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今夜、月が昇らずとも

作者: 檻ノ兎角

例えば、寝て起きたら自分では無い誰かになっていたとして。

例えば、扉を開けたら普段では無い場所に通じていたとして。

或いは、その両方が同時に起きたとして。

僕の生き方は本当に変わるのだろうか。逃げて逃げて逃げて、そんな生き方をして、誰かのせいにして、何かのせいにして。きっと変われやしないな。終わらないかな。


本気で生きたことなんてないくせに、本気で変わろうとしたことなんてないくせに、まあ大層に死にたいなんて志を掲げたものだ。結局君は君のことが嫌いになれないのだろう?君の嫌いな君が居なくなれば、きっと相当素敵な世界だ。愛しくて愛らしくてたまらないからね。


決意なんて幾度となくしてきた。結局捨てられないまま、ここまで抱えてきてしまった。そいつらを宝物と呼んでしまえば気が楽だな。誰がどう見たって足枷なのに。


自分のことを凡人だなんて都合よく呼べたもんだ。誰よりも優れていない、劣っていないなんて思い込んでしまえば才能なんて無くたって幸せを感じられそうだ。結局怖いだけだろう、比較されるのが。浅はかな人間性を、引きずり出され、晒され、見透かされるのが。そんな薄っぺらい人間を凡人と呼べるだろうか?


自己犠牲ってやつに溺れてみたいと思ったんだ。誰かのために生きていれば、誰かのために生きれる気がして。当たり前だけど。まあそんな優しい人普通身近にいるわけなんてなくて。僕のためだけに生きるってこの前決めた気がした。


誰かの言葉に影響されたくないなんて、そんな影響どこから受けたんだ?君が何のお陰でここまで来れたのか分からないまま自分一人で歩んできたつもりなら恩知らずも甚だしいね。なんのお陰か気付いているのなら何もしてこなかった君は尚更不幸を振りまいてるとも言えるが。


駄目だ。やっぱり逃げていたいらしい。やりたい事だけやって、やりたくない事から目を背けて。間に合わなくなったら、耳障りのいい言葉を探して心を落ち着かせて。いつかそんなの破綻するのなんて、そんな当り前、知っている。それすら逃避しているのさ。人間のクズ。クズの人間。


やるべき事は見えているのなら何故やらないんだ?無駄だと言い切るのも早いだろう。分かったぞ、誰かにやらせようとしているんだ。誰かが手を挙げるのを待っていればやらなくて済むもんな。残念だけど君の周りには誰もいないよ。そいつはいつだって君が手を挙げるのを待ってるぞ。


空から眼の前に羽のついた幸福が降ってこないかな。だって道端に落ちてる幸福を自分のものだって言い切れないじゃん。まあ幸福なんて舞い降りるわけなんてなくて。それを不幸と呼ぶのは余りに傲慢か。


五月蝿いな。五月蝿いな。どうせ無理無駄、あきらめろ。どうしようもない。救われるわけなんてない。消えろ消えろ消えろ


吐き気がする。でも何も吐けそうにない。眠気がする。でも眠れそうにない。悲しい気持ちだ。だけど何色の涙を流せばいいか分からない。自業自得に色なんてないから、そんな涙瞼にすら溜まりはしない。楽しいことがあったって、きっとこの前なら口角が上がって笑えただろうな。


結論を出すには早すぎる気がするんだ。この心臓は脈をうち、肺は酸素を求め二酸化炭素を吐き出し、胃は食べ物を強請る。寝て起きて食って寝て。俗に言う糞製造機になったとしても、この体はまだ命を手放さない。無形の心が離れたがろうとて、結末など迎えられはしない。嫌われたっていいとか、好かれなくていいとか、蔑まれたっていいとかどうしようもなくなっていいとかそういう生き方だっていいんじゃないか?聖人に産まれた訳でもあるまい。他人のせいにしたり、環境のせいにしたり、運のせいにしたり。それら全部引っ括めて自分の世界で、自分が持ってきた退かしようのない重しだろ。幸福になりたかったからだろ。だから苦しくって苦しくって全部を恨んでるフリをして、自分を正当化して自分を責めたんだ。正しい生き方なんて分からなくとも正しく有りたいと願うことが間違ってるわけない。幸福を求める事が間違ってるわけない。僕は幸せになりたい。君もきっとそうに違いない。僕たちはまだ幸福を諦めきれていない。だからこそ僕たちは幸福なんじゃないか。そういう幸福論があってもいいだろう。諦めないなら、締めなくっても良いだろう。体の最期に結論を出そうと思う。今夜、月が昇らずとも、あの朝日をもう一度拝みたいんだ。

寝ます。寝てください。

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