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異世界に転移しちゃった。  作者: ナット
7/7

7話

クラウスさんと対峙した俺は訓練用の剣を構える。


「おや?その構えは…...…僕の真似かい?」


クリウスさんの構え方の真似をして剣を片手に持ち、刃先を相手に向ける。


「ははは!!君、面白い子だね。僕の真似をするのは大変素晴らしい事だけど、見ただけでマスターできるもんじゃないよ?」


「…...」


「まぁいいよ、いつでもかかってきな________ッ!!」


あっ、防がれた。ま、そりゃそうだよねーそう簡単に攻撃を入らせてはくれないよね。


「次は…ッ!」


もう一度クラウスさんの足の動きを真似して懐に潜り込み、剣を振るう。


「くっ!」


クラウスさんはその攻撃を防ぎ、後ろへ数歩下がる。



「き、君、その足の運ばせ方も僕の…...」

「そうですよ!先程までのクラウスさんの動きを真似してみました…っ!」


そう言いつつ俺は開いたクラウスさんとの間合いを詰め、連続攻撃をしかける。


俺の攻撃に対応しながらクラウスさんは俺に言葉をかける。


「君には驚いたよ…この僕が油断していたとはいえ危うく1本取られるところだったよ」


クラウスさんは褒めてくれたけど最初で攻撃を当てられなかったのは痛手だなぁ。


……この動きはもうちょっと腰を下げた方がいいんじゃないかな?


クラウスさんの型を真似してみたけど自分に合った動きに改善出来そうだ。


「あれ?動きが変わった…...?」


この瞬間の足を動かす範囲はもう少し小さくしてみよう。


「…ッ!さっきよりも動きが鋭くなってきている…!!」


なぜかクラウスさんに徐々に焦りが見え始めてきた。


そこで俺はクラウスさんの脇腹に剣を振る。


もちろん、それを防ごうとクラウスさんは剣を構える。


よし!狙い通りだ!!


剣を構えた瞬間、俺は攻撃をキャンセルしクラウスさんの懐へと潜り込む。


「____ッ!!」


そして、無防備となった懐へ剣の一突きを当てようとしたが____


「痛っ?!」


脇腹に大きな衝撃がきたと思ったら俺の身体は後方へ吹き飛ばされていた。


前方を見ると右足を上げて焦った様子のクラウスさんがいた。


「蹴るのは酷いですよ〜クラウスさん!!」

「ご、ごめん」


そう言ってクラウスさんは俺に手を差し伸べてくれたので、その手を取って起き上がる。


にしても、やっぱクラウスさんは凄いな〜。


最後の蹴り、動きは目で追いつけたけど今の俺ではあの動きに対応するのは難しい。


さすがこの国の騎士団団長、ってことかな。




…...?


クラスメイトのところに戻ると皆唖然とした様子だった。


「な、なぁ、お前さっきの2人の剣筋見えたか?」

「い、いや。全然見えなかった」


そんな会話が聞こえてきたけど、さすがにそれは大袈裟だと思う。


そう思っていると俺のもとに石崎さんが近寄ってきた。


「流石だよ北原君。あの人と互角、いや、最後の方は押しているようにすら見えた。剣道をやっているから分かるけどあの人の実力は相当なものだったよ」

「へへ、俺運動には自信あるからね。でも互角は言い過ぎだよ。最後だって結局一蹴りで負けちゃったし」


まぁ最初から勝てるとは思っていなかったけど、やっぱり負けたのはちょっと悔しいなぁ。


「いやいや、君は本当にすごいよ。僕なんかよりも…...ずっとずっと凄い」


そう言う石崎さんの表情は笑っていた。


だけど、どこか違和感がある笑顔だった。


「…大丈夫?石崎さん」

「…?大丈夫だよ?それよりも女子の方も終わったみたいだしソイラさんの所に向かおうか」


今度は自然な笑顔だった。


さっきのは…...ただの気のせいだったのかな










あの少年、名前はキタハラ・アキラだっけ。


彼は誰が見ても10人中10人が美少女と言うほど、とても男には見えなかった。


顔立ちは可憐、体躯は華奢と少女らしい特徴を挙げればきりがなく、逆に男らしい特徴をあげる方が難しい。


未だ彼が男だというのは半信半疑なので是非とも自分が男だと言うなら男の象徴を後でじっくりと見せてもらいたいと思っていた。


しかし、そんな馬鹿げた考えは彼と模擬戦をしたその瞬間から吹き飛んだ。



なんと、僕の動きを真似して見せたのだ。


構えた時はまだできるはずがない僕の型を真似して可愛いなぐへへへ、ぐらいにしか思っていなかった。


彼が動き始めた途端、そんなことを考える余裕は無くなっていた。


構えだけではなく剣筋、足の運び方、ステップすらも僕の型を真似してみせた。


そんな彼の攻撃は油断できるものではなく、僕は最初驚きつつも冷静に対応していった。


…だが、彼は僕の型を真似するだけじゃなかった。


僕の型を超え始めてきた。


より精錬に、より正確に僕の型を吸収、発展させていった。



そこからは恐怖でしかなかった。


20年以上剣の道を修練してきた僕の技術をどんどん盗まれていくような感覚がした。


そして、彼が懐に潜り込んだ時、気づいたら僕は彼を蹴飛ばしていた。


本能的に危機感を抱き、半ば無意識に蹴ってしまった。



僕は幼少の頃から剣の才には恵まれていて、周りからは天才だ、神童だと言われてきたけど……




僕が天才なら………彼は化け物だ。



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