5 いざダンジョンへ
いざ、ダンジョンへ。
装備を受け取って俺が着れるように調整してもらい、リーリア嬢から過保護なまでにバックパックに詰め込まれたアイテムを持ってとうとうダンジョンに向かう段階となった。
「まずは身を以てしてダンジョンを味わうか、リーリアさんってば意外にもスパルタなのか?」
普通情報を集めてからとかアイテムや装備を手にするためにアルバイトしてお金を稼ぐとかいろいろあると思うんだけど色々すっ飛ばしてるな俺。
冒険者ギルドから出て町の中心へと向かっていく。中心は下り坂になっている方で中心には迷宮都市イシュタルのシンボルと言える巨大ダンジョンが待ち構えている。
「しかしマジックアイテムって便利なんだな。慣れない装備にバッグを背負ってるのに歩いてるだけじゃ疲れない。まさにファンタジー装備か」
流石に走ったりすれば疲れるとのことなので連続でダンジョンのモンスターと戦闘になるとだいぶ疲れるに違いないが移動で疲れないなんて素晴らしすぎる。
これならしばらくダンジョンの中を歩き回っても問題はないだろう。
「リーリア嬢が詰め込んだバックの中身には地図と携帯食とキャンプアイテムと寝袋、それと採取用のナイフね。それとサイドに吊り下げるようにして水の入った革袋と」
携帯食は多めに詰め込まれているので食べて場所を減らしながらそこに採取したアイテムを詰め込むことにしよう。いざとなれば神リリフ印の飲み物と食べ物もあるし。
そんなことを考えて自身の装備を確認していたらダンジョンを周囲を覆う外壁、エンメルカルが見えてきた。
外壁に名前がついているなんて不思議だなと思ったが近づいてみればその理由が分かってきた。外壁には多くの衛兵らしき兵隊や巨大な弓や大砲らしき物が外壁の内側、つまりダンジョンへと向けられている。そのあり様はまさに巨大な要塞そのものであった。
外壁エンメルカルは対ダンジョンの要塞なのだ。迷宮都市イシュタルでは巨大ダンジョンの恩恵をしっかりと受けながらもダンジョンという危険に最大限に警戒しているのであろう。
「その分何かあったとき直ぐに対応できるようになっているってことか」
普段だったらエンメルカルに向かう人達で順番待ちになっているとのことだけど俺は冒険者ギルドで色々あったせいか完全に後発組で前に並ぶ人は恐ろしく少なかった。
すぐに外壁に連なる門へと到着すると衛兵らしき門番が二人立っている。全身金属鎧でいかにも衛兵って感じだ。いかつい顔をしていて圧力が凄い。きっと真面目な人達なんだろう。
「ここはダンジョンへと続くエンメルカルの八門のうちの一つだ。初めて見る顔だが冒険者だな?」
「そう。イシュタルのダンジョンに冒険しに来たんだ」
問いに答えると二人の門番は頷いた。
「ダンジョンは基本的に誰でも入れるが装備が心許ない物は2階層より下にいくことをすすめていない。この意味が分かるか?」
「2階層からモンスターと戦闘になるってことだね」
そうだと門番は肯定する。1階層はモンスターがいないのか。リーリア嬢の言う通り行ってみないと分からないことだらけだな。
「もちろん1階層もダンジョンであり、多くのアイテムが存在する。もちろん子供でも採取できるので価値は低い。それと宝箱も1階層では出現しない。モンスターの出る2階層から出るので注意せよ」
「それを聞いてなかったら延々と宝箱を探して1階層をさまよっていたよ」
これは聞く限り1階層で歩き回るのはうま味が無さそうだ。戦えるのであればさっさと2階層に降りろという催促でもあるのかもしれない。冒険者によって得られたダンジョンの資源は冒険者ギルドを通じて結果的に都市に還元されるから能力があるものは下に行くように促されるのであろう。
「ここから道なりまっすぐ行けばダンジョンへと繋がっている。では冒険者の健闘を祈る」
「ありがとう!行ってくるよ!」
門番に元気よく別れの挨拶をすれば少し驚いたような雰囲気を出しながらも表情は変えなかった。その門番の横を通るとぽっかりとした石造りのトンネルの中を歩いていく。途中扉が何度かあったがこれは外壁の中へと続く扉なのだろう。プレートが張ってあるが俺には読めないけど多分そうだと思う。関係者以外立ち入り禁止とでも書いてあるんだろう。
距離にして100mほどであろうか、人口の洞窟から幻想的な光を放つ洞窟へと切り替わった。
ここからがダンジョン、迷宮都市イシュタルの巨大ダンジョンの始まりである。