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リィズ・ブランディシュカの問いかけ  作者: リィズ・ブランディシュカ
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02 笑わない猫



 私が語る彼女は猫のような人間だった。

 気ままで、自由で、いつも冒険心に満ちた子供のよな心を持った猫……子猫だろうか。


 そんな彼女は笑わない猫だった。そして誰も見つめない。


 猫は笑わない。笑ったように見せかけるのは、うんぬん……という専門的な話は今は置いておく。

 とりあえずは今は、猫の様だという彼女の話だ。


 話しに戻る。


 彼女はあまり笑わない。それは何故だと貴方は思うだろう。何か理由があるのかと。


 その疑問に私は首を縦に振る。

 答えはイエス。


 けれど、どうか誤解しないで欲しい。

 彼女は笑わないのではなく、笑えないだけ。


 何か楽しい事があった時に、笑うという感情を持ちはするが、その感情を表情として表さなくなっただけだ。


 彼女は幼い頃は、よく笑う子供だった。

 人波に笑い、些細な事に笑い、微笑ましい事に笑い、驚いた時に笑い、何かを達成した時に、笑う事の出来る子供だった。


 それが出来なくなったのは、彼女のその笑うという感情の表現が、彼女の身の回りにいる人間の神経を逆なでする行為だと、彼女自身が学んだからだろう。


 彼女が自由に心のままに笑えば、彼女の身の回りにいる人間はそれを見て、気分を害す。自分はこんなにも不機嫌だと言うのに、何故お前は笑っているのだとそう、己の感情を表明するのだ。


 彼女は当然それらの事から、学んだ。

 彼女は愚かではない。


 たった数回の事象から、それらの関連性に築き、己の感情が外に漏れださないように細心の注意をするようになった。


 それが彼女が、笑わない猫となった原因だった。






 そして、彼女は見つめない猫だ。


 それは別に誰が悪いのだとかそういう話しではない。

 全ては、回避しようのない状況が、たまたまそろってしまっただけの不幸だった。


 彼女は幼い頃、あまり人に見つめてもらえなかった。


 人は相手を見つめて話すものだ、とそう学んだ後、世間一般にあるその常識通りに行動しようとしたが、根付いた習性は中々変わらない。


 それではいけないと彼女も努力をした。

 世間一般にある普通の態度に、己のそれを近づけようと、心がけていた。


 だが結果は振るわなかった。

 彼女はその事実に打ちのめされたと言ってもいいだろう。


 無理矢理に努力しようとしたところで、表情を変える事の無くなった彼女が他者を見つめた所で、難事の気配しか生まれなかったと言うのもある。


 彼女はままならない世の中を、ひどく生きにくいと感じていた。


 それは確か彼女が、十を少しばかり過ぎた頃の出来事、小学生くらいの頃だったと思う。




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