依頼 盗賊王編
この大陸には多くの種族が暮らしている。大陸の北西のルードンの森には、ひっそりと暮らしているエルフ族が。
そして大陸の東部には多くの魔族たちが暮らしている。ドワーフ達は大陸中で鉱山を探しあてたり、鉄をうつ事に精をだしている。
強力な魔獣などはドルーン山脈を根城にしている事が多いが、稀に他の地域に生息しているものもいる。
人間族の国は、大国が現在大陸に二つ。神聖帝国を滅ぼし、首都をトーランにおく。スタットック王国。現在の国王は、第87代北の王…ソロス・スタットックである。
もうひとつの国は、西の果てに位置する大国・ドラグーン王国である。神聖帝国と長年にわたり闘い続けてきたこの国は、今継承権争いの真っただ中にある。
そして……大陸の南には、広大な砂漠が広がっている。灼熱の大地…永遠に続くともいえるような砂の大地。
そんな場所でも、古来よりそこで暮らしている者たちもいる…………ギガン族。
彼らは独自の文化・慣習を持ち、あまり他の種族と交流を持たない。
昔はこの砂漠に住んでいたのは、この環境に適合するかのように創られたギガン族だけだった。だが、長い年月がたつうちに人間族や魔族も少しづつこの砂漠に街などを作るようになっていた。
そして……その街で今一人の男がとある人物に詰め寄られている
「おい!!お前だよ!!」
「え?あ、俺?」
「そうだ!!お前…さっきから俺っちの事をジロジロと見てただろ?あん?」
と褐色の肌に、珍しい黒髪を後ろで縛りポニーテールのようにし、バンダナらしきものを頭に巻いている女性がギロッと睨みを利かせてくる
男は気恥ずかしい思いになる。確かに自分はこの人物を凝視していた。
「俺っちに用があんのか?え?」
とぐいぐいっとさらに詰め寄られる。身長も170ぐらいだろうか…女性にしてはスラッとした印象を受ける
「いや…あの…その」
そう自分はこの人物を凝視していた。だが、その理由をなぜ言えるだろうか?スタイルがよかったから目を奪われていたなど…
「ご、ごめんなさい!!」
と男は走り出してしまう。
「おい!!……チ……何だってんだ」
とその女性はぶつぶつ言いながら、路地裏へとはいっていく
この砂漠の街の家はみな石造りの家で、全部が四角い。それがいくつも連らなって街ができているのだ。
その細い道をするするっと進んでいくと、つきあたりにまるで隠れているかのような酒場かあった。その扉には明らかに準備中の文字がある。
だが・・…バンっとその人物は扉を壊しかねない勢いで開ける
「おう!!俺っちが来たぜい!!」
と、ずんずんと店の中へとはいっていく。それを人狼族の店主はため息を吐きながら見つめる。
「はぁ~~メリル。何度もいうが…もっと静かに入ってこい。扉が壊れちまう」
「キキキキ……扉の修理代は先に出してるじゃねーか。つまりだ…俺っちは好きなだけ扉を壊してもいい事になる。まぁ…俺っちは頭がいいからそんな無駄な事はしねーがな」
と独特の言い回しを言いながら、店主の前に座る。そしていつもの出せ!!と騒いでいる。
これ以上何を言っても無駄だと分かっているのか、扉の事にはそれ以上言及せずに材料を切り始める店主。
慣れた手つきでフライパンを動かしながら、話しかける。
「……それで今度は何を盗みに行くんだ?」
「おう!!これよ」
と一枚の紙っきれを取り出すメリル。それを上から下まで確認する店主。
「…またこんなくだらない物ばかり。まったく残念で仕方ないよ…お前さん程の腕があればどこの盗賊団でも引っ張りだこだろうにな」
といいながら、あっという間にできた麺料理を出す。
「くだらなくなんかねー!!依頼の品だからな!!」
と出された料理を美味しそうに啜っている。
「なぁ…メリル。一度でいいから盗賊団に入ってみたらどうだ?仲間ってもんはなかなかいいもんだぞ。お前さんには分からんだろうがな。本当の意味で心の支えになる事もあるんだぞ?」
「・・・・・」
だが、メリルはそれに応えない。無視しているというより、ただただ食べる事に集中しているようだ。
「今この砂漠には数多くの盗賊団がある。お前さんが気にいる奴らも何人かはいると思うんだがな~~?もしなんなら、俺が紹介してや・・・」
「おかわりだ!!」
と空っぽになった皿を差し出してくるメリル。それを無言で見つめ、やれやれっと手を上げる
「分かったよ好きにするといい………同じのでいいんだな?……そうだ…これは噂なんだがな?ある盗賊団が大きな仕事をするために、いくつもの盗賊団に声をかけ始めてるらしい。何をやるかは知らんがな…」
「俺っちにはそんな事関係ねーー。奴らには美学がないから嫌いだ」
美学ね?っとフライパンを炒める店主。そしてメリルから受け取った紙をふむふむっと見ながら…
「それで………今回はリザードマン族の小城か…まぁ…大丈夫だと思うが一応気をつけろよ?」
「おう!!俺っちに任しとけ!!」
っとメリルは嬉しそうに笑っていた。