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0 神との会合

 君はファンタジーと言われたらどんな物を想像する?


 定番の火を吹くドラゴンか。奇跡を起こす魔法使いか。それとも神々しい神々か。あるいはこの世の終わりのような地獄か。それとも流行りの転生物か。様々なものを想像することができるだろう。


 その中で描かれる神様は大抵美人の女性だ。しかし、現実の神様を考えてみたとき君は女性の神様も思い浮かべるであろうが大抵が男性であろうと思う。


「ゆえに俺の目の前にいる神様がおじいちゃんであってもおかしくはないのだ」


「おぬしなかなか失礼じゃのう」


 そう言いながらもにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべるおじいちゃんはなんと別世界の神様らしい。その名も癒しの神リリフという名前だけ聞けば美女を想像してしまう神様なのだ。誰得である。


 神リリフと何故出会い、見渡す限りの草原にいるかと聞かれればリリフが俺の魂を元の世界から拉致してきたらしい。何でも元の世界では神様が無干渉過ぎて世界のバランスが崩れ、多くの魂が不幸に見舞われて失われそうになっていたとか。


 それなら一人くらいもらっても大丈夫だろうと拉致してきたのが俺こと天野晶だ。年齢は15歳。夢に夢見るお年頃である。


「おぬし夢に夢見るとか言っているが目が恐ろしく活気がないんじゃが。死んだ魚のような目をしているんじゃが」


「ナチュラルに思考を読まないでくれないか神様。ちょっと将来働かずにぐうたらしたいなとか宝くじで大金が当たって遊んで暮らせないかなとか思っているだけじゃないか」


 だらしない男じゃのうと言いながらも笑みを絶やさない神リリフ。好々爺としたその姿はやはり癒しの神様らしく人に安らぎを与える存在なのだろう。一緒に居て楽である。


「さて、お主はわしの世界に行ってもらう訳じゃがお主に別に何の役割も与えるつもりもないし好きなように生きたらいい。ただ金を得て遊ぶにしても何かしら仕事はせないかんぞ?」


「運動なんて学校の授業くらいしかしてないんだけどなあ。まあせっかく異世界に行くなら冒険したいかな」


 ふむふむ、それじゃあここがいいかのと言いながら神リリフが手をかざせば青空に見たこともない町が浮かび上がる。


 人がたくさんいて活気に溢れており、町は塔のように高い建物がたくさんあったりして広大だ。その町の中心には幻想的な光を纏う大穴がぽっかりと空いていた。


「迷宮都市イシュタル。ここのダンジョンは世界最大のダンジョンであり、富や名声、装備やアイテムまで何でも揃う人類の希望と言われている。しかも奥に行けば行くほど難易度が上がる仕様なので初心者でも安心じゃ」


「まるでゲームみたいな世界だなあ。まあダンジョンがある異世界なんてゲームの世界みたいなものか。……その中で俺生きていけるかな」


 神リリフの説明に命の危険を感じた俺はつい弱音を吐いてしまう。スリルの無い冒険なんて冒険じゃないって言うのは分かるんだけどこちとら温室栽培の人類なもので。


 神リリフは何かを考えこんだように白い髭を蓄えた顎に触れると髭を一本引き抜いた。ぶちって聞こえたけどその髭すごく堅そうだね。


 神リリフの髭は幾何学的な模様を描いて一つの絵を作るとぽんっと音を鳴らして絵の描かれた布袋が出現する。デフォルメされた羽の描かれた布袋だ。光りながら浮かんでいる。


「おおー。すごい。魔法みたい」


「この中に薬を入れておいたからの。これを使って生き抜くといい。……いや、お主死んだ目をしている割に人が良さそうだし盗まれたらいかんからこうしよう」


 目の前で起きた奇跡に驚いて喜んでいると布袋が浮かんで俺の体に突進したかと思えばそのまますり抜けた。そして後ろに突き抜けずに俺の体の中で止まってしまった。そのせいで俺の胸が光っている。どうなってるのこれ。


「髭袋が体に入っちゃった。俺の体が髭袋に」


「髭袋言うんじゃない。薬袋って言え。ちゃんとスキル名も薬袋にしておいたからの」


 神リリスがそう言うと共に胸の光が収まった。安心した。このまま俺は一生発光人間になってしまうのかと思った。


「意外と余裕そうじゃのう。使い方は薬袋の中身を思い浮かべ、召喚・薬の名前と言えば出てくるからの」


「使い方は分かったけど余裕そうって?」


 神リリスは意外というか若干驚いたような顔をして俺を見ているが俺をどれだけ見ても何も起きないぞ。強いていえば草原のこの空間が癒し過ぎてごろごろしたい気分なくらいだ。


「いや、そろそろ眠くなってくる頃合かと思ったんじゃが適性が高いのかの。これ、草原で寝転がって遊ぶでない」


「言われてみれば確かに眠いかも。それじゃあおやすみない神様」


 自由じゃのうと神リリスに言われながら俺は草まみれになりつつ寝ることにした。普通はスキルぶち込んだ瞬間気絶するんじゃがのうって聞こえたのは多分夢だと思う。


 土と草の匂いに包まれながら俺の意識はこうして落ちていった。

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