6話
お久しぶりぶり
「俺は男なんだぞ……」
「まだそんなこと言ってるの?諦めなさい。」
女子と同じ階の部屋に住むことにまだ納得がいかない俺に対して観念しろという琴音。
「ほら、アキ。自分の顔みてみなさい」
琴音が俺の部屋にあった手鏡を持って来て手をかざす。
その手鏡に映ってるのは少し落ち込んでる様子の俺。
まぁ、確かに?少し女性っぽい顔立ちだとは思う。それに声も高いし。でも、本人が男だって言ってるのに信じて貰えないほどでは無い・・・・よね?
「はぁーーーー。あんたってほんと自分の容姿に鈍感ね。」
どこか呆れたように言う琴音。
_____?
「どうしたの?急に上を向いて。」
「ん?いや、なんでもない」
「そう?ならいいんだけど。」
......気のせいかな?
それから琴音とこの世界のことや元の世界のことについて話してたらかなり時間が経ち、眠くなってきた。
「琴音......俺、そろそろ眠くなってきた...............」
そう言うと琴音は目を光らせて言った。
「あらそう。私のことは気にしないで寝ていいわよ?」
「.........」
何故か少し息を荒らげ、顔を赤らめる琴音。オーラもどこか変わった気がする。
............俺は最近、琴音の前で眠るのを少し恐れている。
感じるのだ。妹の前で眠ったりでもしたらナニかを失う気がする。
そんなよく分からない危機感のせいで妹の前で眠るのが少し怖い。
何とかして琴音に帰ってもらおうと俺は考える。
.........だめだ。眠たい上に俺は琴音と違ってバカだった。
なんの策も浮かばなかった俺は正直に言うことにする。
「琴音。俺、人前だと眠れないんだ。だから悪いけど帰ってもらえませんか?」
「......」
黙ってしまった。もしかして怒らせてしまったかな?
恐る恐る琴音の様子を伺うと、
「......そういえば、そうね。アキって感覚が鋭すぎるもんね。人が居たらリラックスして眠れないわよね。」
おや?意外とわかってくれたぞ。
「じゃあ私は帰るわ。おやすみなさい、アキ」
「おやすみー、琴音」
こうして俺はナニかの危機を回避して、安心して眠ることが出来た。
翌日、俺達はイリス様に呼ばれて大きな食堂でご飯を食べ、(とても美味しかった)城門付近に連れてこられた。
そこにはいかにも騎士って感じの男性と、魔法使いって感じ女性が居た。
その2人を認識した瞬間、俺はどこか気分が高揚するのを感じた。
「今から勇者様達が現時点でどれくらい強いのか計る為こちらの方達と戦ってもらいます」
イリス様がそういうとクラスメイト達はざわつき始めた。
「すみませーん、俺たち魔法の出し方とか剣術とかわからないんですけど?」
クラスメイトの1人が当然な疑問を投げかける。
「ご安心を、今回は皆さんのセンス、才能を見るだけの簡単な模擬戦です。魔法の出し方については後で皆さんに教えますし、剣術に関しては自分なりの全力で大丈夫です。」
「そうですか。まぁ、わかりました。」
「それでは、皆さんの対戦相手であり、講師である方々を紹介します。」
「こちらの男性はこの国の騎士団団長である、クリウスさんです。」
どうやら男性の方は騎士団団長らしい。意外と若く、俺達よりも少し年上ぐらいの青年に見える。
「どうも、はじめましてだね勇者様方。僕の名前はクリウス・ロンメルだよ。よろしくね。」
穏やかな口調で自己紹介するクリウスさん。
ちょっと驚いた。勝手に騎士団団長ってゴリゴリなガチムチの男なイメージがあったけど、この人はそんなイメージとはかけ離れた優男な人だ。
「初めましてぇー。わたしわぁー、エリーヌ・ソイラっていうのぉー、よろしくねぇー。」
女性の方はエリーヌ・ソイラさんっていう名前らしい。
なんかふわふわしている雰囲気で、優しそうな顔つきで俺達をみている。
そして、特筆すべき点がその胸の大きさだ。
その立派な双丘は男子の目がそこに奪うはれるのはしょうがないことだった。
俺も例にもれずその双丘に視線を向けていた。
しかし、それを見ている俺の心は一切の煩悩をもっておらず、邪念がなく、澄み切っていて、明鏡止水の極意に達しており________妹の視線が怖いので見るのはこの辺にしとこ
そう思ってるとクリウスさんは急に目を細め出し、
「それにしても、勇者様方はとても美しい女性ばかりだ。」
とても真剣なトーンで喋りだした。
「これほど美しい女性は久しく見たことがない。是非とも一緒にお茶をしたい。......特にそちらの麗しいレディ」
...........
...............なんでこっちを見る?
「この後よかったら僕の部屋に来ないかい?この国1番の紅茶とお菓子と『プレイ』をあげるから________」
「フゥゥンッ!!!!!」
「グヘラァ!!!!!!!!」
イリス様の回し蹴りがクリウスさんの頭にヒットした。
________イリス様とは思えない程の回し蹴りがクリウスさんの後頭部に炸裂して、少し後。
俺達は早速模擬戦を行っていた。
どうやら女子と男子分かれて行うらしく、女子はソイラさんが主導する魔法の模擬戦、俺達男子はクリウスさんが主導する剣術の模擬戦から始めるらしい。
男女に分かれる際またしても俺がどこに行くかで一悶着あったけど、俺は男だから!!!
と力説したら何とか男子のグループに交ざることが出来た。
俺は男だと力説してる時、自分の頬に一筋の雫がたれた気がするがきっと気のせいだよね!
そんなわけで今ここでクラスメイトがクリウスさんと戦っているのをみているのだけど、俺は今非常に興奮していた。
「__フッ!」
「おっ、いい剣筋だね君。もしかして剣術学んでた?」
今クラウスさんと対峙してるのはクラスメイトの石崎透さんだ。
彼は剣道部でなんでも高校生の剣道大会で1年生ながら全国1位の天才らしい。
そんな彼を相手にクラウスさんは呑気に話しかけながら余裕を持って対応している。
流石だなぁーと思うと同時に、戦ってみたいという気持ちが溢れてくる。
「...…...負けました」
そして勝負は決まり、案の定クラウスさんが勝利した。
「君、なかなかやるじゃないか。育てがいがありそうだよ。」
「…ありがとうございます」
いとも簡単に1本取られたのが悔しいのか石崎さんはそそくさとクラスメイトの輪に戻っていった。
「さ、これで最後かな?今度は君の番だよ、かわい子ちゃん」
最後の言葉に寒気がしたが俺はこの瞬間を今か今かと待っていた。
「がんばれよー、北原ー」
「お前なら勝てるぞー!」
「流石に北原でもあの人にかつのはきついでしょ」
クラスメイトの声援に背中を押され俺はクラウスさんと対峙した。