疑問 盗賊王編
え~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?ではどうぞ~
「ゴハ!!メ、メリル!!見てくれ!!吐血したぞ!!やばいな~~死んじゃうな~~だから帰ろう!!」
カイはその後もゴホゴホっと咳をして、自分の体調が悪いことを猛アピールする。だが、メリルはカイの方を見向きもしない
「キキキキ……諦めろカイ。俺っちは盗賊だぞ?人の嘘くらいすぐに見抜けるんだ。それにお前は嘘が下手くそだ」
今、砂漠をラクダのような魔物にのって進む二つの影がある。
一人は、褐色の肌に、珍しい黒の長髪を縛りポニーテールのようにしている。そしてバンダナで頭を包んでいる……メリルである。
そして同じような黒髪とバンダナをした一人の男が後ろに跨っている。盗賊カイである。
その両手は血のような赤い液体でびしょびしょになっている。
ギガン族の子供達に頼み込んで用意してもらったチャチンの実というかいう実を、すりつぶしてできた液体だ。
何とかメリルにやめさせるために……起死回生の一手として準備したのに、まったく役にたたなかった。
「キキキキ…楽しみだな!!俺っちもアゴラスは初めてだ……腕がなるぜい!!」
「………絶対死んじゃうよ……命は大事だよ」
メリルはチャングル山を出てからずっと上機嫌だ。久しぶりの仕事という事もあるが、大きな要因はやはりカイだった。
今までは、ずっと一人で仕事をこなしてきていたメリルである。初めての二人旅に、自分でも知らず知らずのうちにウキウキしているのだ。
そんなメリルの様子とはうって変わって、カイはドーン!!っと見るからに落ち込んでいる。さらにはさめざめと泣きだす始末。
その様子を見たメリルは……
「任せとけ!!子分を死なせるような真似はしねーよ……何があろうが俺っちが守ってやる!!」
「・・・・」
(い、いや……どうせなら諦めて欲しいんだけど……)
カイはチャングム山を出てからずっとメリルを説得しているが、一向に聞いてもらえない。
はぁ~~~とため息を吐き、カチャカチャっと錠をいじくっている。結局チャングル山にいる間は一度も成功しなかった。
俺って本当に才能ないな~~~っと思っていると………
…………カチ…………っという音とともに錠前が開いた。
「え?あれ?お!!…メリル!!見てくれ!!成功したよ!!」
とカイはやった…やったと大喜びしながら、メリルに見せようとする
だが………………
「キキキキ……だ~か~ら~…俺っちは盗賊なんだぞ?お前の嘘なんかすぐ分かるんだって」
「え…えぇぇぇぇぇぇぇぇーー」
カイはプランプランっと錠前を持ちながら、メリルの後頭部を見つめるしかなかった
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ジリジリと照りつくような太陽の中……メリルとカイは順調に砂漠を横断し、魔国との国境付近にまで達していた。
そんな中、メリルが神妙そうにカイにある事を尋ねてきた。
「なぁ…カイ。一つ聞いていいか?」
「何?」
カイはごくごくっと水を飲んでいる。
遠くの方ではあるが街が見えてきたので、ひとまず水の心配はなくなった。だから残っていた水を思う存分飲んでいたのだ。
「何で男は、俺っちの胸ばっかり見るんだ?」
ブ―――――っと飲みかけていた水をすべて吐き出し、ごほごほっとむせるカイ。
「……え?……な、何だって?」
あまりに予想の斜め上をいく問いに、少し声が上ずってしまっている。だが、メリルは真剣そのものだ。
「いやな……俺っちも盗賊だろ?だから目立たないようにしてるはずなんだが……街に行くと必ず何人かはジロジロと見てきやがるんだ!!」
と思い出してイライラしてきたのか、不機嫌になっていくメリル。
「・・・・・」
(ま、まぁ……何というかメリルはスタイルいいし…美人だから仕方ないんじゃないかな)
チラっとメリルの豊満な胸をみて、すぐに恥ずかしくなり目線をはずす。
「なぁ…カイ。男は何で胸ばっかり見るんだ?」
とメリルが振り向いて、真っすぐに見つめられる。ぐっと答えに困るカイ。
「え?え~~と……そう…だね…あ~~~…………そうだ!!ごめんメリル。俺記憶ないから分かんないや!!」
と見事な逃げ口上を思いつくカイ。だが………
「そうか……記憶がないんじゃしょうがね~な~………じゃ!!記憶戻ったら教えてくれよな!!」
「・・・・」
(ま、まぁ……メリルの事だからすぐに忘れるさ)
カイはこの時軽く考えていたが、この一件は後にある騒動に発展するのだが……それはまた別の話。
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ガヤガヤっと通りには人が溢れている。砂漠にある街だからもっと閑散としているかと思ったが、かなり活気に満ちている。
通りには出店のようなものがたちならび、市のようになっているのだ。
しかも……その街には人間族だけでなく魔族もいるようだ。……全員が全員何やら目つきの悪い者ばかりだったが。
やはり…砂漠にいるのは何らかの理由でそれぞれの国にはいられらない者たちばかりなのだ。
そんな状況では、種族の対立などかまっていられないのだろう……何だか皮肉だ。
そして……カイはこの街に入ってからずっと頭をかかえている。その訳は……
「うーーー」
メリルがずっとこんな調子で唸っているのだ。
まだ街の入り口付近にも関わらず、すでに4人の魔族と2人の人間とひと悶着があった。まぁ……全部視線を投げかけた人物にメリルが突っかっているのだ。その度にカイが止めている間に、逃げてもらうという事を繰り返しているのだ。
さすがに疲れた……どうすればいいんだろうかっとカイが考えていた時。チラっと売店のある物が目に入った
「あ!!ちょっと待っててね」
とカイが何やら人ごみの中に入っていく。
「???」
メリルは、カイの行動の意味が分からず頭にクエスチョンマークを浮かべている。しばらく…その場で待っていると、何かを手に持ってカイが現れる
「はい……これ!!」
とメリルに白いローブを手渡す。
「何だ?これ?」
とカイから渡されたローブを広げ、ジロジロ見ている。
「いや……メリルずっと街に入ってから大変そうでしょ?だからこれ着れば、見られる事も少なくなくなるんじゃないかな~~って」
しばらく…黙ってカイの言った事の意味を考えるメリル……そして……
「…………つまりだ…これは俺っちのために買ってきたって訳だな?」
と確認するメリル。
「まぁ…そうなるね。でも、メリルからもらったお金だから、俺がっていうよ……」
とカイが喋っている最中だったが……
「カイ~~~~!!お前は最高の子分だ~~!!」
メリルは嬉しそうにバッとカイに抱きつく。突然の事でカイはかなり驚いた。
「メ、メリル!!ちょ、は、離れて!!」
(あ、当たってる!!当たってる!!)
「うん?あ…苦しかったか?悪い悪い」
とすぐに離れてしまうメリル。
(あ~~~…離れてくれてよかったような……残念なような……)
それに対してカイは何ともいえない表情を見せる
だがそんなカイの表情には気付かず、メリルは白いローブを着るとくるくるっと嬉しそうに踊っている
「なぁカイ!!似合ってるか?」と聞いてくるメリル
「うん……凄く似合ってるよ」
とカイは正直な感想を述べる。お世辞にではなく、本当に似合っているのだ。黒のポニーテルと白が見事なコントラストをなしている。
それを聞き、さらに嬉しそうにキキキキっと笑っているメリル。
「カイ!!俺っちはこれ大事にするからな!!」
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「奥様………当宿では夕食もやっておりますが、どうしますか?」
「そうだな。今日はめんどくさいし宿で……うん?……おい、今お前俺っちの事何て呼んだ?」
とメリルが宿の店主に確認する。
「いえ……奥様と」
「…………俺っちが奥様?じゃあ……じゃあ……カイは何に見えるんだ?」
宿の主人はメリルが少し機嫌がよくなったのを見逃さなかった。先ほどまで一緒にいた方がカイというのだろう……久しぶりのお客だ。出来る事なら食事代も置いていってほしい。
「……旦那様に見えますが」
「キキキキ……俺っちが奥様!!良くわかんね―けど!!何か楽しくなってきたぜ!!」
メリルは小躍りしそうなぐらいに機嫌が良くなっている
カイがトイレから戻ってみると、フンフンっと鼻歌を歌っているメリルがいた。何やら先ほどよりもさらに嬉しそうにしている。
(…何かいい事でもあったのだろうか?)
「……どうしたの?」
「おい!!カイ!!俺っちは機嫌がいい!!だから………だから外に食べに行くぞ!!」
カイはその時何とも言えない表情をしている宿の主人を見た。
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