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4 処刑


「なるほど、つまりはこういうことだな」


 フリードリヒは玉座に座り、眼前で膝をついて震える男を睥睨しながら言った。


「貴様は金に目が眩み麻薬の商売に手を出した。それが我が国家の法に触れると知りながら薬を製造し流通させた。しかしそれは私腹を肥やすためでは無くあくまでも他国から不法に侵入してくる移民族たちと商売上で張り合うためであって、この国の治安の維持と、この国の民の仕事や資産を守るためであり、引いてはこの俺のためであるのだと」


 そうで御座います、と丸々と太った男が言った。

 彼は王都の豪商の元締めであり、この国における商人たちのトップ、セオ・ガルーダであった。


「確かに首都近郊に限れば税収は増えた」

 フリードリヒは続けた。

「貴様の言うことにも一理あるだろう。麻薬の栽培、流通、製造には人手がかかる。雇用が増えれば国民に金が回る。さらにはそれを輸出することで外貨も獲得出来る。金が回れば国は栄える。実に理に適った論法だ」


 は、はい、とセオは顔中の肉を震わせながら、何度も頷いた。


「わ、私は全て国家のためにやったことで御座います。国のため、フリードリヒ様のため、あえて汚名を被ったわけで御座います。しかしもちろん、まずは皇帝様に御相談すべき案件で御座いました。許可を得るべきで御座いました。本当に申し訳ありません。そのことの罰は受けます。ただ、既に私の麻薬事業はこの国において欠かせない産業となりつつあります。他国では麻薬事業によりどんどんと富国化しております。このままでは我が国は列強の国々に遅れを取るばかり。そして、この国で麻薬取引をするなら、私を使うしか無い。私しか流通経路を差配出来ない。何卒、ご寛容な沙汰を」


 セオは汗だくになりながら、床に額を擦らせた。

 フリードリヒは玉座から立ち上がり、階段を降りてしゃがみ込み、セオの背中に手を乗せた。

 セオはひっと小さく悲鳴を上げたあと、顔を上げてフリードリヒを見た。


「セオよ。俺の判断に寛容か不寛容かの選択はない」

 フリードリヒはセオを見つめながら言った。

「物事の道理に慈悲など必要ないのだ。必要なのは慈悲があるように見せることであって、感情の中に本質など存在しない。つまり、貴様の事情など俺には関係ないわけだ。問題は貴様の言うことの是非、そして貴様の言うことの虚実にあるのみ。であるならば、大事なのは2つ。セオ。貴様が有能であるか。そして貴様が嘘吐きかどうか。今俺が問うているのは、そこだけだ」


 セオは恐怖で紫色の顔になりながら、再び頭を床に打ち付けた。


「嘘など1つたりとも吐いておりません! 私は皇帝様の下僕で御座います! 全てあなた様のためにやったことです! 本当です! 本当に本当です! 信じてくださいませ!」


 静まり返った玉座の間に、どうかどうかと、セオの懇願が響き渡った。

 フリードリヒは立ち上がり、今度はそのままセオの背中にどかりと座った。

 それから、その場にいる大臣たちをゆっくりと見回し、


「処刑だ」

 と言った。

「セオとその家族、親族、部下、仲間、組織、一族郎党の財産を全て没収の上、斬首だ。関わりのあった者、知っていて放置していた者、利益を得た者、一人たりとも見逃すな。殲滅、皆殺しだ。この男が生きた痕跡を根絶やしにしろ」


 セオはあまりのショックに身悶えることも出来ず、ガタガタと震えながら、助けて下さい助けて下さい、と繰り返した。

 フリードリヒはくいと顎をしゃくった。

 それを合図に、甲冑を着た戦士がセオの首を落とした。


「トマス。あとの掃除は全てお前に任せる」


 トマスは御意と応え、跪いた。

 フリードリヒは立ち上がり、セオの死骸を一顧だにせず、入り口に向かって歩き出した。


「フリードリヒ様」


 トマスがその背中に声をかけた。

 なんだ、とフリードリヒは半身だけ振り返った。


「実は先ほど、マルーディアから使者が」

「マルーディア?」

「はい」

「デイモンか」

「はい」


 フリードリヒは思わずにやりと笑った。


「思っていたよりも随分早かったな。よし。では俺の部屋に連れて来い。ここは汚れてしまったからな」


 そうして、彼は嬉しそうに血だまりの玉座を後にした。



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