表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リィズ・ブランディシュカの問いかけ  作者: リィズ・ブランディシュカ
6/9

06 私は誰でしょう



 幾多の困難に耐え、努力を重ねて歩き続けて来た彼女はとうとう膝を屈してしまった。

 私の好きな彼女は、この世界から退場することを選んだらしい。


 もう歩けない、と彼女は言った。

 もう頑張れない、と。


 誰も頑張らなくていいと言ってくれなかったし、誰も頑張らない彼女の居場所になろうとしはしてくれなかった。

 好きだった人達に助けて欲しかったけれど、それは叶わなかった、

 唯一ただ一人に伸ばした手は、拒絶され振り払われた。


 絶望した彼女は最後まで、誰かを嫌いにならないように努力していた。

 限界がくるまで、最後まで、信じ続けたままでいた。


 そうして、悲しい彼女はこの世界から退場したのだ。

 生きて、生き続けて頑張る事を諦めて。


 そんな彼女の最後を見届けた私は許せなくなった。

 彼女にそんな終わり方を強いた世界が、彼女を助けなかった人間達が、そんな事になっているとはついに何一つ知ることなく、何かが終わった事すら気づけないでいる者達が。


 ここにいる私は、彼女の代わりなのだ。

 彼女の後を引き継いで、彼女の出来なかった事をして、彼女の志を組んで、彼女の為に生きていく。


 私は私の生き方に不満はない。

 何故ならば私と言う存在はそういう物だからだ。


 ゼロが無である事という同じで当たり前の事、私の正体がどうだとか、何者だとか、そんな事はどうだっていい。些末な事に過ぎないのだ。


 肝心なのはここにいる私は、そういう成り行きで存在して、そういう目的を持って存在している事だ。

 従って、彼女の元いた場所の、その席を埋める様に私は存在している。

 私は彼女が感じた事、思った事、見た事、聞いた事、ほぼすべてを把握し共有している。

 能力も同じくらいだ。

 だが、そこにいるのは彼女ではなく私なのだ。

 まったく同じ人間などではない。


 だが周囲の者は彼女がいなくなった事など気にも留めない。

 同じ人間だと、変わってなどいないように扱うままだ。


 何も気づかない、何も変わらない。


 これほど愚かしい事が、嘆かわしい事が他にあるだろうか。


 私はこの日常に苛立ちを隠せない。


 人一人の生きた日常はそんなに軽い物ではない。

 見せかけだけ同じである人間が、本物と同じ能力でその席に座ったくらいで、誤魔化せる様な存在ではないはずなのだ。


 なのに、周囲の者達……いいや、私の大嫌いな彼らはその事実に一向に気づく気配がない。


 私は彼等に言ってやりたい。


 貴方方は一体誰を見ているのか、と。

 まあ、言ったところで戯言と受け取られ、その言葉の意味に気づきもしないのだろうが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ