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第二十一話 しりとりリセマララスクくそゲー

「あー、もうむり飽きた。ゲームやりたい」


 絞り出すようにいいながら、ヒロトは草原に寝転がる。


「薬草はまだ全然あつまってないぞ。ちゃんと手伝えヒロト」

「ゲームやりたいー。ゲームやらないと干からびてしぬー。パパのスマホになんかゲーム入ってないの」

「バッテリーはもうほとんどない。だいたい、ヒロトはこの世界がゲームみたいなものだといっていたじゃないか」

「だって退屈過ぎるよ。こんな草摘むだけの作業ゲーやだやだやだやだ。もっと戦ったりとかしたいー」


 ヒロトが足をバタバタさせるので、足元の草が周囲に散る。


「だらしないのう、山田ヒロト」


 妖精の王タイテは、まだケンイチの肩の上に乗っていた。草原まで送り届けるという約束だったけれど、草原についてからもなぜだかずっと私たちのそばにいる。


「あとちょっとで薬草も集まるし、早く終わらせて帰ろうね」

「ママー。ママのスマホなんかゲーム入ってない?」

「英語アプリとか数字パズルとか」

「ちっ」

「親に舌打ちするんじゃありません。いや、親だけじゃなくてだれに対してもだめ」

「ユウカー、ユウカのスマホ……」

「やだ。貸さない」

「ユウカ、なに聴いてるんだよ。だいたいなんでそんなバッテリー持つんだよ。おかしいやん」

「えーっと、日頃の行いじゃない?」


 なにかをごまかすように、ユウカはイヤホンを触る。


「こんなところにいられるか俺は帰るぞ! そうだ、もう一回車で海にダイブしたら、元の世界に戻れるんじゃないの」

「そのまま一家心中になりそう」

「ヒロト、ボクとしりとりする?」

「いいね、しりとり!」

「いいんだ……」


 ヒロトがむくりと起き上がったので、私たちはあきれて薬草摘みを再開する。


「しりとり」

「リセマラ」

「ラスク」

「くそゲー」

「げつようび」

「ビーム」


 ヒロトとリョウのしりとりを聞きながら薬草を摘んでいると、雲行きが怪しくなってきた。帰り道まで天候がもたなそうだ。


「バケツ一杯分摘めたかどうか怪しいけど、もう帰ろう」


 荷物をまとめて撤収しようとしていると、風が強くなり雨雲がみるみる近づいてきた。


「うわあ、降ってきた」

「あそこで雨宿りしよう」


 ケンイチが斜面の小さな丘を指し示す。行ってみると、丘の下が少しえぐれていて岩場が見え、洞窟のようになっている。防空壕のような小さな穴だ。


「こんな場所があったんだ」

「午前中に薬草を探しているときに見つけた」

「見つけんでいいものを見つけたのう、山田ケンイチ」

「あれっ、王。まだいたんすか」


 ケンイチのビジネスシャツのポケットから、タイテが顔を覗かせる。


「昼寝しておったらここまで連れて来られた。ここは鍾乳洞だ。奥になにが潜んでおるかわからんぞ」

「鍾乳洞? こんなに狭いのに?」


 ヒロトがあたりを見回す。暗くてよく見えないが、天井はケンイチの頭につくほどの高さだし、三畳ほどの広さしかない。


 ユウカがスマートフォンの懐中電灯で洞の奥を照らす。リョウの背の高さくらいの穴が開いていて、その先にも空間が広がっていそうだった。


「やだ、不気味」

「雨足が弱くなったらすぐに出ていこう」


 リョウはランドセルからハンドタオルを取り出して自分の頭を拭いている。


「そもそもおぬしたちはどこから来たのだ。ほかの冒険者たちとは少しばかり様相が異なるのう」

「俺ら、異世界から来たんですよ。いや、俺らからしてみたらこっちが異世界なんだけど」

「ほう」


 ヒロトが事情を説明する。タイテはケンイチの肩に乗り興味深そうにその話を聞いていた。私たちは洞の中の岩に腰掛けて二人の様子を見守る。


「なるほどな、女神ウンリイネか。聞いたことがあるぞ」

「えっ、本当ですか」


 私は驚いて声を上げる。


「なんかこう、三人くらいおったやつの一人だろう。海の女神と空の女神と……、えーっとあとなんだっけ」

「そうそれ、海の女神!」

「いや四人、あるいは五人だったかのう」

「あいまいー」

「百年くらい前にも、女神に連れて来られたという来訪者がおった気がする」

「その人はどうなったんですか」

「知らん。もう死んだのではないか。人間すぐ死ぬからのう」

「百年前の話なら、そりゃそうか」

「妖精の王タイテ、俺たちが元の世界に帰る方法はあるのか」

「なんだ、山田ケンイチは帰りたいのか。我は詳しく知らんが、王都に行けば来訪者の記録も残っているのではないか」

「王都」

「うむ。我は妖精の王だが、人間の王のおる王都に行けばよい」

「それってどのあたりですか」


 私はスマートフォンで地図の写真を開く。


「うーん。我は地図の見方がよく分からないのだが、たぶんこの地図には載っていないのではないか。もっと遠くの方だと思うぞ」

「やはり広域の地図が必要……」


 ケンイチがそういいかけると、唐突に地鳴りがして地盤が緩む。


「わあーっ!」

「リョウ!」


 リョウが立っていた場所の土が崩れ、リョウは洞の奥の暗い穴に転がり落ちていく。

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