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王たちの宴  作者: スギ花粉
112/200

慎み 盗賊王編

え~~楽しんでいただけてるでしょうか?スギ花粉です。今度アンケート作ろうと思っています。こんな項目入れて欲しいなど、要望ありましたらお寄せください。ではどうぞ~~

バンっと扉を開けて酒場に入っていくメリルとカイ。


「おう!!俺っちが来たぜい!!」 


とメリルはズンズン進んでいき、カウンターのような所に座る。カイもちょこんと隣に座った。


酒場にはすでに何人もの客がおり、いくつかのグループに分かれて飲んでいる。陽気なグループもあれば、何やら陰気な気配が漂ってきそうなグループもある。


キュッキュっとコップを拭いていた人狼族の店主は、その手を止め、目を見開き、信じられないというようにカイを見つめる。


「な、何でしょうか?」


いきなり……じっと見つめられ、かなり落ちつかないカイである。


「……いや……メリルの仲間か?」


「いいや!!カイは俺っちの子分だ!!」


店主の問いを遮る形でメリルが喋る。店主はメリルのその嬉しそうな顔を見て


「………そうか。」とだけいった。なぜか、店主も少し満足そうにしていた




=========   ================




「お、おいしい」


とカイは感嘆をもらした。


「キキキキ…そうだろ?俺っちはこの街に来たら必ずここに来るんだ!!」


メリルはまるで自分が作ったかのように誇らしげにしている。今目の前にあるのは、麺をスープに浸した料理だ。これがなかなかピリッと辛く、食欲がそそられる。


ズルズルっと二人揃って麺をすすっていると……


「ほれ」


っと店主が頼んでもいないのに、新しい料理を出してくれた。


「え?……あ、あの~~これ頼んでないですよ?」っと確認するカイ。


「……これは俺からの気持ちだ。あのメリルがやっと誰かと組む気になったんだからな。どうだ?メリル…仲間ってもんはいいもんだろ?」


「………」


メリルはそれには答えない。というより、どんぶりを持ちあげてゴクゴクっとスープを飲み干す事に集中し、まったく聞いていないのだ。


「メ、メリル?」


とカイが気遣う素振りを見せるが、それを手を振って制す店主。


「あ~~構わん構わん…こいつは、いつもこうだからな。…それよりもカイったか?メリルと一緒に仕事をするなんて、お前さん度胸があるな」


「え?あの…それってどういう…」


とカイが店主に聞こうとした瞬間……


「何だこら!!」「やんのか!!あん?」「俺たちは今虫の居所が悪いんだよ!!」


と店の端で陰険に飲んでいたグループが、入ってきた客と揉める声が店中に聞こえてきた。


「な、何かピリピリしてますね。何かあったんですか?」


絶対に絡まれたくないので、小さな声で尋ねるカイ


「気にするな。あいつらは結構有名な盗賊団の一員だったんだがな……近頃、急に魔国の取り締まりが厳しくなっちまって仲間が何人か捕まってイライラしてるんだよ」


「へぇ~~……何かあったんですか?」


すると……その店主は顔を近づけてきて、囁くような声で教えてくれる。


「………これは噂だがな………魔王が行方不明になったらしく、それを血眼で捜してるって話だ」


「行方不明??」


「ああ……元いた異世界に帰っただの…死んだだの…いろんな噂が流れているが、魔王がいなくなったのは確からしい」


「へぇ~~魔王がいなくなった……か」


(よく分からないけど…俺にとっては好都合だ。アゴラスにいないに越した事ないしね)


カイはただの世間話として聞いていたが、メリルはダン!!っと急に立ち上がる。


「おい!!みんな!!聞いてくれ!!」


そして、近くにあったテーブルに立ち叫ぶ。すると酒場中の客たちが注目する……カイはメリルが何をしようとしているのか、まったく分からなかった。


だが、次の瞬間驚くべき発言をする。


「今………魔国が必死になって包囲網を敷いている!!すまん!!それは俺っちのせいなんだ!!」


「何だと!!」「どういう事だ!!こら!!」


と何人かから怒声があげられる。自分の仕事がやりにくくなっているのだから、当然だろう。イライラしているのが、ここからでも気配で伝わってくる。


「メ、メリル……やめようよ」


カイは必死に止めようとしたが、そんなカイを振り払い言葉を続ける。


「本当にすまないと思う。急にこんなに取り締まりが厳しくなるなんて、何か訳があるにきまってる。実はこの前、リザードマンの城に盗みに入ったんだ……そしてこの包囲網……時期的にぴったりだ!!つまり…………」


と一旦そこで区切り、店中をぐるりと見渡してこう言った。


「……………魔国はやっと俺っちのすごさに気付いたって訳だ!!」


「「「「……」」」」


シ~~~~~~~~~~~ン・・・・・・・と一瞬にして酒場が静まりかえる


――――――そして


イ~~~~~ヒヒヒイヒヒッヒヒヒ。ハ―ハハハハハハっハハと酒場は大爆笑に包まれる


「「・・・・・」」


メリルに掴みかかろうとしていた盗賊は毒気を抜かれている


「くくくくく…おう兄ちゃん。運がいいな。あれが噂の女盗賊メリルよ」


「何!!あのメリルだって!!」


とその盗賊が驚いたようにメリルを見る。


「そうさ……盗賊の腕は天下一品。さらに、得物の半月刀も相当の達人だ………近くで見た奴に聞いても動きが早すぎて目で捉えられなかったって話だしな。メリルには喧嘩を売らない方がいい……盗賊の間じゃ有名だ……人間の域を超えてやがるのさ…おそらく1対1で、メリルに勝てる奴なんか大陸中を探してもいやしね~~よ。だが……残念。おつむが足りなかったって訳さ!!」


ゲラゲラっと大笑いしている。


だが、メリルは周りの声が聞こえていないようだ。さらに、演説を続けている


「俺っちも有名になったもんだ……まぁ……仕方がないさ。これも宿命ってもんさ!!俺っちの凄さは隠しようがないのさ!!」


ピ~~ピ~~と指笛が響く


「頑張れよ!」「応援してるぞ!!」「楽しませてくれるぜ!!」


酒場にいた者たちはみな、口ぐちにメリルをはやし立てる。


「ありがとう!!本当にありがとう!!俺っち…頑張るよ!!」


「……」


(…薄々気づいてはいたんだけど……メリルってもしや)


などと考えてるカイを余所に、メリルはさらに上機嫌になり店主に注文をし始める


「へい!!酒出せ!!酒!!俺っちは今最高に気分がいい!!カイも飲むだろ?」


「う~~ん…お酒か~~。俺…お酒を飲んでたのかな~?」


それを聞いたメリルがやれやれっと両手を上げる


「馬鹿だな…カイは。盗賊が飲まない訳ないだろ?」


「……お前だって普段は飲まないじゃないか」


とキュッキュッっとグラスを磨きながら冷静なツッコミを入れる店主


「それで……今回はどこに行くんだ?」


ゴトっと二人分の酒の入ったグラスが手渡される。カイはちょっと飲んでみたが、苦くて特においしいとも思えない。よくみんなこんなものをあんな美味しそうに飲んでいるものだ。


「今度は魔王城へと忍びこむのさ」


それを聞いた店主が、急に真剣な表情になる。


「……悪い事は言わない。やめとけ」


「おいおい……俺っちが捕まるとでも思ってるのか?」


「……今……アゴラスにはヤバイ連中がいるらしい」


「やばい連中??」


「ああ・・・詳しくは知らんが、アゴラスを影から守ってる部隊がいるらしいんだ。何人か…アゴラスに潜入した盗賊がいたらしいが、全員音もなく消されるらしい」


「そ、そんな危ない連中が!!や、やめよう……メリル!!死んじゃうよ!!」


「キキキキ…安心しろカイ。俺っちがいれば大丈夫だ。それよりも……全然飲んでねーじゃねーか!!」


とグイっと酒を飲まされるカイ


「ググググ………メ、メリル…やめてよ」


「ほれほれ~~~~」


とカイとメリルはドンドン酒に溺れていった。



============   ===========




「魔王が何だ!!」


「そうだぞ…カイ!!」


「うぃ~~」


二人はべロンべロンに酔っている。あれから二人で閉店まで飲み続け、騒ぎ、店主にいいかげん帰れといわれて宿屋へとふらふらしながら向かっているのだ。


「あははははは…何か暑いな~~」


というとカイは上着を脱ぎ始め、上半身裸になる。そして脱いだ上着をぐるぐる回している。


「キキキキ…おお!!涼しそうだ!!俺っちも…」


とメリルが服に手をかけたが、それを止めるカイ。


「スト~~~ップ!!メリルはダメだ…女の子なんだから、慎みを持たないと」


「慎みだ~~?キキキキ…そうだな!!カイが言うならそうなんだろうな」


「そうさ!!」


と二人は肩を組みながらフラフラっと何とか宿へと戻っていった。




===========   朝   =============



「う、う~~~ん?」


朝になり、カイはベットから起き上がる。だが、かなり気分が悪い。今にも吐きそうだ。


(何だろう…すごく気持ち悪い…胃の中がぐるぐるするような)


ズキズキと痛む頭を片手でおさえて、もう片方の手をベットの上に置く。


…………モニュ……………と何やら柔らかい感触が手に伝わってきた。


(???……何だ?枕……でもないし……ベットの上には何もないはずだけど…)


………モニュ……モニュ………と手を動かす


(かなり柔らかいな……何だ?これ?)


不審に思い……チラっと横を見ると………そこには……


「む~~~」


そこには………自分の隣に寝ている……メリルがいた。


「……………」


バッとベットから飛びだすカイ。そのまま片手を床につき目にも止まらぬ速さで、壁まで飛ぶ。


「な?……え?……嘘?」


かなりの混乱状態に陥るカイ。そして、なぜか自分が上半身裸である事に気付く


(な、何で…俺上半身裸で……メ、メリルと一緒に寝てるんだ?………………ま、まさか!!)


さーっと血の気が引いていくカイ。慌てて昨日の記憶を探るが……酒場からの記憶がまったくない!!


(いや…待て落ちつくんだ俺!!……周りを見てもメリルの服がない……つまりメリルは服を着たまま俺のベットで寝てしまったという可能性もあるではないか!!)


そしてメリルをよく見てみるが、毛布にくるまっているので……その……服を着ているのか…・…そうなのか……判断できない。


(……か、確認してみるか…い、いや…もし…そうだったら……)


ダラダラと冷や汗をかきながら、必死に悩むカイ。


そして……………………カイはメリルが起きるまで、3時間。そして起きたメリルからそれとなく聞き出すのに2時間。


まったく生きた心地がしなかった。

誤字・脱字ありましたら。

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