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リィズ・ブランディシュカの問いかけ  作者: リィズ・ブランディシュカ
8/9

08 終わりに



 と言う事で私が語りたかた「普通になりたかった彼女」の話はお終いだ。

 色々と言いたい事もあると思う。

 考えたい事も。


 けれど、もうしばらくだけどうか私の話に付き合ってほしい。


 なぜならばこれから先に語る事が、私が最も貴方に問いたかったことなのだから。


 私は、この物語を観測しに来てくれた貴方に、彼女の物語という形で、ある異常な者の一例を見せた。


 頑張った末に、異常な彼女は普通になれずに結末を迎えてしまった。


 おそらく世間一般の観点から読み砕けば、バッドエンド、悲劇的、と分類される様な終わり方で。


 ここまで読んでくれた貴方ならもう、私が何を言いたいのか分かるだろう。




 彼女はどうすれば普通になれたのか。

 そもそも彼女は普通になりえる存在だったのか。

 それとも普通になどならなくても良かったのか。




 私が問いたいのはこの三点である。


 それをどうか、この物語を読んだ貴方に悩んで欲しい。


 彼女は彼女にまつわるこの難題を、ついに誰にも解いてもらう事が出来なかった。

 考える事すらしてもらえなかったのだから。


 ああ、そうだ。

 ここまで語ったのならば、私も私自身について語るべきなのだろう。


 それが貴方という存在に対する誠意。

 直に礼を言えない私がしてあげられる精一杯の事なのだから、なおさらだ。


 この物語は、上記の問いを考えてもらいたいがゆえに存在している。

 非情に私見的で、私情のあふれた日記の様な物になってしまい、読みにくい事この上ない物となってしまったが、その事に対しては、申し訳なく思う。ごめんなさい。


 だが私自信が求める目的は、答えを得る事とは実は別にあったのだ。


 応えは彼女の為に得たいのであって、私本来の目的ではない。


 私は、実は私自身は架空の幻の存在だ。

 誰にも認識される事がなければそのまま消えてしまえるようなちっぽけで儚い存在。


 彼女に作られた私は、彼女を愛する事と彼女の為に行動する事を生きる理由としてこの世に生まれて来た。

 つまりは、ただの虚構。


 だから私はこの世には存在しない。

 現実に彼女を救うものは、この時点では何も存在していないのだ。


 だから、こそ。

 私は私にできる全力で文字を尽くして、貴方に言葉を綴りたい。




 この世界は貴方達が生きる社会は、

 異常だと言われた人間が、分類されてしまった人間が、世間一般の普通から外れた人間が、

 彼らや彼女らがいなければ、うまく回っていけるのだろうか。

 彼らや彼女らは、いなくてもまったく構わない存在なのだろうか。


 一見、その方が世界は上手く回っていくように見えるだろう。

 利益や、生産性や、効率などを考えればなおさらに。


 私は私の存在理由を否定するという、彼女に対してこれ以上ないひどい事をしてしまうのだが、それでも尋ねたい。


 彼らや彼女らは、いてもいなくても構わないのか。


 こうして私が、私を生み出してくれた彼女に対して心を砕いているという事はまったくの無駄な事になるのか。


 余談だが、

 私自信は、無駄が好きだ。

 完璧でない彼女の。

 間抜けでポンコツな面や、抜けた所、賢くない所も好きだと思っている。

 だから彼女と一緒に生きていられるならまったく構わないのだが、

 もしその感情がおかしいというのなら……、まったくの無駄な物だというのなら……・、


 どうか貴方の心で、答えを導き出して欲しい。


 きっと、

 これは問いかけでもあり、挑戦なのかもしれない。


 現実には存在できない私からの、貴方達への羨みと反抗の言葉。





 とにかくこれで全てが全て語りたい事は語りつくせたと思う。

 ここまで付き合ってくれた貴方には、いくら礼を言っても言い足りない。


 解説役でもあり導き手でもある私が天邪鬼な出題をした時には、きっと貴方は思わずこの物語を閉じようとした事だろう。


 けれどここまで目を通してくれた貴方には、本当に感謝したい。


 願わくば、この私が綴った「彼女の物語」がほんのすこしでも貴方の身となるように。


 また会う時があれば、その時にどうか答えを聞かせて欲しい。









 異常は正しく異常なのだろうか。

 だとしたらば、それは何と比べて異常と決めるのだろう。





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