陽キャな幼馴染が俺にバレンタイン“ちょこ”をくれた件。
1日遅れましたけど私の中ではまだバレンタインデーです(強引)!
「……ね、ねぇねぇ宗助。今日って何月何日か知ってる?」
茜色に染まる高校の帰り道。家が隣同士で現在も登下校を一緒にするくらい仲の良い幼馴染がどこか緊張した様子で隣にいる俺、白木 宗助に話しかけてきた。
この幼馴染は俺よりも頭二つ分ほど低い身長で贔屓目無しに見ても可愛い。クラスでも人気者な彼女だが、その表情はいつもと比べて若干固い。
「知ってるも何も、2月14日のバレンタインデーだろ? 世間一般では女性が男性にチョコレートを渡す日とされているな。……あ、そういえば今朝登校中に貰った義理チョコ美味しかったぞ。ありがとな、蝶子」
「えへへ、どういたしまして……! ……ってちがーうっ!!」
「ん?」
「確かに2月14日はバレンタインデーだけど、宗助の誕生日でもあるでしょ!? もうバレンタイン兼誕生日として義理チョコを渡すのが定着してるけど私たちはもう高校二年生! ……こ、このままじゃ、いけないと、私は、思いますっ!」
くるんと毛先をパーマした茶髪ロングな幼馴染、黒坂 蝶子は、ビシッと片手を上げて隣を歩く俺にそのように提案する。頬を赤らめた蝶子のその鬼気迫る様子にはどこか必死さが伺えるも、物事が鈍い俺には正直話の着地点がイマイチ分からなかった。
「すまん。良く分からないんだけど、このままじゃいけないってもしかしてバレンタインと誕生日プレゼントを別々にするってことか?」
「うーん、当たらずとも遠からずと言うかぁ……。渡すのを別々にしたいのもあるけど、私が言いたいのは普通の幼馴染からもっとこう、特別みたいな、甘々な関係になりたいと言いますかぁ……!」
「………………」
人差し指同士をちょんちょんとくっつけて顔を真っ赤にさせる蝶子。ここまでくれば流石の俺でも彼女が何を言いたいのか分かる。
だって俺も、幼稚園のころ蝶子が隣に引っ越してきた時からずっと好きだったのだから。思えばこの関係が壊れるのが怖くてなかなか言い出せず、結果いつの間にか高校生二年生になってたな。……よし。
「なぁ蝶子。俺たち、付き―――」
「ねぇ宗助、あのねっ!」
「…………ん?」
静かに意を決した俺が蝶子に告白しようとするも、突然彼女が大きい声を出して俺の声を遮る。そして次の瞬間、蝶子は衝撃の言葉を言い放った。
「わ、私が本命蝶子だよっ! チ、チョコだけにっっっ!!!」
「―――――――――え?」
まるで俺たちの空間だけ時が止まったかのように思えた。固まる俺の目の前には、ウィンクをしたまま両手でハートの形を作ってプルプルと震えている可愛い幼馴染の姿。
それを見た俺は思わず噴き出す。
「ぷっ、あはははははははっ!!」
「なっ、宗助酷い!? せっかく私が一世一代の決心をして告白したっていうのに!!」
「ごめんごめん。一生懸命な蝶子が可愛くてな」
「かっ、かわっ…………!?」
目を白黒させて戸惑う蝶子。そう言えば面と向かって可愛いって言うのは初めてだったか。うん、これからはどんどん口に出していこう。
さて、俺からの返事だけれど…………、
「じ、じゃあ俺からの返事。―――いただきます」
「んにゃぁッ!!??」
心臓をバクバクさせながらも俺は蝶子の頬に軽くキスをする。びっくりしたのか彼女からは猫のような鳴き声がしたが、俺は羞恥心から目の前の彼女の顔を直視出来なかった。
落ち着かない手で首を摩りながら、俺はそのまま言葉を続けた。
「あのさ……、俺もずっと蝶子のことが好きだった。い、今は頬だけだけど……、その……、これから恋人として、よろしくな……!」
「う、うんっ! 私もっ、よろしくお願いしましゅ、宗助…………っ!」
顔を真っ赤にしながらも、彼女の笑顔がいつも以上に魅力的に俺の瞳に映った。
こうして2月14日のバレンタイン兼俺の誕生日は特別な日になった。義理チョコから本命チョコへと変わった大切な思い出。毎年この日が来るたび、きっと俺の胸には温かい想いがじんわりと広がっていくのだろう。
俺はこの日を決して忘れない。
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