01 初めに
これは彼女が異常であることを証明する話であり、そして
決して生まれてはいけない私がこの世に生まれることになった話である。
この作品を読みに来てくれた貴方。
いまここに綴られている文字を目で追っている貴方の事だ。
私は貴方に頼み事がある。
どうか、聞いて欲しい。
普通なら私はここで、気の利いた事を一つや二つを述べ、貴方という読者を楽しませるかどうかするところなのだろう。
だが、そういう事は生まれてから今日にいたるまであまり得意ではなかったので、急激な成長や奇跡に期待せずに勘弁してほしい。
ここまで目を通してくれた貴方は今何を思っているだろう。
期待したものではなかったと、思っているだろうか。
それともここから先の展開を予想して面白くなさそうだと、見切りをつけている頃合いだろうか。
ならば仕方ない。私は貴方の意思を尊重するし、無理にこの物語を読ませようとする意志はないのだから。去りゆく貴方を引き留める事はしないだろう。
けれど、もし。
ここから先も目を通してもいいというのなら。
私は貴方に期待してもいいだろうか。
読者としてこの物語を観測してくれる貴方に。
ここに綴られた文字世界の向こうで、どこにいるとも知れない場所で私と繋がっている貴方に。
私がこれから語っていく物語の主人公……異常な彼女が、どうすれば幸福を掴めたのかを。
それを私と共に考え、悩んで欲しい。
答えは必ずしも出す必要はない。
考え、悩むという行為そのものに私は意味を見出している。
答えのない問いに価値は無いのかもしれないが、それでも私は貴方のその悩むという行動に救いを見出すだろう。
前置きが長くなってしまったようだ。
申し訳ない。
これ以上貴方と言う読者を私が綴る駄文で無駄に待たせてしまうのは忍びない、早急に本題へと入ろうと思う。
これから私が語るのは、私が知っている一人の少女……彼女の物語。
異常な彼女が、全てを諦めるまでの物語だ。
彼女はとうとう最後まで普通になれなかった。
……普通とは、そんなに絶対的に良い物なのだろうか。




