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転生して進化したら最強になって無双します  作者: エルナ・アストル
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568話 約束を果たす

捕まっていた人たちと別れ、ベルは1人+1匹で宝物庫へと足を踏み入れた


「大規模な盗賊だけあって、無駄に大量に抱え込んでるね」


扉をくぐった瞬間、足元には金銀の硬貨がざらりと広がっていた


「とりあえず、硬貨だけ戦利品の空間収納へ」


パチン


軽く指を鳴らすと、その場にあった硬貨が一斉に消え、空間収納に収められた。


《ピクシー、硬貨を人数分に均等に仕分けして。足りない分は俺の手持ちから足してあげて》


《了解しました》


「これで何があるか、わかりやすくなったね」


あらためて辺りを見回すと、金や宝石が嵌め込まれたアクセサリーや、魔力の残る古びた杖、小さな宝石箱など、いくつか目を引く品が転がっていた


「価値のあるものは……まぁとりあえず全部保管しておこうかな」


いくつかの品を拾って収納していく中……ふと、壁際に落ちていた一本の短剣に目が留まった


「ん……これは?」


錆びつきかけてはいるが、柄に刻まれた紋章は丁寧に彫られており、どこかで見たような気がした


「これって、もしかして……」


そう呟いて、ベルは空間収納から心当たりのある品を取り出した


地面に転がる短剣と、空間収納から取り出した短剣を左手に持って見比べた


「紋章は違うけど形は同じ……間違いない、これは、国王の短剣……」


王位継承の儀でしか使われないはずの、王権の象徴


「後でボルトに、どうするのが正解か聞きに行こ」


そう呟いて、その短剣を別の空間収納へと丁寧に仕舞う。

その後、残っていた他の品々をササッとまとめて戦利品用の空間収納に収めると、足早に洞窟の外へと向かった



「お待たせしました。では、王都へ戻りましょうか」


「……ここから歩いて、ですか?」


そう尋ねた女性は、周囲を見渡しながら不安そうに聞いていた


「……確かに、それも大変ですね。少々お待ちください」


「わかりました」


そう言ってベルは少しだけ離れた


〔こっち来れる?〕


〔いいよ?  何かあった?〕


〔ただの帰る手段だね。転移門をお願い〕


〔ギルドの中でいいの?〕


〔別にいいよ。ハルはそういうとんでもない人って設定だから何してもよし〕


〔了解、ならベルの真横に繋げるね〕


〔はーい〕


その返事とほぼ同時に、ベルの真横に転移門が設置された


「いいよ」


「ありがとう。じゃあ、呼んでくるね」


そう言ってハルは元の場所へと戻り、ベルは捕らわれていた人たちのもとへ向かった



「お待たせしました。今度こそ王都へ帰りましょう。ついてきてください」


「? ……わかりました」


ベルに導かれ、捕まっていた人たちは彼のあとに続き、転移門のある場所へと向かった



「順番にこの扉に入っていってください」


「これは……?」


目の前の転移門を前に、人々は不思議そうにその姿を眺める


「これは、特定の場所へ一気に移動できる転移門と呼ばれる魔法です」


「そんな魔法が……」


「はい。この門をくぐれば、もう王都ですよ」


そう言ってベルが促すと、ひとりが警戒しつつも先に門をくぐり、続いて他の者たちも次々と門の中へと消えていった


「じゃあ俺も」


そう言ってベルも門を潜り、ギルドへと帰ってきた



「帰ってきて早々ですが、皆さんにお渡ししたいものがあります」


そう言って、ベルは捕まっていた人たちを集めた


「こちらを受け取ってください。中身は、帰ってから確認してくださいね」


そう言いながら、宝物庫で手に入れた硬貨を人数分に分け、それぞれ布袋に入れて手渡していった


「あの、これは……?」


「まだ内緒です。必ず家に帰ってから確認してくださいね」


ベルはにっこりと笑い、顔の前で人差し指を立てて見せた


「わかりました」


「それから、ミセスさんのお家まで同行してもいいですか?」


「私の家ですか? ……構いませんが、どうしてですか?」


「報告しないといけないことがあるので」


「大丈夫ですよ」


「ありがとうございます」


その後、捕まっていた人たちは順番に帰路へと着き、ベルはミセスと共に家へと向かった



「ここです」


冒険者ギルドから数分歩いたところで、家の前にたどり着いた


「まずは、早く息子さんに顔を見せてあげてください」


(どうして知っているんだろう?)

「はい」


ミセスは少し不思議そうな顔をしながらも返事をし、すぐに扉を開けた


「ただいま〜」


バタバタバタッ!


家の中から何かが暴れるような音が聞こえたかと思うと


「お母さん!!」


嬉しそうな声と共に、男の子が家の中から勢いよく飛び出してきた


「レスト……ごめんね。寂しかったよね」


「うん……」


レストくんはミセスのお腹に顔を埋め、ぽろぽろと涙をこぼしていた。


「心配かけたよね……ごめんね」


ミセスはそう言いながら、優しく頭を撫でていた。


「お母さんね、この人に助けてもらえなかったら……帰ってこられなかったかもしれないわ」


「よかった……帰ってきて、ほんとによかった……」


「レスト、この人にちゃんとお礼を言いなさい」


「うん」


そう促されて、レストくんは初めてベルの方を見た。


「あ、先生! 本当にお母さんを見つけてくれたんだ……ありがとう!」


レストくんは最大限の感謝を込めて、ベルにぎゅっと抱きついた。


「必ず見つけるって、約束したでしょ?」


「うん、ありがとう……!」


ベルはその可愛さにあてられ、思わずレストくんの頭を撫でていた。


「レストとそんな約束をしていたんですか?」


「はい。レストくんに“お母さんが帰ってこないから探して”って頼まれたので、探して、見つけて、送り届けただけです」


「……本当にご迷惑をおかけしました」


ミセスは深々と頭を下げた。


「いえ、大丈夫ですよ。先生として、生徒のお願いを聞くのも、大切な役目ですから」


「? ……先生?」


「おっと、名乗っていませんでしたね。私はマーベルド学園で教師をしています。ベルド・アスク・シルフロートと申します」


「ちょっと前に、すごい先生が来たってレストが言ってましたが……あなたがそうだったんですね」


「最近教師になったのは私だけなので、きっとその“すごい先生”は私でしょうね」


「そうですか……改めて、助けていただきありがとうございます」


ミセスはもう一度、深々と頭を下げた。


「いえいえ、お気になさらず。それと――なかなか見つからなかったときのために、レストくんに数日分の食べ物を渡していたんです。でもすぐ見つかったので、必要ありませんでした。なので、レストくんとミセスさんのおふたりで食べてください」


「食べ物まで……本当にありがとうございます」


「いえ、ミセスさんもきっとお疲れでしょうから、しばらくはゆっくりお休みください」


「はい。そうさせてもらいます」


「じゃあ、レストくん?」


「なに?」


ベルにぎゅっと抱きついたままのレストくんが、顔だけベルの方へ向けて答えた。


「お母さんはきっと疲れてると思うの。だから今度は、困ってたらレストくんがお母さんを助けてあげてね?」


「うん!」


「よし、いい子いい子」


そう言って、ベルは優しく頭を撫でた。


「じゃあ先生、やらないといけないことができたから帰るね。もしまた困ったことがあったら、いつでも言ってね」


「うん! ありがとう、先生!」


レストくんはそう言ってベルから離れ、お母さんの隣に戻って手を振った。


「では、失礼します」


「はい、本当にありがとうございました」


こうしてベルは、ミセスさんとレストくんに別れを告げ、その場を後にした

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