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王たちの宴  作者: スギ花粉
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よろしくね 盗賊王編

え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?ではどうぞ~~

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・喰っちまうぞーー」


とカイが両手を上げて、襲いかかる真似をする。しかし……


「カイ兄!!ちゃんとやってよ!!」「そうだよ!!魔王はもっと威厳があるんだよ!!」


ブ~~ブ~~とギガン族の子供たちの間から不満が続出する。


カイはギガン族の子供達に魔王ごっこの魔王役をさせられていた。魔王が、か弱いギガン族の女の子をさらい、ギガン族の戦士が倒すという物語らしい。子供達が自分たちで作った物語だ。


まぁ……もともとこのためにメリルに連れて来られたので、当然といえば当然であったが。子供達の反応はいまいちだった。


(…嫌、無理だから……俺に魔王なんてできる訳ないよ)


はぁ~~とため息を吐くカイ。


「キキキキ………あ~~~ダメダメ。カイは演技下手くそだな。後でちゃんと練習しとけよな……役に立つかもしんないぞ」


それを見て、メリルが可笑しそうに笑っている


(……絶対無意味だ)


今、カイとメリルとギガン族の子供達はチャングル山の麓でワイワイと戯れている。


ギガン族の大人たちは、昼間はチャングル山を掘ることで忙しい。彼らはその強靭な爪で道具も使わずに穴を掘る事ができる。


このチャングル山はその昔、多くの宝石が採掘される鉱山だったのだ。


その宝石を売る事でギガン族たちは裕福に暮らしていた。だが、だんだんと宝石が採掘されなくなり、多くのギガン族が山を出て砂漠に集落をつくり暮らすようになった。


なぜか、今は砂漠で暮らしていた者たちもチャングル山へと集まっているらしいが。


だから、子供たちの相手をしてくれる大人などいるはずもなく、必然的に暇なメリルやカイと遊んでいるのだ。


初めは自分の事を遠くから見ているだけだったが、メリルが自分に接している姿をみてすぐに懐いてきてくれた。


そしてかなり不本意だが、彼らの中のヒエラルキーでは…………


欲しい物を盗ってきてくれるメリル…>…ギガン族の大人たち…>…自分たち…>…そしてメリルの子分である俺


という構成になっているらしい。だからカイは髪を引っ張られたり、お馬さんごっこをさせられたりと子供たちの玩具と化していた。


(う~~ん……俺も、もう少し大人としての威厳が欲しいな)と真剣に考えていたりした。


そんなカイにはお構いなく子供達は魔王の話しで盛り上がり始めた。


「なぁ?魔王とオガン族長どっちが強いかな?」


「やっぱり魔王っていうくらいだから、めっちゃ凄いんだよ!!オガン族長でも勝てないよ」


「そんな事ない!!オガン族長に勝てる奴なんていないさ!!歴代の族長でも最強っていわれてるんだぜ!!」


「すごいよな~!!異世界人ってどんな姿してんだろう?」


「私はリサ将軍に憧れるわ!!すっごいきれいで、戦士としても一流なのよ!!」


ワイワイっと子供達はそれぞれ言いたい事を言いあっている。子供達に一時的に解放されたカイは、う~~んっと体を伸ばしながら、メリルに話しかける。


「…ねぇ、俺ばっかりじゃなくてさ…メリルも遊んであげてよ…」


「…………」


だが、メリルは不敵な笑みを浮かべながら、ぶつぶつと何かを呟いている


「……そうか……なるほど……うんうん………………よし!!決めた!!」


と砂漠から突き出している岩から、ピョンっと飛び降りクルクルクルっと見事に着地する。


それを見た子供達から歓声が上がる。そしてメリルが胸を張って宣言する。


「キキキキキ……俺っちは決めたぜ!!よく聞け…ガキンチョ共!!次の盗みは……………アゴラスだ!!」


子供達のボルテージが最高潮に達した。


「本当に!!」「お、俺…魔王がしているマントが欲しい!!」「私はリサ将軍の櫛!!」

「玉座!!」「えっとね…えっとね…あ~~決められない!!」


ワイワイっとお祭り騒ぎだ。そんな中、顔を真っ青にしたカイがメリルに詰め寄る。


「えーーー!!や、やめといた方がいいよ!!魔王に喰われちゃうぞ!!」


子供達の話を聞く限り、魔王という男は…異世界を滅ぼしてこの世界に降り立っただの…化け物を召喚して気にいらない奴を殺すだの……あまつさえ人間を丸呑みするというのだ。


まさに暴君で……外道で……血も涙もない卑劣漢というではないか


そんな化け物がいる所に盗みに行くなど、まさに自殺行為だ。いかにメリルが凄腕の盗賊とはいえ、命はないだろう。


だが、そんな心配をよそに…


「キキキキ………俺っちが捕まるか!!」


とメリルが笑っている。


「…………」


メリルは一度言い始めたら決してやめない。説得しても無駄だろう


俺に出来る事はもう…これしかない。そう…応援するのだ。メリルには世話になった。出来る事なら生きて帰ってきて欲しい。


「じゃあ……気をつけてね!!……ちゃんと帰ってきてよ!!」


それを聞いたメリルがキョトンっとした表情をして、カイを見つめる。


「???………何いってるんだ?カイ………お前も行くんだぞ?」


「………え?」


思考が停止した。ありえない言葉を聞いたような気がしたのだ。


ポンポンポンポンポン………略………ポン………何度も何度も自分の頭を叩く。何やら幻聴が聞こえてしまった。


やはり自分は疲れているのだろうか……子供達の相手というのは凄まじい体力を使うからな


うんうんっと一人で納得するカイ。


「じゃあ……気をつけてね!!……ちゃんと帰ってきてよ!!」


とカイは先ほどと一言一句たがわない言葉をメリルに投げかける。


だが、同じようにキョトンとした表情で見つめてくるメリル。


「???……だから……お前も一緒に行くんだぞ?」


(まただ……どうも今日の俺はおかしい。あり得ない言葉が聞こえるのだ。う~~ん……うまく聞き取れないや。アハハハハハ……こ、これは今すぐ休んだほうがいいかもしれないな)


ダラダラっと冷や汗を流しながら、今にも倒れそうにフラフラしだすカイ。


しばらくして、カイがある‘勘違い’をしている事に気付くメリル。そして呆れたように、やれやれと両手を上げる。


「ハァ~~。カイは馬鹿だな……何のために子分にしたと思ってるんだ?仕事をするときは一緒にきまってるだろ?じゃあ……明日出発するから準備よろしくな~~」


といってあっという間に自分の部屋へと戻っていくメリル


しばらく…呆然とそこに子供達と佇んでいたが………子供達に


「「「カイ兄!!よろしくね!!」」」


と言われた


「えぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」


カイの絶叫がチャングム山中に響き渡った。

誤字・脱字ありましたら。感想・ご意見待ってます。励みになるので。

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