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プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作者: 虎馬チキン


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31 対策会議

「諸君、よく集まってくれた」


 ギルドホームに集結したメンバー達を見据えながら、カタストロフが静かに告げた。

 そう。

 静かにだ。

 未だに賢者モードが続いているのか、その雰囲気にいつもの騒がしさや、やかましさはない。

 ただ、用意したテーブルに実に偉そうなポーズ(司令官ポーズというらしい)で座っている様子を見れば、あ、こいつカタストロフだな、とわかるんだが。


 そして、その用意されたテーブルに着席しているのは6人。

 つまり、サクリファイスのメンバー全員だ。

 しかし、残念ながらカタストロフの召集(という名のメール)で集まった訳ではない。

 カタストロフ本人はそう思い込んでいるかもしれないが、おそらく、全員が集まったのは、召集メールの後にサクラが気を利かせて打ったメールのおかげだ。


『今回は本気でカタストロフの精神がヤバイわ。もし彼に少しでも友情を感じているのなら、助けると思ってギルドに集合してちょうだい』


 という内容のメールが、カタストロフ以外のメンバー全員に送られた。

 一斉送信のリストから取り除くのが面倒だったのか、一緒にいた俺にまで送信されていたがな。

 だが、それでもサクラの優しさが垣間見える。

 サクラは、リア充死すべしという危険思想こそ持っているが、それを除けばメンバー内で最もまともで仲間意識の高い奴だからな。

 つまり、良い奴なのだ。

 危険思想さえなければ、リアルでも友達になりたいと思える程度には。


「さて、まずは情報の共有といこうか。

 非常に不本意だが、我らが昨日ダークマターの連中に負けたというのは事実だ。

 ハンデを背負っていたとはいえ、負けは負け。

 素直に認めねばなるまい」


 素直に認められずに半狂乱で暴れた奴の言葉とは思えないが……まあ、この短時間で成長したのだと、好意的に捉えておこう。


「そして、奴らは我らを倒した事で調子に乗っている。

 街道封鎖という大掛かりな事を仕出かす程にな。

 しかも、情報によると街道を封鎖しているダークマターのメンバーは、100人に届く程の大人数だそうだ」


 100人。

 尋常な数ではないな。

 ちなみに、情報源は掲示板だ。

 ゲームというのは、こういう時の情報収集が楽で助かる。


「おそらく、我らを倒したという情報に食いついた野良のPKの多くがダークマターに流れたのだろう。

 時間的な問題を考えれば、それ以前からメンバーを集めていたのだとは思うがな」


 前にサーベルが言っていたが、PKというのは、普通一人でできる事ではない。

 ステータスやレベルといった能力値が明確に定められているゲームにおいて、単独で自身と同等以上の力を持ったプレイヤーを狩るのは至難。

 それができるのは、一部の高いプレイヤースキルを持ったトッププレイヤーだけ。


 だが、悪役プレイに憧れる奴は意外に多く、弱くてもPKがやりたいという輩はそれなりにいるらしい。

 今回の件は、そういう弱くて燻ってる大量の野良PKをダークマターが吸収したんじゃないか、というのがカタストロフの見解だ。

 俺も、その見解は、当たらずとも遠からずだと思っている。


 まあ、ダークマターには、明らかに徒党を組む必要がないような強者も交ざっているが、それはそれだろう。

 そいつらは、大規模な悪の組織プレイがしたかったとか、そんな下らない理由でやっていたとても、なんらおかしくない。

 これはゲーム。

 楽しければ良いのだから。


「さすがに、それだけの人数を相手に我ら6人だけで挑むのは無謀だ。

 よって、有効な作戦を立てる必要がある。

 意見があったら、挙手して発言してくれ」


 その言葉を聞いて、ハンターがおずおずと手を上げた。

 意外だ。

 あいつは、あまり自己主張しないタイプだというのに。


「そ、そもそも戦う必要がない。か、街道封鎖なんて真似、絶対に途中で飽きてやめるだろう。

 た、単純にそれまで待てば……」

「却下だ!」


 喝! とばかりの大声で、カタストロフはハンターの至極もっともな作戦を却下した。

 ハンターは意気消沈した。

 哀れな。

 だが、いくら有効な作戦であろうとも、カタストロフの目的が雪辱を果たす事である以上、最初から通る筈のない作戦だったな。


「他にはないか?」


 カタストロフが他の意見を求める。

 それに対して、今度は俺が手を上げた。

 正直、ハンターが撃沈した今、真面目に作戦を考えているのは俺くらいだろうからな。

 武器子は上の空だし、マックスは脳筋。

 サクラは、フォローはしても作戦まで考えてはくれないと思う。


 何故なら、あいつには今回の戦いにおけるモチベーションがないから。

 カタストロフを助けると思って参加はしてくれているが、それ以上の事をしてくれるかは怪しい。

 つまり、俺がなんとかしなければ、この会議はいつまで経っても進まない訳だ。


 そういう訳で、俺は意見を出す事にした。


「どこぞのギルドと一時的に同盟を結ぶのはどうだ? それで数の差を埋める事はできると思うが」

「む」


 俺の作戦を聞いて、カタストロフが思案するように沈黙した。

 どうやら、一考の余地ありと判断したらしい。


「……リベンジを他の奴らと一緒にやるのは嫌だが、背に腹は変えられないか。

 よかろう。

 他に意見がなければ、その作戦案を受理する。

 反対意見はあるか?」


 カタストロフがそう問いかけるも、反対意見は上がらなかった。

 まあ、作戦なんてどうでもいいと思ってる奴が過半数だろうからな。

 これは予想できた。


「では、作戦の詳細を詰める。まず、どこのギルドに声をかけるかだが……」

「王道騎士団でいいだろう。『剣聖』の性格を考えれば、ダークマター討伐という点では利害が一致する筈だ」

「待ちなさい」


 我ながらナイスなアイディアだと思ったが、思わぬところから苦情がきた。

 サクラだ。


「あのリア充どもと手を組めと? 私はごめんだわ」

「手を組むのではなく、利用するとでも考えておけばいい。実際、その通りになるだろうしな」

「それでも、嫌なものは嫌。リア充と一緒にいると、拒絶反応が出るのよ」

「……はぁ」


 俺は思わずため息を吐いた。

 本当に、サクラはこれさえなければな……。

 仕方なく、俺は立ち上がってサクラの側まで歩き、サクラの耳元に手を当てて、小声で囁いた。


「今回だけだ。カタストロフを助けると思って呑み込んでくれ」

「………………それは、ズルいわ」


 サクラが今回メンバーを集める為に使った言葉。

 この言葉を使えば、断れないと思ったのだ。

 サクラは、基本善良だからな。

 たしかに、ズルい。

 だが、許せよ。


「はぁ。本当に今回だけだからね。それと、これは貸しにしておくわ」

「それはカタストロフにつけといてくれ」

「……それもそうね」


 こうして、サクラの説得には成功した。

 これで、作戦を阻むものは何もないだろう。


「む、終わったのか?」

「ああ。サクラも一応は納得してくれた」

「どんな魔法を使ったのか知らんが、よくやった」


 その魔法の代価は、いつかカタストロフが支払う事になるのだろうが、今は黙っておこう。


「では、我らは王道騎士団に共闘を持ちかける事としよう。

 異論はあるか?」


 サクラが落ちた今、異論を出すメンバーはいなかった。

 そうして、俺達は王道騎士団に話を持ちかける事が決定したのだった。

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