刺客②
理由も分からぬまま、ベグダの後をついていった先は二又に分かれ、ベグダは迷うことなく、そちらを左に進んだ。
洞窟に入り今まで通ったどの場所よりも歩きやすく、光石が散っている道を進んだ先に、扉のようなものがあり、その手前で動きなく立っている人影が見えた。
「レミア様、刺客です! 今回は人数が多い。早く、安全な場所へ――」
「またか」
レミアはそう言うと、踵を返して奥の方へと歩き始めた。
ベグダはトファの背を押してレミアの方に促した。
「さあ、貴方も!」
トファは、ベグダの方を振り返る。
「え? 貴方は行かないんですか?!」
ベグダは両手に剣を携え微かに微笑んだ。
「レミア様をお願いします。――さあ、早く行って!」
トファはレミアの背中を追うようにして走り始めた。
だが、何度か振り返り、見えなくなるかもしれないと最後に振り返った時、ベグダの後方で何か複数の影が蠢いるのが見えた。
「危な――!」
ベグダは、まるでそれを知っていたかのように影と同化した。影の中でも光石の灯に一際、俊敏な動きを放つものがあった。それが、ベグダであることを祈りながら、前方を駆けていくレミアを見失うまいとトファは必死で後を追った。
次第に離れていく剣の交わる音と銃声は、トファの耳を突くように大きく何度もこだましていた。