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1 薬袋の中身

 ふと目を開くと明るい日差しが舞い込んでくる。


 土埃と嗅いだことの無い人の臭い、どこかで見たことのある様な街並みに歩くのはカラフルな髪をした人達。ぼーっと立っているだけで目の前を人が通り過ぎていく。しかも人々の多くは何かしらの武器やら防具などの装備を身に着けていてたまにこちらをちらっと見る人がいてはほとんど皆同じ方向へと去って行く。


「あー、そっか。異世界(こっち)に来たんだった俺」


 しばらく眺めていて混乱していた頭にふと浮かんだ神リリフの姿に俺はあの神との会話が夢で無かったことを思い出した。


 夢だと思っていたら奇行に走ったり、無茶をしていきなり死ぬ確率の高いことに挑戦しようとしていたかもしれない。


「おーい、兄ちゃん。さっきからギルドの前に突っ立ってどうしたんだ?」


 横から声がしたと思ったら果物らしき物を売っている出店らしき所からおっちゃんが話しかけてきた。異世界人とのファーストコンタクトは無事言葉が分かったことで安心する。これも神リリフの優しさであろう。


「ギルド?おっちゃん、もしかしてこの目の前の建物って冒険者ギルド?」


「おうよ。なんだ冒険者ギルドに用があったのか。その開けてある扉から中に入ってまっすぐいったら受付だ」


 ありがとうと言って俺は冒険者ギルドの方を向いてゆっくり歩いていく。いきなり迷うことなく冒険者ギルドの前って神リリフはやはり優しい人だな。


 ここから俺の異世界生活が始まるんだと思って俺は冒険者ギルドの入り口をくぐった。




 冒険者ギルドの中はがやがやとした活気に満ちていた。入って右側には話し合いの場であろうか木製のテーブルと椅子が置かれており厨房らしき所から飲み物を受け取った人々が話し合っている。ワイワイと酒を飲んでいるグループもあれば依頼人らしき人と真剣に話し合っているグループもあり、皆が瞳に強い光を宿しているのが印象的だ。


 左には額縁の上にマークの付いた巨大なコルクボードがあり、どうやら依頼らしき物が張り付けてあるようで冒険者達が集まって依頼を確認している。依頼には数字らしきマークがついていてその数字がついた木の棒を持って受付に並んでいる。


「依頼の受け方は分かったけど流石に文字はわかんないな。とりあえず受付に並んで説明を受けてみよう」


 俺は複数人いる受付嬢がいる列のどこに並ぼうか考え、邪魔にならないようにベテラン冒険者らしき人々が並ぶ列の横に見える異様に列が少ない受付に並ぶことにした。どうやら新人の受付の人が応対しているようで時間に余裕のある人がこちらに並んでいるようだ。


 皆フレンドリーに受付に話しかけていてそんな会話がちらっと聞こえてきた。特に急いでもいない俺はそちらに並んで待つことにする。待つこと30分ほどで先頭になった俺は受付嬢に話しかける。


「こんにちは。冒険者登録をしたいんだけど」


「こんにちは。担当のリーリアです。冒険者登録ですね」


 眼鏡をかけ金髪のおさげを肩から流しているリーリア嬢は意外にもてきぱきとした動きでごわごわした紙を用意する。受付嬢ってやっぱりどこの世界も仕事のできる人たちばかりなのかもしれない。


 こちらの紙をご覧くださいって言われたけど残念ながら文字が読めない。


「ごめん、実は文字が読めないんだ」


「わかりました。代筆もしておりますので私がお書きしますね」


 申し訳なさそうにする俺に対してリーリア嬢は紙を受け取ると笑顔を向けてくれる。嫌な顔一つしないのでいい人なのかもしれない。


「名前は天野晶。出身は日本。年齢は15歳」


「珍しい名前ですねえ。二ホン村なんて聞いたことが無いですね。よほど遠くから来られたんですね」


 どこかびっくりするような表情でリリーア嬢は紙に羽ペンで文字を書いていく。ほうほう、俺の名前はそう書くのね。数字はそれね。覚えたぞ。脳内スクショにしっかりと保存しておく。


「ではアキラさんに得意なことやスキルをお聞きしますね。これはパーティーを募集したり、依頼を外旋したりするときに必要なことなので複数あればお伺いしますよ」


「得意なことね……」


 正直帰宅部で一般的な学生であった俺はスマホで動画をみたりゲームをしたりするくらいの無趣味な人生を送っていた。異世界に来て通用するものは無いと思う。


 だがしかし、俺には神リリフから特別な力を頂いたのだ。リーリア嬢に聞かれて思い出した。恐らく神リリフが俺に与えた力ががリーリア嬢の言うスキルというやつなのだろう。神リリフもスキル名って言ってたし。


「薬を出すスキルを持ってる」


「なるほど。スキル持ちですか。個数制限があったりはしますか?」


 そういえばその辺りはどうなってるんだろうと思って薬袋と念じてみる。すると薬袋の中身の一覧が青い文字で空間に表示された。驚いてそちらを見るがリーリア嬢は不思議な顔をするだけでどうやら文字は見えていないようだ。


 俺はごまかした笑顔を見せてスクリーンを確認する。どうやら俺でも読めるように日本語で書かれている。


【薬袋レベル1】

10級ポーション:99個 9級ポーション:99個 8級ポーション:99個 7級ポーション:99個 6級ポーション:99個 5級ポーション:99個 4級ポーション:99個 3級ポーション:99個 2級ポーション:99個 1級ポーション:99個 エリクサー:99個 ハイエルフの霊薬:99個 ダークエルフの強壮剤:99個 ソーマ:99個 竜血薬:99個 万能薬:99個 呪術解除薬:99個 聖水:99個 毒消し:99個 風薬:99個 のど飴缶:99個 生理食塩水:99個 リリフ印のスポーツドリンク:99個 リリフ印の栄養ドリンク:99個 リリフ印の栄養バー:99個


 俺は見なかったことにしてリーリア嬢に笑顔を向けた。

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