消えた焚火
洞窟の中は不気味な程に静かだった。
朝日が届くことのない暗がりの中、潜んでいるかもしれない敵を危惧しながら忍ぶ2人の足音だけが洞窟内に小さく響いた。
途中、道を塞ぐように転がっている黒づくめの死体が、急所を突かれて転がっていた。
赤黒いものを辺りに巻き散らし、むせるような匂いを放つそれは、歩みを進めるたびに増えてゆき、それはそのまま、迎え撃ったベグダの過酷な戦いを示していた。
「本当に強いんだな、彼」
敵が隠れていないことを確認しながら前に進み、ようやくベグダが焚火をしていた場所に辿り着いた時、レミアの足が、ついと止まった。
レミアの視線の先に、黒ずくめでない男が横たわっていた。
赤黒く染まった衣服の一部にベグダが来ていた服の色が見えたトファは、思わず駆けよった。
「ベグダ!」
うつ伏せになっている彼の背には銃で撃たれた跡や剣による切傷が複数あった。
呼吸なく冷たい体の彼の、その横顔はなぜか安らかに見えた。
「ベグダは命がけで俺達を守ってくれたんだ。昨日、初めて会った人だけど本当にいい人だった」
詳しいことは知らないがベグダとレミアは共に生活をしていた。
レミアの悲しみはトファのそれとは比較にならないはずだ。
トファはレミアにかける言葉が出てこず、ただベグダの側に座り込んでいた。
だが、先に沈黙を破ったのはレミアの方だった。
「死んだのか」
「え?!」
聞き間違いかと思いトファは聞き返した。