違和感
え~~楽しんでいただけてるでしょうか?スギ花粉です。ではどうぞ~~
「ねぇ、サンサ…後どれくらいで着く?」
とカイは、パタパタと手で仰ぎながら親衛隊の隊長に尋ねる。
「はい…も、もう少し行った所です」
今、カイは1千人の親衛隊とともに魔国の南へと来ていた。目的地はリザードマン族の族長がいる小城である。
結局カイは一人でしばらく休暇をとることになった。そして護衛として親衛隊を引き連れているのだ
ギルが選び鍛えた精鋭達だ、この1千なら地方軍一万にも匹敵するだろう。
「そう……ねぇ…何か暑くない?」
ごくごくっと革袋に入った水を飲む。
「は、はい…ここは魔国の南方ですので、アゴラスからですと暑く感じるのだと思います」
親衛隊を率いているのは、ミノタウロス族の女戦士のサンサである。何を隠そうバリスタンの孫だ。だが、一度たりとも自分がバリスタンの孫だと言った事はないらしい。
彼女はギルの頃から親衛隊の隊長を務めており、カイとは将軍時代からほんの少し面識があった。その頃はカイに対して物おじせずに接していた。だから、普通に世間話でもできるかと思っていた…だが
「そうか…いや~~だるいね」
と馬に乗りながら、パタパタと手で風を送り続けるカイ。
それを聞いた瞬間
「だ、誰か!!仰ぐものを!!」
とサンサが大声で命令し始める。それを必死に止めるカイ。
「いやいやいや!!大丈夫だから!!サンサ、そんなに緊張しなくていいからね?」
魔王城を出てからずっとこんな感じだ。
(昔、一緒に戦った頃はこんな感じじゃなかったはずなのにな~~)
「ねぇ……サンサ。将軍の頃のように接してはくれないか?ほら…何だっけ……この人間風情がみたいな感じで」
別にサンサに限った事ではない。実績もあげずに将軍となった自分には多くの魔族が敵意をむき出しにしていたのだ。ギルの決めた事だからしぶしぶ納得していたともいえる。
それを叱責と勘違いしたのかさーーっと顔色が悪くなるサンサ。
「も、申し訳ありません…自分が未熟だったばかりに」
「あ~~気にしてないからさ……そんなかしこまらないでよ」
とサンサをなだめるカイ。魔王になってから気軽に話せる相手が少なくなってしまった。王とは孤独なものなのかもしれない、自分をただのカイとして見てくれないというのはやはり悲しい。
そのまましばらくパカパカと進んでいくと、だんだん潮の香りが漂ってきた。
リザードマンの小城は海に面した断崖絶壁の先に建っている。
そしてその城下町には、リザードマン達が勢ぞろいして歓迎の準備を整えているのが見えてきた。
リザードマンは体をオレンジの鱗で覆われたトカゲのような種族である。彼らは忠誠心の塊のような種族だ。そして掟に特に厳しい種族でもある。
「来たぞ!!」「よし、練習通りやるぞ!!」「おお!!」
とリザードマン達がカイ達一向に気付き、わらわらと動き始める。
城門をくぐり、街に入ると多くのリザードマン達が集まっていた。他の種族もいるようだが、やはり圧倒的にリザードマンが占めている。
「「「魔国万歳!!」」」 「「「魔王陛下万歳!!」」」
っと左右に一列に並び、必死に声援を送っている。そう…少し異常なほどの熱気に包まれている
その理由を何となく理解しているカイは、苦笑するしかない。
(いや……ここまでやらなくても。リザードマンの族長は、相当怖がってるみたいだね……それにしても………暑い)
城下町を進んでいき城の前まで行くと、族長らしい豪勢な格好をして老リザードマンが待っていた。
「陛下、初めましてリザードマン族の族長ジョアンナでございます。わたくし達リザードマン族は貴方様の訪問を心より嬉しく思っております。ささ・・宴の準備も整っております。どうぞ楽しんでいってくださいませ」
とジョアンナは、カイに話しかけてくる。
「ありがとう…はぁ…そうだね…俺も少し…はぁ…何だか…疲れた…」
とそこで横に控えていたサンサが、カイの異変に気付く。
「陛下?」
その顔がいつも以上に赤みがかっている。しかもはぁ・・はぁ・・・っと息が荒く、少し苦しそうにしているのだ
「…宴の前に…話したい事も…はぁ…はぁ…」
と周りの者に分かるほど、呼吸が乱れ始める。それに気付いたジョアンナも慌て始める。
「へ、陛下…大丈夫ですか?お加減が悪そうですが…」
それに対して力なく笑うカイ。
「大丈夫だ…はぁ…少し…旅に疲れただ…」
とそこまで言った所で、グラっと体が揺れたかと思うと、カイは馬から崩れ落ちた
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何やら、ガヤガヤっと騒がしい気配で目が覚めた。
自分はいつの間にかベットで寝ている。そしてゆっくり上半身だけ起き上がる。
その時、ズキっと頭に割れるような痛みが走った。
「グっ」っと呻く
「へ、陛下!!無理をなさってはなりません!!」
とサンサとジョアンナが気付き、部屋の扉近くから駆け寄ってくる。
「…ハァ…ハァ…俺は、どうしたんだ?」
「陛下はオウロ熱にかかったのです」
「オウロ熱?」
とカイが苦しそうに尋ねる
「はい。急激に熱が上がる病気です。ですがご安心ください、オウロ熱は命に関わるような病ではありません。リザードマン族の医者に診てもらい、薬も投与いたしましたので、安静に寝ていればすぐに良くなります」
とサンサが説明してくれ、カイの額から落ちた布を拾い水桶に浸し始める。どうやらサンサがつきっきりで看病してくれていたようだ。
「そうか…俺は病気になったのか。すまないね、迷惑をかけて。サンサ、感謝するよ」
とぼーーっしながらサンサを見つめるカイ
「い、いえ!!そんな」
と、なぜかサンサも顔が赤くなっている。
「サンサ…何だか顔が赤いぞ。大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
それを聞いて一安心し、ドタバタと兵士たちが駆け回っている理由を尋ねた
「それで…この騒ぎは何なんだ?」
「はい…実は、近くの街に砂漠の盗賊団が現れたそうなのです。彼らは人数も多く、地方の守備隊ではなかなか対処に苦しんでいるようです」
それを聞き、しばらくズキズキっと痛む頭で考えるカイ。そして、
「……それなら親衛隊に出動を命じよう」
「そ、そんな!!私たちは陛下の側を離れる訳には参りません」
それににっこりとほほ笑むカイ。
「大丈夫だよ……ここはリザードマン族の城だ。警備は万全だろうし、親衛隊なら盗賊団ごときを蹴散らすのに時間もかからないだろ?今も魔国の民が苦しんでるなら、一人でも多く助けたい。頼むよサンサ」
しばらく考えていたようだが
「……分かりました。そこまで言っていただけるのなら、我ら親衛隊が盗賊どもを討伐して参ります。ジョアンナ殿、我ら親衛隊がいない間、陛下の事よろしくお願いします。陛下…すぐに戻ります」
「ハハハハ…信じてるよ」
サンサが瞬時に戦士の顔となり部屋から出て行った。バタンっと扉が閉まり、部屋にカイとジョアンナが残される。
「………はぁ…さて、ジョアンナ」
「は、はい」
とジョアンナが緊張したのが分かった。カイは、それを見て力なく笑いながら
「…ハァ…いつまでも不安にさせとくのは悪いから、先に言っておこう。俺は例の件を公表する気はない」
「ま、真ですか?」
心の底から安堵したように喋るジョアンナ。
「…ハァ…ああ、本当だ。ただ……罰として、交易の話には積極的に協力してもらうよ。やっぱり反対の部族も多くてね。もちろん、それは今までのように私腹のためじゃなく…魔国のためにしてもらうよ………ハァ……分かってるね?」
「も、もちろんでございます!!陛下の寛大なご処置!!私、誠心誠意やらせていただきます!!」
その答えを聞き、ふ~~と息を吐くカイ。
「そう……それはよかった。はぁ……じゃあ少し休ませてもらうよ…さすがに辛いからね」
「かしこまりました。ご安心ください、警備はいつにもまして厳重にしてあります。虫一匹入る隙間はございません」
それを聞き、そうかっと一言いって、カイは眠りについた。
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サンサを送り出し、ジョアンナが出て行ってからカイはずっと死んだように眠っていた。
熱は依然として高く、頭に激痛がはしり、ハァ……ハァ……っとうなされていた
その時………何かを感じた。一般人には感じられないような、僅かな違和感を。
バッとベットから上半身だけ起き上がる
「・・・・誰・・・・だ」
扉の近くに誰かがいた。サンサではない……それにリザードマンでもない誰かだ。
グラグラっと目の前の視界が揺れる。するとその影は楽しそうに話しかけてくる
「キキキキ……俺っちの気配に気づくとはね。………俺っちかい?俺っちは砂漠の女盗賊・・メリルってんだ!!」
「ハァ・・・・ハァ・・・盗賊」
「うん?やけに苦しそうだな・・・病気か??お前」
「・・・・・・・・・・」
カイは必死にベットから起き上がろうした。だが…
(……ハァ…ダメだ……意識が……保てない)
そのままカイの意識は闇へと落ちて行った
王たちの宴…fourth…盗賊王編はじまってます。読んでみて下さい




