するにあたり、詳しい計画はまったく考えていなかった。
カイはメリルに心配になり確認したのだが………
「そういうもんは、その場その場で臨機応変に決めるんだ!!」
という事だった。……カイがかなり不安になったのはいうまでもない。
メリルは、そうだな~~~と腕を組みながら考えてから、懐から何かを取り出した。
それは子供達が書いた欲しい物リストだ。カイも見せてもらったが、魔王のマント・貴婦人の手鏡・玉座……などなど、絶対に手に入れられないものから、何でそんなものを?というものまで様々だ。
するとそのリストらしきものを、びりびりっと破くメリル。そして…ありえない事を言い出した
「じゃあ…俺っちはこっちな!!そうだな~~大体集めたらここ集合な?」
「…………うん?」
(こっち?……集合?………どういう事かな?あはははは……まるで……まるで……別行動するように聞こえるぞ!!)
カイは今自分が考えたありえない想像のために、ダラダラと冷や汗をかいている。そんなカイを余所に今にも木から飛び降りようとしているメリル
「メ、メリル…う、嘘…だよね?」
震えるような声でメリルに話しかけるカイに対して………
「ハァ~~カイは馬鹿だな…二人いるのに一緒に行動するなんて効率悪いだろ?あ!!後な?ここではリスト以外の物を盗むのは許さないからな!!俺っちが調べたかぎり、ここにはねーんだ!!」
と訳の分からない事を言い出すメリル。
「ちょっと……待っ」
とカイが止めようとするのも聞かずに、メリルは気配を消し、華麗に魔王城に潜入していった。
「え…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~」
================ メリル ===============
「キキキキ……さすが魔王城だな~~。凄い造りだ!!」
その長い廊下を、柱に隠れながら、ススススっと音もなく進んでいく。
そして、鍵がかかっている扉をチョチョイっと開けてしまう。
そして、いつものように入っていくが……お目当ての物がなかったようだ。何も持たずにすぐ出てくる。
「う~~ん……貴婦人の手鏡?こんなもん…どこにあんだ??」
その後も、様々な部屋を鍵を開けては侵入する事を繰り返すメリル。
そして…………………
「………何もね~~~部屋だな~~」
次に入った部屋は、無駄な家具というものがまったくなかった。ベットとタンスしかない。
ゴゾゴソっと漁る。下着などを見るかぎり、どうも女の部屋のようだ。
だが、女らしさなど微塵も感じさせない。そこからは戦場のような殺伐とした雰囲気しか感じられないのだ。
その時……………ピクっとメリルの第6感が警鐘を鳴らした……逃げろと!!
バン!!っと急に入口の扉が開く。バッ振り向くメリル………そこには・…
「…………貴様…何者だ」
深紅の髪をし……それに負けないくらいに真っ赤な槍を構えた奴が……入口に立ちふさがっていた。
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