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2 スキルを使ってみた

「実は一日一つしか出せないんだ。まだ使い慣れていなくて」


 ごまかすような笑顔でそう言えばリーリア嬢に言えばどこか納得していないものの頷いた。馬鹿正直に色んな薬が出せると言えば何が起こるか分かったモノではない。


「最近スキルに目覚めたのですか?」


「そう!その通りなんだ」


 まさに助けに船とはこのことだろう。実際にスキルに目覚めたばかりなのは間違いではないし未だ使い方は神リリフから中身を思い浮かべながら召喚・名前を言えば発動するとは聞かされているものの、発動して薬が出る以外にも何が起こるかも分からない。


「分かりました。当ギルドではスキルの使用の指南をすることができますが如何なさいますか?」


「え?そんなことまでしてくれるの?」


「全ての人がスキルを持っている訳ではありませんし、後天的にスキルに目覚める人もいますから。それと……召喚系のスキルは稀ですので」


 当然ですと言わんばかりに頷いたリーリア嬢は後半は小声で教えてくれた。もしかしたら薬が出せることはあまり広めない方がいいのかもしれない。ギルド自体体育会系な人達が多いためか賑やかで周りに聞こえた様子はなさそうだ。


「ありがとう。それじゃあスキルの指南をお願いしていいかな」


「はい。かしこまりました。先輩あとはお願いします」


 リーリア嬢が新人であるが故か、後ろの方でこちらの様子を窺っていたベテランぽい職員さんが頷くとリーリア嬢が立ち上がりそこにベテラン職員さんが座る。


「アキラさんはこちらへ、私についてきてください」


 はい、と答えてリーリア嬢に連れられて建物の奥へと入っていく。そのときにふと誰かに見られているような気がして後ろを振り返るが相変わらずガヤガヤとうるさいばかりで誰がこちらを見ていたのか分からなかった。気のせいかもな。




 リーリア嬢に連れて来られたのは建物奥の通路にある曲がってすぐの部屋だった。簡易的な応接室っぽく小さい部屋ながらもテーブルと机が置かれている。


 そこに対面で向かい合って俺とリーリア嬢は座る。


「スキル持ちの人の多くはスキル名を言えば発動できるそうですがアキラさんは使い方は分かりますか?」


「ああ、わかるよ」


 リーリア嬢の問いに俺は頷く。正直初めて召喚するので人前でするのは嫌だったのは確かだ。何を召喚しようかともう一度薬袋の中身を思い浮かべてスクリーンを見てみる。一番効能の弱そうな10級ポーションにしてみようかな。


 【10級ポーション】傷を治す。


 そう思ったら10級ポーションの効果が別のスクリーンが表示される。ポーションって聞いたら思い浮かべる内容そのまんまだな。変えることなくこれにしよう。


「では実際にスキルを使ってみて頂いてもよろしいですか?」


「分かった。召喚・10級ポーション」


 言葉にすると同時に俺の頭上が光り出す。何事かと思って上を向けば天使の頭の上にあるような光るリングとどこかで見たことあるデフォルメされた光る羽が浮かんでいた。これ神リリフのモチーフじゃん。


 時間にして数秒光ると、無意識に差し出した手の平の上にポンと音を立てて青い液体が入ったフラスコが出てくる。フラスコの表面にはうっすらと神リリフの羽のモチーフが描かれている。唖然とした表情でそれを見ていると反対側に同じく唖然とした表情のリーリア嬢が座っていた。


 いつのまにか頭上で光っていたリングと羽は消えており、ポーションが出たと同時に消えたのかもしれない。俺は急に恥ずかしくなって照れ隠しに頭をかきながら話しかける。


「いやー派手だよねえ」


「……そ、そうですね。だいぶ……いえ、いささか派手でしたね」


 リーリア嬢にまるで以前から知っていたかのように言えばお茶を濁したように同意してくれた。優しい人である。


 するとリーリア嬢は困ったような、申し訳ないような表情をした。


「アキラさんに謝らなければいけないことがあります。実は薬を出せるスキル……薬を召喚するスキルというのは当ギルドでは未確認のスキルでして、本当にスキルを持っているとは思っていなかったんです」


 ごめんなさいと深くリーリア嬢に頭を下げられる。考えてみればスキルの確認とか新人のリーリア嬢の仕事の範疇を超えているのかもしれない。もしかしてここって拘束部屋だった?


 改めて周りを見れば応接室というよりは警察の取調室に見えてきた。俺って実は挙動不審で疑惑たっぷりの容疑者だったのか?


 俺は引きつった笑みを浮かべてリーリア嬢に笑い返す。


「い、いえいえ。自分で言うのもなんだけど変わったスキルだと思うので」


「本当に申し訳ございません。今から上司に相談してきてもよろしいでしょうか?」


 申し訳なさそうにしているリーリア嬢はだいぶ困った様子だ。俺と出てきた薬を交互に見てやってしまった感を強く出してしまっている。


 そんなリーリア嬢を見て困らされたのは確かに俺だけれど助け舟を出したくなった。けして美人に弱い訳ではない。


「大丈夫。できれば上司以外の人にスキルのことあまり知らせないでくれると助かるけど」


「ありがとうございます。直ぐに対応致しますね」


 リーリア嬢は立ち上がるとこちらにまた頭を下げてから部屋から出ていった。やれやれどうなるんだこれから。

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